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法隆寺大宝蔵殿「法隆寺秘宝展」、東寺宝物館「東寺の菩薩像」、龍谷ミュージアム「お釈迦さんワールド」、京都国立博物館「池大雅」鑑賞記

5月14日
法隆寺大宝蔵殿
 法隆寺秘宝展
(3月20日~5月31日)

 恒例、春の秘宝展。飛鳥~鎌倉時代の仏像のほか、建長6年(1254)絵仏師尭尊作の聖皇曼荼羅、貞治3年(1364)の法隆寺縁起白拍子、紺絹地金銀泥両界種子曼荼羅(鎌倉時代)、七大寺巡礼私記(展示部分は法隆寺条)など。西院伽藍で金堂諸尊と講堂諸尊、大宝蔵院のきらめく仏像群、東院伽藍の救世観音像もご拝観。

當麻寺
 練供養会式

 来年から4月14日(中将姫命日)に日程が変わるので、旧暦による最後の練供養(来迎会)を見学。平日ながら善男善女が大参集。来迎のリアリティを体験することは、(死後の)救済の確信を得るための行為。道具立てとしては、視線の集中する観音が奉持する往生者像が重要。しっかり写真撮る。

5月16日
東寺宝物館
 東寺の菩薩像-慈悲と祈りのかたち-
(3月20日~5月25日)

 食堂本尊千手観音立像の修理完成から50周年とのことで、菩薩をめぐる資料を集める。月輪内に結跏趺坐する聖観音を中央に描き、その周囲に八葉の蓮弁上の8駆の阿弥陀如来が取り囲む様子を斜め上から俯瞰する特殊な観音曼荼羅(阿弥陀曼荼羅)、9世紀の聖僧文殊坐像など。鎌倉時代とされる菩薩坐像(平成4年(1992)発行『東寺の菩薩像』16番の像)は、高髻(ただし大部分亡失)上部正面に髪束で花弁形を表し、背面臀部の横皺のある腰帯表現があって、平安時代末期の奈良仏師作例のよう。図版では全然分からなかったので、やはり展覧会はありがたい。リーフレットあり(8ページ)。

龍谷ミュージアム
 特別展 お釈迦さんワールド-ブッダになったひと-
(4月21日~6月17日)

 仏教総合博物館を表明する龍谷ミュージアムで、仏教の開祖であるガウタマ・シッダールタを真正面から紹介し、釈迦への思慕(信仰)の系譜をたどりながら、仏教芸術の基本たる仏伝の表象を紹介する好企画。奈良博仏伝浮彫はストゥーパを模した台上にぐるりと展示して効果的。鹿王院の伝顔輝筆釈迦三尊像や伝牧谿筆出山釈迦図、西来寺出山釈迦図、中之坊寺の周四朗筆仏涅槃図、叡福寺涅槃変相図といった宋元仏画の数々、そして涅槃図の周囲に釈迦の事蹟を配した涅槃変相図や釈迦八相図など仏伝の芸術を集め、現存唯一の写本である金剛寺十二問経や七寺釈迦譜など仏伝諸経典も充実。手塚治虫『ブッダ』の直筆原画も各所に効果的に展示。テーマの深さ、徹底した作品収集は龍谷ミュージアムの開館以来のよき伝統。展示室内のシアターでは展覧会に合わせたコンテンツを上映(釈迦の生涯を紹介)。図録あり(288ページ、2000円)。

京都国立博物館
 特別展 池大雅-天衣無縫の旅の画家-
(4月7日~5月20日)

 文人画家、池大雅の大回顧展。絵と書がぎっちり。文化庁前後赤壁図屏風、遍照光院山水人物図襖、瀟湘勝概図屏風など大作の代表作はもとより、李珩筆腕底煙霞帖、張端図筆秋景山水図など手本とした中国画や画譜、指墨(頭)画のいろいろを集めて、その生涯の画風と書風の形成をたどる。祇園南海の跋文(展示なし)のある楽志論図巻、自賛に「奉以龍門祇園先生」とある浅間山真景図といった紀州関連の作品と、不思議にダイナミックな運筆の絵と書の騰雲飛濤図、横長で雄大な構図の四季山水図4幅(冬景のクリアーに見晴るかす遠景!)をじっくり。図録あり(304ページ、2500円)。

