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東大寺ミュージアム「華厳経の絵画」鑑賞記

東大寺ミュージアム
 特集展示 華厳経の絵画
(4月24日~5月28日)

 華厳経にまつわる経典と絵画を展示。紺紙金字華厳経(重文)は建久6年(1195)の大仏殿落慶供養会に際して書写された後鳥羽天皇奉納品。華厳五十五所絵断簡は、勝熱婆羅門、大願精進力救護一切衆生主夜神、堅固解脱長者の3面。貴重な平安仏画、図録なし。同行の皆さんと多聞天立像・持国天立像をじっくりと鑑賞。

龍谷ミュージアム「因幡堂 平等寺」、京都国立博物館「国宝一遍聖絵と時宗の名宝」鑑賞記

5月17日、美術史学会へ参加するべく京都行き。会場(京都工芸繊維大)入りの前に、絶対見逃せない2つの展覧会をダッシュで鑑賞。

龍谷ミュージアム
 企画展 因幡堂 平等寺-京に飛んできたお薬師さん-
(4月20日~6月9日)

 因幡堂平等寺の伝来資料と関連資料を集約して展観。東京国立博物館所蔵の因幡堂縁起(重文)のほか、因幡堂縁起の諸本を徹底集約。本尊薬師如来立像(重文)は因幡堂縁起に長保5年(1003)に因幡国から橘行平邸に飛来したと語られる「飛んできたお薬師さん」。造像時期を検討する上でも縁起の「飛来」時期は示唆的。やはり因幡国から飛来と伝承される延算寺薬師如来立像(重文)も関連資料として出陳。ほか平等寺伝来の中近世仏像が多数公開され、中でも元和7年(1621)康正作の弘法大師坐像はその最晩年の作で、近世仏像研究の上で重要な発見。平等寺近隣西念寺の阿弥陀如来坐像は、湛慶あるいはそのごく周辺の有力仏師の手になる洗練された鎌倉時代の作例で、ありがたい出陳。仏教文化をテーマとする博物館として、京都の寺院の文化財を新規調査を踏まえて水準高く紹介するこうした活動は重要で、大学ミュージアムの地域貢献のありうべきかたちをも体現している。図録あり(104ページ、1800円)。

京都国立博物館
 特別展 時宗二祖上人七百年御遠忌記念 国宝 一遍聖絵と時宗の名宝
(4月13日~6月9日)

 真教上人700年遠忌の西国での先行展示。時宗本山清浄光寺と、七条道場金光寺を引き継ぐ長楽寺の資料群を中心に時宗(時衆)の歴史を紹介し、真光寺・清浄光寺・金蓮寺ほかの遊行上人縁起絵の諸本を集約して二祖他阿真教を顕彰する。目玉の一遍聖絵(国宝)12巻の全巻公開にあたっては、その美術史的鑑賞の便に留まらず、各巻模本も活用しつつ多数の場面を展開して一遍と時衆の(縁起的)歴史の紹介にも目配りする。また長楽寺・蓮台寺・常称寺の真教像、長楽寺・西郷寺・迎称寺の一鎮像をはじめ、鎌倉~南北朝期の遊行上人像を集める貴重な機会。各地の時宗道場伝来の仏像仏画も取り上げ、阿弥陀寺・聞名寺の行快作例ほか鎌倉時代彫像や、金蓮寺阿弥陀如来像(南宋)や阿弥陀浄土変相図(南宋~元)の宋元仏画など、時宗の幅に留まらないラインナップ。図録あり(282ページ、2500円)。

奈良国立博物館「国宝の殿堂 藤田美術館展」、高野山霊宝館「高野山と不思議な話」鑑賞記

5月14日、午後からの取材が、百舌鳥・古市古墳群世界遺産登録推薦の余波でキャンセルになったため、急遽半日代休をとって展覧会巡り。

奈良国立博物館
 特別展 国宝の殿堂 藤田美術館展-曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき-
(4月13日~6月9日)

 現在休館中の藤田美術館コレクションの優品を、指定文化財の全件を含んで網羅的に紹介。曜変天目茶碗(国宝)を展覧会のアイコンとして押し出しつつ、奈良に伝来し明治期の混乱の中で流出した仏教美術・宗教文化に関わる資料群を重厚に選定。興福寺大乗院伝来の玄奘三蔵絵、内山永久寺伝来両部大経感得図(前期)、快慶作の地蔵菩薩立像、千体聖観音菩薩立像(興福寺千体仏)、伝西大寺旧蔵の仏像彩画円柱、灯明寺旧蔵四天王像扉絵、東大寺戒壇院伝来十六羅漢図、薬師寺休ヶ丘八幡宮伝来の花蝶蒔絵挾軾、手向山八幡宮伝来の唐鞍などなど。仏教美術の再発見・再評価と、「国宝」保護の営みへの啓発的視点を通底させることで、他機関コレクション展でありながら文化財保護法に基づき設置された仏教美術の殿堂という奈良博の特徴が存分に発揮されていて違和感がないのはさすが。図録あり(286ページ、2300円)。

