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國學院大學博物館「國學院大學図書館所蔵那智参詣曼荼羅巻子本の仕立てを探る」「列島の祈り」鑑賞記

12月13日、社会教育実践研究センターの平成30年度博物館学芸員専門講座に登壇のため上京。途中渋谷へ立ち寄り。

國學院大學博物館
 特集展示 國學院大學図書館所蔵那智参詣曼荼羅巻子本の仕立てを探る-東京文化財研究所による光科学的調査の成果報告-
(12月5日~1月14日)

 那智参詣曼荼羅巻子本の東文研による光科学的調査の成果を紹介(同大文学部歴史地理学教室主催)。掛幅装から巻子への変更が、実に細かな調整によって切り貼りしていることが明らかにされており、驚きの連続。切り抜いた画面と画面の貼り合わせ部も精密で、展示されている原本を目を凝らして見ても、ただちに分からない。使用形態の変更時期は、木曳き部分の削除、本願の門・塀消去を重視して参詣曼荼羅本来の機能が変容した段階での改変と捉える。滝の上部を使用しなかったことも大胆と思う。解説シートあり。同調査の報告書として『國學院大學図書館所蔵那智参詣曼荼羅巻子本光学的調査報告書』(2018年2月発行)あり。またこの巻子本の画面の復元については吉田敏広「那智参詣曼荼羅」(大学院六十周年記念國學院大學影印叢書編集委員会編『起請文と那智参詣曼荼羅』、朝倉書店、2017年3月)で成果が紹介される。

 企画展 列島の祈り-祈年祭・新嘗祭・大嘗祭-
(11月3日~1月14日)

 稲作に関わる国家祭祀である祈年祭・新嘗祭・大嘗祭の歴史的経緯を紹介。令義解(重要文化財、同大図書館蔵)、御田植巫女舞図屏風(館蔵)など。特集展示「記念の法会と神々」を同時開催。展示内容とは一致しないものの、会期途中から『資料で見る大嘗祭』(19ページ、300円)を頒布。金沢文庫・神奈川歴博・国文学研究資料館・名古屋大学大学院人文学研究科付属人類文化遺産テクスト学研究センターとの連携事業「列島の祈り」に基づく展示。

国文学研究資料館 「祈りと救いの中世」、東京国立博物館「8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」」鑑賞記

12月6日、出張の用務の前後に展示鑑賞。

国文学研究資料館
 特別展示 祈りと救いの中世
(10月15日~12月15日)

 表白・願文・縁起・唱導書・講式等と仏画類から、中世における仏事の場で人々を救済に誘った唱導(導師・講師らが行った説法)の魅力とその諸文芸への影響を紹介。最明寺往生要集(重文)、国立歴史民俗博物館江都督納言願文集(重文)・十二巻本表白集、称名寺転法輪鈔(国宝)・言泉集(国宝)、真福寺維摩会記・覚任表白集などなど、ずらり重要資料を集める。仏画では圓福寺観心十界図、金剛院地蔵十王図(清代)と東京都下の作例を選んでいて地域性にも配慮。経典では治承4年(1180)書写の諸家分蔵平基親願経のうち3巻を展示。見返し絵の菩薩と胡蝶の美しさ。図録あり(64ページ、無料)。凸版印刷の開発した高精細画像を閲覧できるモニターも設置(操作はタブレット)。金沢文庫・神奈川歴博・國學院大學博物館・名古屋大学大学院人文学研究科付属人類文化遺産テクスト学研究センターとの連携事業「列島の祈り」に基づく展示。

東京国立博物館
 8Kで文化財 国宝「聖徳太子絵伝」
(11月27日~12月25日)

 聖徳太子絵伝の高精細画像を自由に大画面で見られるモニター(操作はタブレット)と、原寸大パネル10面を設置。再現パネルと高精細画像の往還で、全体と細部とを鑑賞する。印刷の限界をモニターで補う展示手法。研究資料を鑑賞用資料に汎用化する一つの方向性。国立文化財機構文化財活用センターの企画、NHKエデュケーショナルの製作。

 特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
(10月2日~12月9日)