滋賀県立安土城考古博物館「武将たちは何故、神になるのか」、奈良国立博物館「国宝 春日大社のすべて」、春日大社国宝殿「聖域」鑑賞記

5月3日
滋賀県立安土城考古博物館
特別展 武将たちは何故、神になるのか-神像の成立から天下人の神格化まで-
(4月28日~6月17日)

 神像表現と肖像表現の諸相を踏まえ、戦国~安土桃山時代における武将の神格化についてクローズアップする。主題部分(Ⅳ章)では織田信長・豊臣秀吉(豊国大明神)・徳川家康(東照大権現)の画像と彫像、秀頼筆の豊国大明神神号を集め、Ⅰ~Ⅲ章で仏像・神像・垂迹画をぎっちり展示。本隆寺僧形神坐像、地主神社僧形神坐像、山門鳥居堂男神立像、玉祖神社男神・女神坐像、市比賣神社女神坐像、壺井八幡宮女神坐像・童子形神坐像、談山神社藤原鎌足像、菅山寺天神坐像、大田神社僧形天神坐像、摠見寺織田信長像、理智院豊国大明神坐像、大樹寺東照大権現坐像、徳川記念財団東照大権現霊夢像などなど。神像とは何かという難解かつ重要な研究課題に対して、展覧会という形でモノ資料をもって体系化する意欲的な取り組み。図録あり(146ページ、1500円)。所収の山下立「日本の神とその造形をめぐって」は18ページにわたる大論文。

5月4日
奈良国立博物館
 創建1250年記念特別展 国宝 春日大社のすべて
(4月14日~6月10日)

藤原氏の氏社である春日社の創建1250年記年展。国宝古神宝類と武器・武具などの神宝、および多様な春日曼荼羅と春日本地仏の遺宝を紹介。昨年初頭の東京国立博物館「春日大社 千年の至宝」に引き続いての大規模展示であるが、何より、バリエーション豊富な春日曼荼羅(春日宮曼荼羅・春日補陀洛山曼荼羅・春日浄土曼荼羅・春日社寺曼荼羅・春日南円堂曼荼羅・春日若宮曼荼羅・春日鹿曼荼羅・春日本迹曼荼羅・春日本地仏曼荼羅・春日名号曼荼羅)を徹底的に集成しているのは、これまで継続して春日信仰展を開催してきた奈良博の膨大な研究蓄積によるもので、図録(376ページ、2500円)所収の谷口耕生「春日曼荼羅の成立に関する覚書」とあわせ、現時点での春日曼荼羅研究の到達地点が提示される。古神宝、春日曼荼羅とも、前後期で(後期:5/15~)大半が展示替え。

春日大社国宝殿
 御創建1250年記念展Ⅱ 聖域 御本殿を飾る美術
(4月1日~8月26日)

 春日大社本殿修理に伴って剥ぎ取り保存された御間塀障壁画四面など、神の住まう空間を荘厳する調度や護衛する霊獣を集めて展示。四社殿それぞれに安置された鎌倉時代(一部室町時代)の獅子・狛犬4対、瑠璃灯籠、花菱螺鈿八足案など。

東博「新指定国宝・重要文化財」、國華130周年「名作誕生」、北区飛鳥山博「徳川家光と若一王子縁起絵巻」鑑賞記

4月25日
東京国立博物館
平成30年新指定 国宝・重要文化財
(4月17日~5月6日)