高野山霊宝館
 企画展 高野山と不思議な話
(4月20日~7月15日)

 山内伝来の数々の文化財を展示し、高野山における祖師や先師、神々、聖地や神器にまつわる伝承や神話を紹介。地蔵院本高野大師行状図画(重文)は大師と狩場明神出会いの場面を展示。竜光院厨子入倶利伽羅竜剣(重文)、伝船中湧現観音像(国宝)、成福院天河弁才天像、影向した姿を描いた宝寿院高野明神像・丹生明神像のほか、正智院道範大徳像、浄菩提院の覚海尊師像、金剛峯寺の応其上人像、豊臣秀次の辞世の句を書いた直筆短冊、江戸時代に雷に打たれて割けた大塔心柱などなど。図録なし。ついでに壇上伽藍の御社にお参り。

石川県立歴史博物館「いしかわの神々」、石川県埋蔵文化財センター「春季公開」鑑賞記

5月7日、好天のもと金沢へ車走らせる。
石川県立歴史博物館
 特別展 いしかわの神々-信仰と美の世界-
(4月27日~6月2日)

 石川県内の資料を中心に神像・本地仏像・垂迹画・懸仏・神社奉納品及び祭祀に関わる考古資料を集める。七尾市・久麻加夫都阿良加志比古神社の男神坐像(木心が二つあり神木を使用したか)、珠洲市・須須神社の男神坐像5軀のうち3軀など重要文化財を含む約20軀の神像の中では、能登半島の突端、珠洲市・白山神社の男神坐像、同・古麻志比古神社の男神坐像がともに10世紀に遡る法量も大きな作例で重要。ほか志賀町・龍護寺薬師如来坐像(県指定)は少彦名社本地仏、羽咋市・正覚院阿弥陀如来坐像(重文)は気多神宮寺講堂本尊。冒頭ごあいさつに過疎化・高齢化による文化財継承への危惧が開催動機とされていて、共感。図録あり(172ページ、2000円)。会期中無休。

石川県埋蔵文化財センター
 春季公開 
(4月27日~5月26日)

 同センター収蔵の「重要文化財 加賀郡牓示札(津幡町加茂遺跡出土)」(4/27~5/6)と「県指定文化財 野々江本江寺遺跡出土品(珠洲市)」(4/27~5/26)の展示公開。加賀郡牓示札は嘉祥2年(849)銘を有する現存する唯一の古代の牓示。本江寺遺跡出土品からはこれも現存最古の木製笠塔婆と木製板碑。笠塔婆は梵字バンを表した額が残存。歴博展示の神像も含め、宗教文化を考える上で能登半島先端の珠洲市の資料が極めて重要であることをしっかり把握。手作りリーフレットあり。

中之島香雪美術館「明恵の夢と高山寺」、東博「国宝 東寺」「2019新指定国宝・重要文化財」、埼玉歴民博「東国の地獄極楽」、群馬歴博「大新田氏展」鑑賞記

担当特別展を這々の体でオープンさせ、約2ヶ月ぶりの展覧会鑑賞。

4月30日
中之島香雪美術館
 特別展 明恵の夢と高山寺
(3月21日~5月6日)

 村山コレクションに収蔵される、明恵筆の夢記1巻(建仁4年〔1204〕ごろ)を結節点として栂尾高山寺の文化財を核としつつ自館コレクションを散りばめた明恵&鳥獣戯画展。樹上座禅像と夢記、そして仏眼仏母像を通じて明恵とまみえるありがたい機会。溢れる慈悲と真摯さ、そして明晰な思考、かくあるべしと背筋を伸ばす。鳥獸戯画も贅沢に参考出品。行列もほぼなく、かくあるべし。図録あり(176ページ、1800円)。

5月1日
東京国立博物館
 特別展 国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅-
(3月26日~6月2日)