 再訪。六観音像の光背外した展示空間を確認しておく。図録あり(260ページ、2300円)。

上原美術館「伊豆の平安仏」、河津平安の仏像展示館、願成就院、かんなみほとけの里美術館鑑賞記

12月2日、朝4時に和歌山を飛び出して伊豆半島へ。

上原美術館
 特別展 伊豆の平安仏-半島にひらいた仏教文化-
(9月22日~12月9日)

 リニューアル1周年を記念して、同館が継続して調査を行ってきた伊豆半島の仏像のうち、平安時代に遡る魅力的な作例を集める。伊豆市金龍院千手観音立像は眦を切り上げ顎の張った雄偉な風貌、胴を強く絞った体型など平安時代前期の余風を強く残す。同寺の不動明王坐像も古様を示す10世紀彫像。下田市法雲寺如意輪観音坐像は、多臂像ながら極力一木から木取りし、風貌に沈鬱さをやや残した10世紀の作例。河津町地福院吉祥天立像も、像の大略を一木より彫出した10世紀に遡る作例であるが、薬師堂本尊として安置されてきたことに驚き。吉祥薬師の稀有な一例のよう。河津平安の仏像展示館(南禅寺)からは平安時代前期の不動明王坐像、梵天立像・帝釈天立像、そして仏手など仏像断片がお出まし。これら仏像を通じて伊豆半島の古代における宗教環境が濃密に立ち上がるとともに、各像の修理痕跡や伝来情報から幾層にも重ねられた地域の信仰史が浮かび上がる。同館の担ってきた伊豆地域仏教美術研究の蓄積と信頼によってなし得た優れた展示。図録あり(48ページ、500円)。

河津平安の仏像展示館(南禅寺)
 河津町南禅寺伝来の仏像の展示施設として2013年オープン。本尊薬師如来坐像は重量感に溢れる9世紀彫像。迫力ある風貌の二天立像など9~10世紀の彫像が林立して圧倒される。10世紀の男神立像、女神立像の大きさにも驚く。本堂も開けてくださり虚空蔵菩薩坐像、地蔵菩薩立像拝観。係の方からは榧製のお守りや銀杏まで頂戴する。地域の方々が主体となって施設を作り、また運営されているとのことで、地域に伝来してきた魅力的な仏像を大切に親しみをもって継承する素晴らしい活動事例。

願成就院
 20年ぶりぐらいに訪問。運慶作の文治2年(1186)造像の阿弥陀如来坐像、不動明王二童子立像、毘沙門天立像をご拝観。宝物館では像内納入の銘札と、地蔵菩薩坐像など拝観。本堂本尊もシルエットを遠くに眺めて拝む。

かんなみほとけの里美術館
 函南町桑原地区の桑原薬師堂伝来仏像群の安置施設として2012年オープン。とても洗練された展示空間に、平安時代後期の薬師如来坐像と鎌倉時代の十二神将像、実慶作の阿弥陀三尊像などが林立。仏像群は桑原区から町へ譲渡の上、施設を設置して公開という経緯で、地域の方々の理解と尽力、そして行政との協力によって地域のシンボルたる仏像を継承する注目すべき活動事例。

神奈川県立金沢文庫「顕れた神々」、神奈川県立歴史博物館「鎌倉ゆかりの芸能と儀礼」鑑賞記

11月22日、代休取って東京へ。午前中会議のあと、お役ご免で横浜へ。風邪気味でうとうと居眠りしてたら金沢文庫で降りそこない、金沢八景駅から瀬戸神社と龍華寺を参拝しつつ金沢文庫へ。

神奈川県立金沢文庫
 特別展 顕れた神々-中世の霊場と唱導-
(11月16日~1月14日)