恒例新指定展。高野山領大田荘(広島県世羅町)の鎮守・丹生神社の丹生明神坐像・高野明神坐像に張り付いて鑑賞。高野山鎮守天野社祭神像の木型と推定される和歌山・三谷薬師堂女神坐像との類似は、そのかたちの先後関係とともに、鎌倉時代初期の高野山における地域支配と神像図像の整備・造像のあり方を考える上でも重要。ほかに鎌倉初期慶派様式を示す、絢爛豪華な彩色・截金の西光寺地蔵菩薩立像、「巧匠法眼快慶」銘を有する圓常寺阿弥陀如来立像、康俊の手になることが確実な大光寺乾峯士曇坐像、奈良仏師の手になる本山慈恩寺の釈迦如来坐像・文殊菩薩坐像・普賢菩薩坐像などなど、彫刻の優品をありがたく鑑賞。

創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年特別展 名作誕生-つながる日本美術
(4月13日~5月27日)

 國華創刊130年記念展。日本列島に伝わった美術資料のうち、人々の心を揺さぶる「名作」が、いかなる「つながり」によってかたち作られたのかを作例の分類と比較によって提示する、まさしく美術史のアカデミックな研究手法を展示室内に立ち上げる。彫刻では、檀像→代用檀像→木彫像の隆盛という、木彫論の四半世紀の成果を提示。宗教美術ではほかに、法華経と女人救済と普賢菩薩像、縁起と儀礼の場と祖師絵伝を、それぞれテーマとしてピックアップ。ほか雪舟・宗達・若冲、伊勢物語・源氏物語などを取り上げ、正統としての中国美術、正統としての古典との関わり方(模倣、転写、転用、意匠化などなど)の諸相を提示。形式化や硬直化についても触れると「写し」のイメージは理解しやすいが「名作」展では難しいか。図録あり(320ページ、2500円)。

北区飛鳥山博物館
企画展 徳川家光と若一王子縁起絵巻
(3月17日~5月6日)

徳川家光が寛永18年(1641)に制作した若一王子縁起絵巻、上中下巻の模本を極力長ーく広げて展示するとともに、巻頭から巻末までの図版と詞書全文もあわせて掲示する丁寧さ。寛永期幕府寺社政策と詞書編纂に当たった林羅山の思想など原本(幕末期焼失)の制作背景に迫りつつ、模本群の制作者についても精緻な検討を行って、資料の歴史的位置づけを明確にしており有益。図録(108ページ、800円)にも、全紙の図版(画面が分断されないよう配慮)、詞書、関連資料、論考を掲載。

金剛寺「新国宝三尊特別拝観」、四天王寺宝物館「国宝「懸守」納入の仏像」鑑賞記

4月16日
金剛寺
金堂落慶記念 新国宝三尊特別拝観
(3月28日~4月18日)

 平成21年(2009)から行われていた金堂修理が完成し、同じく修理が施されて国宝指定された大日如来坐像・不動明王坐像・降三世明王坐像の三尊が復位して落慶。大日如来は金剛寺創建の治承2年(1178)ごろ造像、不動明王は今回発見された像内銘により天福2年(1234)行快の作と判明、降三世明王も同作。修理の成果として、大日如来の台座・光背が本体完成後も未完成のまま半世紀ほどをかけて順次整備されたこと、頭部背面側部材の上端に螺髪が刻まれ、薄板材を貼り回して隠されていることが判明。造像時に他像の部材を転用したのだろうとのこと(奥健夫「天野山金剛寺金堂三尊像の保存修理と国宝指定」『月刊文化財』650、2017・11)。結縁。

4月22日
四天王寺宝物館
国宝「懸守」納入の仏像-科学調査による新知見速報-
(4月21日~5月6日)

 京博国宝展出陳時に行ったCTスキャンで、現存最古の懸守(国宝)7懸のうち桜折枝文分の内部に円筒形の仏龕が納められていることが判明。仏龕そのものは懸守を解体しないと出せないが、スキャンデータを元に3Dプリンターで出力したレプリカを展示。極小サイズであるが、平安後期、12世紀(前半か)の如来立像で精緻な台座・光背を伴う。檀龕の蓋部分には案上に香炉・供華が表され、地には截金で菱繋文を施す。院政期小檀像の新資料(見れないけど)。檀像つながりで千手観音及び二天箱仏(平安後期・重文)を参考展示。企画展「地より湧出した難波の大伽藍-四天王寺の考古学-」(図録あり、40ページ、無料)、特集陳列「四天王寺の春」も開催中(3/11~5/6)も開催。

