FC2ブログ

Latest Entries

豊橋市美術博物館「吉田天王社と神主石田家」鑑賞記

豊橋市美術博物館
 企画展 吉田天王社と神主石田家
(2月19日~3月24日)

 豪壮な手筒花火祭事で著名な吉田神社の社宝と神主家伝来資料から豊橋の信仰の歴史を浮かび上がらせる。神幸祭にて使用されている獅子頭(御頭様)は全長が短く全体に深い皺が刻まれて古様を見せる南北朝~室町時代ごろの作例。追儺の儀式で使われたとみられる鬼面は大ぶりで鼻が上へと反った室町時代の作例。中世の狛犬も二対。また牛頭天王信仰の広がりも紹介し、西尾市久麻久神社牛頭天王立像はやや素朴ながら神威を表出した平安時代後期の像。豊橋市椙本八幡神社の牛頭天王坐像は整った作風を示す鎌倉時代の新出作例。ほか鞍・鐙や絵馬、古文書、仮面など多様な資料を集約。図録あり(112頁、1000円)。

高野山霊宝館「密教の美術」鑑賞記

3月1日、高野山麓、山上での仕事の合間に立ち寄り。
高野山霊宝館
 平成30年平常展 密教の美術
(1月19日~4月14日)

 今回の平常展の軸は孔雀明王。正治2年(1200)快慶作の、羽を広げた孔雀に座した孔雀明王坐像(重文)を安置する新館第2室は照明を落として演出し、あたかも孔雀経法を修する道場のように荘厳。中尊寺経から大金色孔雀王咒経(国宝)、荒川経から大孔雀明王経(重文)も並べる。金輪塔本尊の一字金輪仏頂坐像も並び、平安時代末期の奈良仏師作例から鎌倉時代初期の慶派仏師への作風展開をうかがう。冷え込む紫雲殿には凍るように鮮やかな彩色の宋元及び高麗仏画の優品が出陳。阿弥陀八大菩薩像は南宋~元代の作例、宝寿院の楊柳観音像は高麗時代、常喜院の薬師曼荼羅図は隆慶6年(1572)銘の朝鮮仏画。ほか正智院の影向明神像をじっくり。狩衣・烏帽子で立ち姿の高野明神像の図像成立時期について考える。図録なし。

奈良国立博物館特別陳列「覚盛上人770年御忌 鎌倉時代の唐招提寺と戒律復興」

2月10日
奈良国立博物館
 特別陳列 覚盛上人770年御忌 鎌倉時代の唐招提寺と戒律復興
(2月8日~3月14日)

 興正菩薩叡尊とともに自誓受戒(三師七証を伴わずに本尊に誓いを立てて菩薩戒を受ける方法)という跳躍的な方法によって日本に戒律を復興させた大悲菩薩覚盛を軸に、その前後を挟む貞慶と證玄の事蹟もあわせて鎌倉時代の唐招提寺を紹介する。応永2年(1395)招提寺仏師成慶(椿井成慶)の手になる大悲菩薩覚盛像をじっくり。銘記に「康慶法眼之流、興福寺住」とあるのも貴重な情報で、また半世紀~1世紀ほど古く見えるのは依るべき古典に囲まれた当該期の奈良仏師の特徴。ほか覚盛自筆の覚盛願経、覚盛所用と伝えられる二十五条袈裟、證玄造営の釈迦如来立像、證玄骨臓器(!)、東征伝絵など。南都の宗教史を寺社単位にてコンパクトに紹介する奈良博の真骨頂というべきありがたい機会。図録あり(56ページ、1000円)。

和歌山大学紀州経済史文化史研究所「加太・友ヶ島の信仰と歴史」鑑賞記

1月31日
和歌山大学紀州経済史文化史研究所
 特別展 加太・友ヶ島の信仰と歴史-葛城修験二十八宿の世界-
(1月10日~3月8日)