 神々が立ち顕れる場とその姿を、神像・仏画・唱導資料を組み合わせて提示する。称名寺聖教の唱導資料を基層にしつつ、さまざまな個人コレクションから資料を選定し、初公開を含む珍しい資料が集約。中でも伝日光山伝来の銅製男神坐像は、笏を執って右足を踏み下げる束帯男神像で、両袖裏に嘉元3年(1305)銘を有する。輪王寺の男神坐像・女神半跏像と三神像を構成する1体であり大発見。八幡神華鬘(南北朝時代)二面には、薬師寺休ヶ岡八幡宮の国宝八幡三神像のうち中尊像と比売神像の姿を写し、自然景観の中に描く。神像の臨写がいかになされたのかを考える上で注目される資料。ほか、大威徳明王懸仏(鎌倉時代)は新宮・阿須賀神社伝来資料と伝えられ、作風からもほぼ確実。個人コレクションが神道美術の重要な鉱脈であることを痛感するとともに、それらを積極果敢に集め公開することで情報の共有化を図った意欲的な内容。図録あり(112ページ、1800円)。
 なお、金沢文庫・神奈川歴博・国文学研究資料館・國學院大學博物館と、名古屋大学大学院人文学研究科付属人類文化遺産テクスト学研究センターの連携事業で、「列島の祈り」をテーマにして各館でそれぞれ展示が開催中。今までになかった大規模な学術面での連携による新たな展示のあり方。

神奈川県立歴史博物館
 特別展 鎌倉ゆかりの芸能と儀礼
(10月27日~12月9日)

 鎌倉とその周辺で継承され、あるいは記録された芸能に着目して資料を集約する。特に仮面を使用する祭礼を中心に紹介。仮面をかぶる異形のものはいわば神仏であり、それらが顕れる儀礼の場を、古文書・絵画資料・仮面で展示室内に立ち上げる。御霊神社面掛行列の行道面10面は明和5年(1768)、乾漆製。独特の作風であるが、共通する形状の八雲神社行道面7面(天保10年銘)も合わせて並べ(御霊神社面の写しか)、古面からの作風の継承を示唆する。舞楽面からの影響のある鼻長、ゆがみのある祖父面との共通性をもつ火吹男など、今後の中世仮面の系譜の中に位置づける作業は、紀州の面掛行列研究にとっても有益。瀬戸神社の獅子頭(鎌倉時代)、阿弥陀寺の承安4年(1174)銘菩薩面をありがたくじっくり鑑賞。ほか、八菅神社の役行者像(室町時代)など、八菅山修験に関わる資料も集約していて有益。図録あり(176ページ、1500円)。

大賀島寺本尊(千手観音立像)開扉供養大法要参拝記

11月18日
備前長船刀剣博物館
 特別展 こんぴらさんの名刀展
(9月7日~11月25日)

 香川県・金刀比羅宮に所蔵される中世~近代の刀剣を、備前刀を中心に紹介。剣 銘則真(南北朝)、太刀 銘備州長船住重真(南北朝)、刀 銘備前国住長船与三左衛門尉祐定作(大永5年)など。図録なし。

大賀島寺
 大雄山大賀島寺ご本尊(千手観音立像)開扉供養大法要
(11月17日・11月18日)

 秘仏本尊の33年に一度のご開帳。像高124.8㎝、動きのある体軀と脇手の一部、台座蓮肉部を含めてカヤとみられる一木より彫出した、厳しい風貌の9世紀彫像で、本来素地であったもよう。太い脇手、特殊な宝鉢手など唐本図像の直接的な影響も見られる重要作例。2002年に武田和昭氏が初めて確認し、調査成果は翌年浅井和春氏によって「岡山・大賀島寺の本尊千手観音立像とその周辺」(『佛教藝術』267、2003)として報告され、2011年重文指定。今般のご開帳に備え修理も行われた由。地域の方々が集まる祝祭の場に混じらせてもらいありがたく拝観の後、八幡縁起の遺跡地、牛窓の牛窓神社と五香宮を巡り、本蓮寺、弘法寺も拝観。

茨木市立文化財資料館「総持寺」、高槻市立今城塚古代歴史館・高槻市立しろあと歴史館 「藤原鎌足と阿武山古墳」鑑賞記

11月10日、北摂の地域博物館を巡る。

茨木市立文化財資料館
 テーマ展 総持寺
(10月6日~12月3日)