MIHO MUSEUM特別展「猿楽と面」鑑賞記

3月25日
MIHO MUSEUM
 特別展 猿楽と面-大和・近江および白山の周辺から-
(3月10日~6月3日)

 大和(紀伊含む)・近江・白山周辺の社寺などに群として伝来する、作風に定形化の見られない個性溢れる魅力的な中世猿楽面を多数集め、3期(Ⅰ期3/10~4/8、Ⅱ期4/10~5/6、Ⅲ期5/8~6/3)に分けて紹介する。Ⅰ期では個人蔵の鎌倉時代の大型の翁、長尾神社の翁、談山神社の摩多羅神、天河神社の「おちのきたろう」銘の翁・三番叟、永青文庫の伝日光作翁、甲津原天満神社の翁・三番叟、政所八幡神社の翁・三番叟、白山長滝神社の酒惣作翁、白山中居神社の日与十郎作父尉など、翁とその系統の面を集めて有益。地元滋賀の古面では、門外不出の甲津原天満神社面がずらり。尉面の不思議な現実感と、霊面の見ていると不安になる恐ろしさ。仮面は3期のそれぞれで大半が入れ替わるので3回行くしかあるまい…。図録あり(402ページ、3000円)。

大阪府立近つ飛鳥博物館「慈雲尊者と高貴寺」鑑賞記

3月11日
大阪府立近つ飛鳥博物館
 慈雲生誕300年記念展 慈雲尊者と高貴寺-いつくしみの書とその教え-
(1月20日~3月18日)

 慈雲尊者の生誕300年を記念して、住持として晩年を過ごし、その墓所のある河内・高貴寺のそば、近つ飛鳥博物館で、慈雲飲光の肖像と墨蹟、そして尊者の提唱した正法律などの思想を紹介する。資料は高貴寺、黒川古文化研究所所蔵のものに絞り、肖像は原在中筆のものと、山本義照筆本を複数、原在中・慈雲の紺紙金泥種子両界曼荼羅、そして何より名号梵字真言八祖や法語類など墨蹟の優品がずらり。端正で伸びやかな渇筆を味わう。図録(138ページ、1800円)は黒川古文化研究所の発行(編集杉本欣久)。慈雲提唱の十善戒は展示室でも図録でも紹介。弟子某甲盡未来際~。
 鑑賞後、久しぶりに叡福寺参拝。宝物館の平安前期の仏像など拝観して、聖徳太子廟参拝すると、ちょうど鐘楼では東日本大震災の追悼法要中。鐘声を聞きつつ、合掌礼拝。

東京国立博物館「仁和寺と御室はのみほとけ」、神奈川県立金沢文庫「運慶」鑑賞記

3月3日
東京国立博物館
 特別展 仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-
(1月16日~3月11日)

 仁和寺伽藍の修理事業の完了を記念して、仁和寺一山と御室派寺院の文化財を一堂に集める。冒頭の宇多法皇像と袈裟、御室相承記、檀像薬師如来坐像(北院薬師)、守覚法親王像、金剛寺本弘法大師像、三十帖冊子、聖教類の重厚な並びが、本展の神髄。本尊阿弥陀如来及び両脇侍像、道明寺十一面観音立像、葛井寺千手観音坐像の国宝彫像に嘆息し、神呪寺如意輪観音坐像に身震いする。奈良仏師の手になる金剛寺五智如来坐像と大日如来坐像は研究目線で堪能。図録あり(326ページ、2800円)。葛井寺像の制作時期については同一書内で揺らぎあり。難問。

神奈川県立金沢文庫
 特別展 運慶-鎌倉幕府と霊験伝説-
(1月13日~3月11日)