 葛城修験とその重要な行場である加太・友ヶ島について、向井家(迎之坊)に伝来した文書や資料を中心に紹介する。延宝9年(1671)役行者入峯以来伽陀寺由来書、葛城峯中記、葛城嶺中記といった葛城修験の行場に関わる史料のほか、大日如来懸仏、深蛇龍王の爪(鮫の歯か)、臥龍硯など、迎之坊の信仰の場を彷彿とさせる資料が並ぶ。展覧会のビジュアルイメージに使っている役行者像(神変大菩薩御絵像)は安政3年(1856)月海の筆。和歌山県博でも月海良融(利根川月海・1801?~1872)の肖像画を、大峰葛城千日満行者としての要素から数年前に収蔵したところだったので、こんなに近くに関連資料が出現して本当にびっくり。図録あり(16ページ、無料)、展示品目録附解説(9ページ、無料)あり。

市立五條文化博物館「五條の冬の行事-追儺-」鑑賞記

1月20日
市立五條文化博物館
 特別展 五條の冬の行事-追儺-
(12月22日~2月11日)

 五條市内の修正会追儺行事に用いられてきた鬼面群二組の実物展示。念仏寺陀々堂の鬼はしり(国指定重要無形民俗文化財)で用いられてきた鬼面(父面・母面・子面・伝阿弥陀面)は墨書銘により文明18年(1486)、山陰村右兵衛次郎による制作と分かる基準作例。現在の行事では太田古朴作(!)の複製面を使用。坂井部郷にかかわる文書(個人蔵)から中世~近世の祭礼のようすを復元しつつ丁寧に展示。安生寺の鬼面(太郎~五郎面)も古様を残すおおらかな表現。先行する中世仮面を近世に写したものか。こちらは修正会は途絶えているが近年地元小学校で再興を進めている由。念仏寺父面の原寸大複製(樹脂製)のさわれる展示も開催中。充実の内容。展示内容を解説した資料(A4・8ページ)あり。

京都文化博物館「古社寺保存法の時代」、奈良国立博物館「新たに修理された文化財」他鑑賞記

1月12日、約1ヶ月ぶりの展覧会鑑賞。

京都文化博物館
 古社寺保存法の時代
(1月5日~3月3日)

 明治時代における文化財保護の黎明を、近世末から近代初頭の古器旧物の把握、臨時全国宝物取調局による監査、古社寺保存法の成立と国宝指定、初期の国宝修理と、先般重要文化財に指定された京都附行政文書などから制度か形成され運用されていく動きを押さえつつ、流れを追って紹介する意欲的な展示。集古十種所収の色々威腹巻(京都府蔵)、森寛斎筆武田信玄蔵模本(京都府蔵、原本成慶院蔵)、美術院が手掛け額装で仕上げられた十六羅漢像(長寿寺蔵)、奈良美術院で記録された紀州新宮速玉神社神像図(奈良国立博物館蔵)、新納忠之助の調査手帳((公財)美術院蔵)などなど。図録あり(56ページ、1300円)。充実のコラム7本(執筆:安江範泰・中野慎之・地主智彦・横内裕人・森道彦)収載、必携。

奈良国立博物館
 特別陳列 おん祭と春日信仰の美術-特集 大宿所-
(12月11日~1月20日)

 恒例のおん祭展。今年は願主人(大和士)が参籠して精進潔斎した大宿所を紹介。春日若宮御祭礼絵巻中巻をながーく展示するなど絵巻を活用して行列の壮麗さを示す。春日曼荼羅、春日本迹曼荼羅、春日地蔵曼荼羅のほか、春日講本尊の春日鹿曼荼羅などずらり。図録あり(64ページ、1500円)。
 
 特集展示 新たに修理された文化財
(12月26日~1月20)日

近年修理を行った収蔵品とその修理内容を公開。絵画・彫刻・工芸・書蹟・考古資料とまんべんなく。現光寺の絹本著色最勝曼荼羅は金光明最勝王経に基づく珍しい仏画。法明寺の木造天部立像は11世紀初めごろの作例で、来館者の寄付金による修理。

 名品展 珠玉の仏教美術【絵画】
(12月11日~1月14日)

 終了間際の絵画の展示に滑り込んで、和歌山・総持寺の釈迦三尊像を鑑賞。明治30年12月28日、古社寺保存法に基づく最初の国宝指定資料の一つ。指定に先だつ宮内省臨時全国宝物取調局の監査(明治21年5月18日、於和歌山城脇岡東館、九鬼隆一・岡倉天心・フェノロサら参加)では陳列品中「最も見事の出来」と評価された。当時は掛軸装で、その後額装に改変。ただし額は失われて本紙周辺の裂もなく画絹も傷む。修理必要。