 市制施行70周年と西国三十三所草創1300年の記念展。総持寺の仁和2年(886)の創建期から近世の復興まで歴史を、考古・歴史・美術・民俗・建築の総合的な視点で紹介。西国霊場の札所寺院(第二十二番)にふさわしく近世の縁起絵巻が複数伝わる。展示は従来から知られていた海北友雪筆の一巻と、近年新たに見いだされた享保12年(1727)奥書を持つ豪華な一巻。平安時代後期の等身の二天立像は作風のやや異なる一対。仏画は画中の上部に金泥経文を配して八臂弁才天立像と童子を配した弁才天十五童子像が古様で、中世絵巻にも通ずる山水表現。鎌倉~南北朝時代か。地域の博物館による地域の拠点寺院の丁寧な紹介で、施設と専門職員の役割をしっかり果たす内容。図録あり(30ページ、300円)。

高槻市立今城塚古代歴史館・高槻市立しろあと歴史館
 合同特別展 藤原鎌足と阿武山古墳
(10月6日~12月2日)

 高槻市内、阿武山古墳の被葬者である藤原鎌足をクローズアップして、二つの博物館で紹介。今城塚会場は「第1部 藤原鎌足の足跡をたどる」。想像以上の飛鳥時代の宮都・寺院の展開を総括する内容で、川原寺、山田寺、穴太廃寺、崇福寺ほかの塑像・塼仏が多数並んで見応え十分。しろあと歴史館会場は「第2部 藤原鎌足の姿・三島の大織冠信仰」。談山神社と奈良国立博物館の藤原鎌足像や、地域に残る地福寺藤原鎌足像、粉本類など、大織冠像がずらりと並ぶ稀有な機会。眼の描き方に複数のパターンがあるが、瞋怒相の粉本を知ることができ収穫。鎌足隠居地であり埋葬地である三島地域の大織冠信仰の痕跡も緻密に紹介。6世紀の古墳(将軍塚古墳)である大織冠神社(大織冠古廟岩屋)を鎌足墓として、江戸時代に九条家が祭祀を行っていたことも興味深い歴史、図録あり(104ページ、500円)。2館共通。鑑賞後、高槻市西安威の大織冠神社に参拝。どんな山の中かと思ったら、追手門学院と住宅地の開発で頂部以外は削平。

島根県立古代出雲歴史博物館「神々が集う-神在月と島根の神像彫刻-」、上淀廃寺跡・上淀白鳳の丘展示館、鳥取県立博物館「鳥取画壇の祖 土方稲嶺-明月来タリテ相照ラス-」鑑賞記

11月5日、前日に思い立ち、月曜日に開館している山陰地方の博物館・美術館を巡る往復850キロの日帰り旅。

島根県立古代出雲歴史博物館
 企画展 神々が集う-神在月と島根の神像彫刻-
(10月26日~11月26日)

 陰暦10月を神在月と呼ぶ出雲地方の習俗に合わせて、県内に伝来する200軀を超える神像を一所に集める。第一部は多数の典籍から神在月伝承の形成史を紹介、第二部が神像展。成相寺の23軀の神像群(県指定)はもと鎮守熊野権現(現在は廃絶)安置の諸尊とのことで、熊野信仰との関係性を念頭に置きつつ鑑賞(簡単に答えは出ないけれど)。騎馬神像は古代風の鎧を纏った特殊な姿。圧巻は出雲文化伝承館所蔵、日御先神社宮司小野家旧蔵の171軀の神像群。一部は伝承館で常に展示されているが、その全貌は今回が初公開。展示室内に所狭しと林立するその群像に圧倒される。平安時代から江戸時代にかけて作られた、大きさ、尊格、表現の巧拙、保存状態もさまざまな神像群で、一所安置のものではあり得ない。推測であるが、神仏分離時の神像撤去、あるいは神社合祀による神体の整理に伴って、出雲地方の一定の範囲の神像が集約されたものと見られる。群として神像の文化史をさまざまに物語るもので、この量にこそ重要な意義があるといえる。神像研究の糸口は、まだまだ膨大に残されている。図録は展示の第2部のみ。『島根の神像彫刻』(96ページ、1500円)。必携。

上淀白鳳の丘展示館
 ミニ企画展 上淀廃寺の瓦
(10月13日~11月25日)