 東寺宝物の東京出開帳展。風信帖(空海筆)、御請来目録(最澄筆)の国宝書蹟に始まり、真言七祖像、五大尊像、西院曼荼羅、京博十二天像の国宝絵画、唐請来密教法具、西院御影堂天蓋の国宝工芸品、そして講堂諸尊の数々と女神像の国宝彫像と、タイトル通りのラインナップ。東博平成館の強みである大空間を活かして広々と林立させた講堂諸尊像は、等間隔に配置された丸い台、そしてその間に多数参集する善男善女も一体となって、仏の充満する立体的な曼荼羅空間を実現しているかのよう。空海の意楽による特殊な羯磨曼荼羅であるので、いろんな再解釈や再構成も許されましょう。普段見られない背面のようすをたどりながらぐるり一周。図録あり(272ページ、2700円)。本館では特集「密教彫刻の世界」(3/19~6/23)を連動させて開催中。東博のおなじみの彫刻コレクションをうまく再配置。

 特集 2019新指定国宝・重要文化財
(4月16日~5月6日)

 恒例の新指定国宝重文お披露目展。彫刻主体に大阪・壺井八幡宮の頼円・実円作の神像をじっくり鑑賞(ちょうど自館で同じ頼円・実円作の広利時十一面観音立像を展示中)。ほか兵庫・朝光寺千手観音立像や新薬師寺地蔵菩薩立像、萬行寺阿弥陀如来立像といった、地域の中で地道に調査され評価されてきた作例をピックアップしているのが、素晴らしい方向性。和歌山県からは阿須賀神社の懸仏群が考古の分野で阿須賀神社境内(蓬莱山)出土品として指定。戦後、台風被害で倒れた社殿裏の木の根元から出土し、東博が発掘調査しているという珍しい事例。世が世なら東博収蔵品だったかも。

埼玉県立歴史と民俗の博物館
 特別展 東国の地獄極楽
(3月16日~5月6日)

 地獄極楽をテーマとしつつも、3章副題の「浄土宗第三祖良忠と関東三派の東国布教」を基軸として展覧会構成。白旗派・名越派・藤田派の浄土宗関東三派の教線拡大の状況を地道な資料調査と地域史研究の成果を踏まえて丁寧に提示。善光寺式阿弥陀三尊像は、下野国那須伝来の東博建長6年(1254)在銘像、栃木・円通寺(名越派)の作例、福島県いわき市所蔵の如来寺旧蔵嘉元2年(1304)修理銘を有する作例(伝良忠所蔵像)を紹介。ほか熊谷市東善寺の快慶風が顕著な阿弥陀如来立像も出陳。図録あり(128ページ、1000円)。

群馬県立歴史博物館
 企画展 大新田氏展
(4月27日~6月16日)

 新田義貞を巡る研究の大幅な進展を、実物資料を集約して展覧会として共有化を図る意欲的な内容。昨年発見された足利尊氏像(神護寺の肖像と似るもの)や福井・藤島神社の新田義貞像、太田市総持寺の伝儀貞像(本来は怖い顔の随身像)など肖像を集めるとともに、長楽寺文書など多数の中世文書を集約して、堅実な歴史叙述に努めて新田一族の鎌倉~南北朝期の動向をあきらかにする。地域史研究の観点から仏像・神像の調査も行われ、その成果も反映。太田市十二所神社の神像は正元元年(1259)造像。神仏分離で隣の円福寺から神社に移されたという、普通とは逆のパターンで、重要な新資料。その円福寺からは南北朝時代とされる毘沙門天立像も出陳。総持寺の不動明王立像は10世紀の重量感あふれる作例で県指定文化財指定。迫力満点。世羅田の長楽寺の文化財も多数出品され、新田荘の中世をモノ資料から見つめる。図録あり(152ページ、920円)。

豊橋市美術博物館「吉田天王社と神主石田家」鑑賞記

豊橋市美術博物館
 企画展 吉田天王社と神主石田家
(2月19日~3月24日)

 豪壮な手筒花火祭事で著名な吉田神社の社宝と神主家伝来資料から豊橋の信仰の歴史を浮かび上がらせる。神幸祭にて使用されている獅子頭(御頭様)は全長が短く全体に深い皺が刻まれて古様を見せる南北朝~室町時代ごろの作例。追儺の儀式で使われたとみられる鬼面は大ぶりで鼻が上へと反った室町時代の作例。中世の狛犬も二対。また牛頭天王信仰の広がりも紹介し、西尾市久麻久神社牛頭天王立像はやや素朴ながら神威を表出した平安時代後期の像。豊橋市椙本八幡神社の牛頭天王坐像は整った作風を示す鎌倉時代の新出作例。ほか鞍・鐙や絵馬、古文書、仮面など多様な資料を集約。図録あり(112頁、1000円)。

高野山霊宝館「密教の美術」鑑賞記

3月1日、高野山麓、山上での仕事の合間に立ち寄り。
高野山霊宝館
 平成30年平常展 密教の美術
(1月19日~4月14日)