堺市博物館「堺・経典をめぐる文化史」鑑賞記

12月16日
堺市博物館
 企画展 堺・経典をめぐる文化史
(11月17日~12月16日)

 最終日に滑り込み。堺市域の仏教文化を経典を軸にして紹介する。館の調査で見いだされた法道寺の雑阿含経巻第三十六は、奥書部分が切断されているが天平15年(743)5月11日に書写された新出の天平写経(五月十一日経)と判明。金剛峯寺本・東博本と並べて比較展示する。また河内長野市の天野山金剛寺一切経中に含まれる、堺市域の寺院で書写された経典を選びだし、野々井寺、常楽寺、善福寺、華林寺、山井寺、長承寺、念佛寺、大野寺、釈尊寺、向泉寺、栄多寺などを復元しつつ展示。このうち廃絶した行基院山井寺から栂自治会に引き継がれ守られる千手観音立像は平安時代、10世紀の作例で、後補ながら板状の小手を多数取り付けた魅力的な真千手の像。経典奥書から地域史を立ち上げるのはとても効果的な手法。堺出身で鎖国下のチベットに入国した河口慧海も取り上げ、東洋文庫の梵文法華経貝葉写本(11世紀)など貴重な慧海請来経も並ぶ。充実。図録あり(80ページ、1240円)。

國學院大學博物館「國學院大學図書館所蔵那智参詣曼荼羅巻子本の仕立てを探る」「列島の祈り」鑑賞記

12月13日、社会教育実践研究センターの平成30年度博物館学芸員専門講座に登壇のため上京。途中渋谷へ立ち寄り。

國學院大學博物館
 特集展示 國學院大學図書館所蔵那智参詣曼荼羅巻子本の仕立てを探る-東京文化財研究所による光科学的調査の成果報告-
(12月5日~1月14日)

 那智参詣曼荼羅巻子本の東文研による光科学的調査の成果を紹介(同大文学部歴史地理学教室主催)。掛幅装から巻子への変更が、実に細かな調整によって切り貼りしていることが明らかにされており、驚きの連続。切り抜いた画面と画面の貼り合わせ部も精密で、展示されている原本を目を凝らして見ても、ただちに分からない。使用形態の変更時期は、木曳き部分の削除、本願の門・塀消去を重視して参詣曼荼羅本来の機能が変容した段階での改変と捉える。滝の上部を使用しなかったことも大胆と思う。解説シートあり。同調査の報告書として『國學院大學図書館所蔵那智参詣曼荼羅巻子本光学的調査報告書』(2018年2月発行)あり。またこの巻子本の画面の復元については吉田敏弘「那智参詣曼荼羅」(大学院六十周年記念國學院大學影印叢書編集委員会編『起請文と那智参詣曼荼羅』、朝倉書店、2017年3月)で成果が紹介される。

 企画展 列島の祈り-祈年祭・新嘗祭・大嘗祭-
(11月3日~1月14日)

 稲作に関わる国家祭祀である祈年祭・新嘗祭・大嘗祭の歴史的経緯を紹介。令義解(重要文化財、同大図書館蔵)、御田植巫女舞図屏風(館蔵)など。特集展示「記念の法会と神々」を同時開催。展示内容とは一致しないものの、会期途中から『資料で見る大嘗祭』(19ページ、300円)を頒布。金沢文庫・神奈川歴博・国文学研究資料館・名古屋大学大学院人文学研究科付属人類文化遺産テクスト学研究センターとの連携事業「列島の祈り」に基づく展示。

国文学研究資料館 「祈りと救いの中世」、東京国立博物館「8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」」鑑賞記

12月6日、出張の用務の前後に展示鑑賞。

国文学研究資料館
 特別展示 祈りと救いの中世
(10月15日~12月15日)