 仏師運慶の同時代における名声と伝説化に着目し、その実作例、推定作例、活動の痕跡を偲ばせる作例を集め、関東における運慶周辺仏師の作例とともに展観する。運慶銘の光明院大威徳明王像、推定作例の滝山寺梵天立像、光得寺大日如来坐像のほか、曹源寺十二神将立像は永福寺に安置された運慶の手になる十二神将像の写しと評価、永福寺出土の銅製装飾金具は滝山寺聖観音立像の装飾金具と並べて比較。光触寺阿弥陀三尊像は、仏師として運慶が登場する頬焼阿弥陀縁起絵巻とともに紹介。宗慶作保寧寺阿弥陀三尊像、実慶作修善寺大日如来坐像のほか、建久7年(1196)銘を有する個人蔵不動明王坐像及び両脇侍立像など、重要な鎌倉前期の彫像がずらり並んで壮観。図録あり(112ページ、1500円)。

京都文化博物館「保存と修理の文化史」、京博「豪商の蔵」、奈良博「薬師寺の名画」、東大寺ミュージアム「二月堂修二会」鑑賞記

2月17日
京都文化博物館
 保存と修理の文化史
(1月5日~3月4日)

 日本の歴史上において、折々の価値観において重要と認識された資料が、管理され、修理され、継承されてきた事例を丹念に拾い起こし、その心性(作善、権威の継承、組織の継承等)を浮かび上がらせるとともに、修理に携わった人々の存在をクローズアップする。誓願寺文書の箱や巻子外装に幾度も貼られた付箋、薬師寺吉祥天像の旧下地・表装類、きらびやかな絵画の背面に記された修理銘など、極めて地味な、しかし輝くように重要な、モノの伝来史を伝える情報に光を当てる貴重な機会。奈良国立博物館仏涅槃図は、画絹の左半分は南北朝時代、右半分は元禄16年(1703)の補筆とのことであるが、全く判別できず自信喪失(画絹の劣化度に違いがあるらしいことは分かる)。図録あり(64ページ、1300円)。

京都国立博物館
 特別企画 貝塚廣海家コレクション受贈記念 豪商の蔵-美しい暮らしの遺産-
(2月3日~3月18日)

 貝塚の豪商廣海家より寄贈された1000件の資料の中から、近世~近代の優品をずらり展観。漆器の状態がよく、管理が行き届いていたことを思わせる。大正期の膳具を数十個ずらりと並べる展示手法は大迫力。図録あり(164ページ、1500円)。
 彫刻の展示では、久しぶりに安祥寺五智如来像にご対面。旧館の展示とは異なり、横一列に並ぶのも新鮮な印象。いろいろな獅子・狛犬と神像もじっくり。

奈良国立博物館
 特別陳列 お水取り
 特別陳列 薬師寺の名画-板絵神像と長沢芦雪筆旧福寿院障壁画-
 特集展示 名もなき知識、発願者たち(写経編) 
(2月6日~3月14日)

 恒例「お水取り」を地域博物館としての役割により開催しつつ、収蔵品を活用した特別陳列・特集展示を重ねる。「薬師寺の名画」では南都絵所吐田座の尭儼の手になる板絵神像の修理(H11~13年)と模本作製(H20~25年)事業、そして長沢芦雪筆の旧福寿院障壁画の修復事業(H25~29年度)が完了した記念に全点を公開。板絵神像は法体・俗体・女体からなる22神。寛治年間(1087~94)の絵を永仁3年(1295)に写したもの。図録(64ページ、1000円)にはこれとよく似る新出個人蔵板絵神像(伝手向山八幡伝来)が紹介され、南都の絵師における古画学習と図様継承の実態がより詳細に判明。ずらり並ぶ初見の芦雪画はゆったり鑑賞できて贅沢。

東大寺ミュージアム
 特集展示 二月堂修二会
(2月2日~3月15日)