 今回の平常展の軸は孔雀明王。正治2年(1200)快慶作の、羽を広げた孔雀に座した孔雀明王坐像(重文)を安置する新館第2室は照明を落として演出し、あたかも孔雀経法を修する道場のように荘厳。中尊寺経から大金色孔雀王咒経(国宝)、荒川経から大孔雀明王経(重文)も並べる。金輪塔本尊の一字金輪仏頂坐像も並び、平安時代末期の奈良仏師作例から鎌倉時代初期の慶派仏師への作風展開をうかがう。冷え込む紫雲殿には凍るように鮮やかな彩色の宋元及び高麗仏画の優品が出陳。阿弥陀八大菩薩像は南宋~元代の作例、宝寿院の楊柳観音像は高麗時代、常喜院の薬師曼荼羅図は隆慶6年(1572)銘の朝鮮仏画。ほか正智院の影向明神像をじっくり。狩衣・烏帽子で立ち姿の高野明神像の図像成立時期について考える。図録なし。

奈良国立博物館特別陳列「覚盛上人770年御忌 鎌倉時代の唐招提寺と戒律復興」

2月10日
奈良国立博物館
 特別陳列 覚盛上人770年御忌 鎌倉時代の唐招提寺と戒律復興
(2月8日~3月14日)

 興正菩薩叡尊とともに自誓受戒(三師七証を伴わずに本尊に誓いを立てて菩薩戒を受ける方法)という跳躍的な方法によって日本に戒律を復興させた大悲菩薩覚盛を軸に、その前後を挟む貞慶と證玄の事蹟もあわせて鎌倉時代の唐招提寺を紹介する。応永2年(1395)招提寺仏師成慶(椿井成慶)の手になる大悲菩薩覚盛像をじっくり。銘記に「康慶法眼之流、興福寺住」とあるのも貴重な情報で、また半世紀~1世紀ほど古く見えるのは依るべき古典に囲まれた当該期の奈良仏師の特徴。ほか覚盛自筆の覚盛願経、覚盛所用と伝えられる二十五条袈裟、證玄造営の釈迦如来立像、證玄骨臓器(!)、東征伝絵など。南都の宗教史を寺社単位にてコンパクトに紹介する奈良博の真骨頂というべきありがたい機会。図録あり(56ページ、1000円)。

和歌山大学紀州経済史文化史研究所「加太・友ヶ島の信仰と歴史」鑑賞記

1月31日
和歌山大学紀州経済史文化史研究所
 特別展 加太・友ヶ島の信仰と歴史-葛城修験二十八宿の世界-
(1月10日~3月8日)

 葛城修験とその重要な行場である加太・友ヶ島について、向井家(迎之坊)に伝来した文書や資料を中心に紹介する。延宝9年(1671)役行者入峯以来伽陀寺由来書、葛城峯中記、葛城嶺中記といった葛城修験の行場に関わる史料のほか、大日如来懸仏、深蛇龍王の爪(鮫の歯か)、臥龍硯など、迎之坊の信仰の場を彷彿とさせる資料が並ぶ。展覧会のビジュアルイメージに使っている役行者像(神変大菩薩御絵像)は安政3年(1856)月海の筆。和歌山県博でも月海良融(利根川月海・1801?~1872)の肖像画を、大峰葛城千日満行者としての要素から数年前に収蔵したところだったので、こんなに近くに関連資料が出現して本当にびっくり。図録あり(16ページ、無料)、展示品目録附解説(9ページ、無料)あり。

市立五條文化博物館「五條の冬の行事-追儺-」鑑賞記

1月20日
市立五條文化博物館
 特別展 五條の冬の行事-追儺-
(12月22日~2月11日)

 五條市内の修正会追儺行事に用いられてきた鬼面群二組の実物展示。念仏寺陀々堂の鬼はしり(国指定重要無形民俗文化財)で用いられてきた鬼面(父面・母面・子面・伝阿弥陀面)は墨書銘により文明18年(1486)、山陰村右兵衛次郎による制作と分かる基準作例。現在の行事では太田古朴作(!)の複製面を使用。坂井部郷にかかわる文書(個人蔵)から中世~近世の祭礼のようすを復元しつつ丁寧に展示。安生寺の鬼面(太郎~五郎面)も古様を残すおおらかな表現。先行する中世仮面を近世に写したものか。こちらは修正会は途絶えているが近年地元小学校で再興を進めている由。念仏寺父面の原寸大複製(樹脂製)のさわれる展示も開催中。充実の内容。展示内容を解説した資料(A4・8ページ)あり。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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