 表白・願文・縁起・唱導書・講式等と仏画類から、中世における仏事の場で人々を救済に誘った唱導(導師・講師らが行った説法)の魅力とその諸文芸への影響を紹介。最明寺往生要集(重文)、国立歴史民俗博物館江都督納言願文集(重文)・十二巻本表白集、称名寺転法輪鈔(国宝)・言泉集(国宝)、真福寺維摩会記・覚任表白集などなど、ずらり重要資料を集める。仏画では圓福寺観心十界図、金剛院地蔵十王図(清代)と東京都下の作例を選んでいて地域性にも配慮。経典では治承4年(1180)書写の諸家分蔵平基親願経のうち3巻を展示。見返し絵の菩薩と胡蝶の美しさ。図録あり(64ページ、無料)。凸版印刷の開発した高精細画像を閲覧できるモニターも設置(操作はタブレット)。金沢文庫・神奈川歴博・國學院大學博物館・名古屋大学大学院人文学研究科付属人類文化遺産テクスト学研究センターとの連携事業「列島の祈り」に基づく展示。

東京国立博物館
 8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」
(11月27日~12月25日)

 聖徳太子絵伝の高精細画像を自由に大画面で見られるモニター(操作はタブレット)と、原寸大パネル10面を設置。再現パネルと高精細画像の往還で、全体と細部とを鑑賞する。印刷の限界をモニターで補う展示手法。研究資料を鑑賞用資料に汎用化する一つの方向性。国立文化財機構文化財活用センターの企画、NHKエデュケーショナルの製作。

 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
(10月2日~12月9日)

 再訪。六観音像の光背外した展示空間を確認しておく。図録あり(260ページ、2300円)。

上原美術館「伊豆の平安仏」、河津平安の仏像展示館、願成就院、かんなみほとけの里美術館鑑賞記

12月2日、朝4時に和歌山を飛び出して伊豆半島へ。

上原美術館
 特別展 伊豆の平安仏-半島にひらいた仏教文化-
(9月22日~12月9日)

 リニューアル1周年を記念して、同館が継続して調査を行ってきた伊豆半島の仏像のうち、平安時代に遡る魅力的な作例を集める。伊豆市金龍院千手観音立像は眦を切り上げ顎の張った雄偉な風貌、胴を強く絞った体型など平安時代前期の余風を強く残す。同寺の不動明王坐像も古様を示す10世紀彫像。下田市法雲寺如意輪観音坐像は、多臂像ながら極力一木から木取りし、風貌に沈鬱さをやや残した10世紀の作例。河津町地福院吉祥天立像も、像の大略を一木より彫出した10世紀に遡る作例であるが、薬師堂本尊として安置されてきたことに驚き。吉祥薬師の稀有な一例のよう。河津平安の仏像展示館(南禅寺)からは平安時代前期の不動明王坐像、梵天立像・帝釈天立像、そして仏手など仏像断片がお出まし。これら仏像を通じて伊豆半島の古代における宗教環境が濃密に立ち上がるとともに、各像の修理痕跡や伝来情報から幾層にも重ねられた地域の信仰史が浮かび上がる。同館の担ってきた伊豆地域仏教美術研究の蓄積と信頼によってなし得た優れた展示。図録あり(48ページ、500円)。

河津平安の仏像展示館(南禅寺)
 河津町南禅寺伝来の仏像の展示施設として2013年オープン。本尊薬師如来坐像は重量感に溢れる9世紀彫像。迫力ある風貌の二天立像など9~10世紀の彫像が林立して圧倒される。10世紀の男神立像、女神立像の大きさにも驚く。本堂も開けてくださり虚空蔵菩薩坐像、地蔵菩薩立像拝観。係の方からは榧製のお守りや銀杏まで頂戴する。地域の方々が主体となって施設を作り、また運営されているとのことで、地域に伝来してきた魅力的な仏像を大切に親しみをもって継承する素晴らしい活動事例。

願成就院
 20年ぶりぐらいに訪問。運慶作の文治2年(1186)造像の阿弥陀如来坐像、不動明王二童子立像、毘沙門天立像をご拝観。宝物館では像内納入の銘札と、地蔵菩薩坐像など拝観。本堂本尊もシルエットを遠くに眺めて拝む。

かんなみほとけの里美術館
 函南町桑原地区の桑原薬師堂伝来仏像群の安置施設として2012年オープン。とても洗練された展示空間に、平安時代後期の薬師如来坐像と鎌倉時代の十二神将像、実慶作の阿弥陀三尊像などが林立。仏像群は桑原区から町へ譲渡の上、施設を設置して公開という経緯で、地域の方々の理解と尽力、そして行政との協力によって地域のシンボルたる仏像を継承する注目すべき活動事例。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

月別アーカイブ

ブログ内検索