 3月1日からの修二会に合わせた特集展示。天文14年(1545)亮順筆の二月堂縁起上巻を大きく開く(下巻は奈良博お水取り展で展示中)。詞書は後奈良天皇と尊鎮法親王。当面の仕事に合わせて絵巻モード。図録なし。

高野山霊宝館「密教の美術-霊宝館収蔵宝物お蔵出し!」鑑賞記

1月20日、2週間ぶりの休みで、寒さも少しやわらいでいるので、ようやく高野山へ向かう。

高野山霊宝館
 密教の美術-霊宝館収蔵宝物お蔵出し!-
(12月9日~4月8日)

 これまでに展示機会の少なかった資料を中心に公開。初公開の能・狂言面5面は、中将とされる男面の面裏に「真徳院作」と刻銘があり、古沢厳島神社の慶長15年(1610)銘悪尉の作者と同人で貴重な発見。目の見開きの大きい表情など近世能面としての定型化が見られないのも共通。残りの笑尉・万媚・小飛出・見徳(赤鶴作銘あり)は室町時代の制作。万媚とされる若い女面は額が広くて古様。5面が重なって箱に収まっていたとの由。高野山周辺の神社などに伝来したか。ほか戦国~桃山期の在銘鉄製吊灯籠、高屋肖哲など近代期仏画など紹介。護摩灰を型に詰めて作った大師御手形弁才天十五童子像をきちんと江戸時代の資料として位置づけて紹介しているのも誠実。図録なし。

鑑賞後、胡麻豆腐と餡入生麩を買って、高野山御手印縁起の東端ラインをたどって山を降り、帰宅。

細見美術館「末法」、京都文化博物館「至宝をうつす」、京博「いぬづくし」「梵音具」鑑賞記

12月20日
細見美術館
 末法/Apocalypse-失われた夢石庵コレクションを求めて-
(10月17日~12月24日)

 宗教美術を中心とした資料群をフィクションによって結びつけて集約し、展示自体を一つの物語として提示する。伝来場所より切り離された美術資料を個人が「収集」し「所有」する行為を前景化させつつ作品との対峙を促すもので、それゆえ伝来情報も資料の価値評価もまた各自が対峙し判断するべき要素となる。公立館では不可能な、個人コレクションに基づく私立美術館ならではの挑戦的な展示。近時詳細が報告された道隆寺旧蔵の天部立像(清水眞澄「香川・道隆寺旧蔵木造天部立像と、いわゆる「獅噛」について」『国華』1454、2016)、像内に記された天文12年の修理銘により興福寺子院伝来と分かる弥勒菩薩立像、伝来不詳ながら格調高い随身坐像、集約された「伝」金峯山出土の鏡像群をじっくり鑑賞。図録あり(208ページ、3000円)。

京都文化博物館
 便利堂130周年記念 至宝をうつす-文化財写真とコロタイプ複製のあゆみ-
(12月16日~1月28日)

 絵画・古文書の精細な文化財複製の制作に携わる便利堂によって継承されてきたコロタイプの技術と印刷されたさまざまな「作品」を提示。法隆寺金堂壁画はその写真撮影の様子を示しつつ、原寸大のコロタイプ印刷(モノクロ)12幅が一室にずらりと懸けられ壮観。蒙古襲来絵詞や地獄草紙の複製など、その再現度の高さに改めて気づく。図録あり(52ページ、972円)。

京都国立博物館
 新春特集展示 いぬづくし-干支を愛でる-
(12月19日~1月21日)

 平成30年の干支にちなんで犬の表された作品をチョイス。京丹後市・竹野神社の等楽寺縁起絵巻、栗棘庵石清水曼荼羅のほか、館蔵の獅子・狛犬、仏涅槃図など。リーフレットあり(A3二つ折り、無料》。

 名品ギャラリー 梵音具
(12月19日~1月28日)

 金工室の特集。最古の紀年銘がある長承3年(1134)銘鉦鼓、称名寺剱阿の室生寺への寄進銘がある梵字を墨書した銅鑼など、鉦鼓・鰐口・錫杖頭・磬が並ぶ。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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