 鳥取県淀江町の国史跡上淀廃寺跡より出土した資料及び、金堂の堂内空間を原寸復元したガイダンス施設。同寺の建立は7世紀末(~8世紀初)で、出土塑像片等から本尊像は8世紀半ば~後半に交代した模様。大迫力の丈六三尊像(復元監修山崎隆之氏、松田誠一郎氏)は、未彩色の塑像風で仕上げて効果的。出土した壁画片や塑像片の一部も常設展示され充実。企画展では上淀廃寺跡より表採、発掘された瓦と、上淀廃寺式軒丸瓦(細長い花弁に稜線と隆起がある特殊なもの)の広い分布を紹介。解説資料あり(A4・8ページ)。中原斉『よみがえる金堂壁画 上淀廃寺』(新泉社、1600円)も購入。鑑賞後、近隣の上淀廃寺跡(国史跡)を見学。発掘時の状況を再現するタイプの史跡整備。三塔並立の不思議(ただし北塔は心礎のみで基壇痕跡なし)。

鳥取県立博物館
 鳥取画壇の祖 土方稲嶺-明月来タリテ相照ラス-
(10月6日~11月11日)

 南蘋派や円山派に学んで京や江戸で活躍し、晩年には鳥取藩絵師となった土方稲嶺の画業を紹介。金箔地に濃彩で描く猛虎図屏風、銀箔地に墨のみで岩と波濤を描く荒磯図屏風、絹本に墨画で描いた葡萄栗鼠図等々、さまざまな技法、画風を駆使した幅の広い作品を集約する。お目当ては、平成28年度に和歌山県の興国寺より鳥取県立博物館に譲られ、本年8月には鳥取県保護文化財にも指定された旧興国寺書院壁画、22枚33面。複雑な気持ちではあるが、修理、指定と万全の体制で受け入れられていて、紀州において経てきた歴史も含めて、鳥取の宝として引き継がれることだろう。図録あり(232ページ、1500円)。稲嶺の画業を丁寧に追った概説(執筆山下真由美)とともに、印章・落款と売立目録収載品までを掲載した決定版。

堺市博物館「土佐光吉」、歴史館いずみさの「祈りと願いと信仰」鑑賞記

11月4日。午前で仕事を上がり、堺市博の特別展最終日に滑り込む。

堺市博物館
 特別展 土佐光吉-戦国の世を生きたやまと絵師-
(10月6日~11月4日)

 堺を拠点に活動した戦国時代の土佐派絵師、光吉にクローズアップ。京博源氏物語図屏風、渡辺美術館曽我物語図屏風などの大画面作品から、和泉市久保惣記念美術館源氏物語手鑑(重文)、京博源氏物語図色紙帖(重文)などの小画面作品まで、光吉作品を集める。また雲龍院後円融天皇像(土佐光信筆・重文)、歴博足利義輝像、妙國寺三好実休像、あるいは京都市芸大土佐派絵画資料中の肖像粉本類など多数並べて土佐派の肖像画制作を分析するとともに、光吉工房作品を作風から跡付けて配列した正統派美術史展示。図録あり(88ページ、1970円)。末柄豊・泉万里・安井雅恵・河田昌之・宇野千代子の短い論考5篇収録。

歴史館いずみさの
 特別展 祈りと願いと信仰と
(10月20日~12月23日)

 泉佐野市域における信仰の諸相を、主に近世~近代の資料を活用して紹介。犬鳴山七宝瀧寺の尊勝曼荼羅(南北朝時代)、葛城峯中之宿次第深秘記など同寺の修験関係資料、蟻通神社三十六歌仙図絵馬や正徳2年(1712)の奉納百首和歌など同社の和歌関連資料、市内のだんじりを集約した写真パネルなど。図録なし。平成27年発行の『泉佐野の文化財』(68ページ、1000円)買っておく。

奈良国立博物館「正倉院展」、興福寺国宝館 「邂逅」「再会」、元興寺法輪館「大元興寺展」、大和文華館「建国1100年 高麗」鑑賞記

10月30日、風邪。展覧会見学のために代休取ってたので、重い体引きずって奈良へ。

奈良国立博物館
 第70回 正倉院展
(10月27日~11月12日)

 恒例の正倉院展は70回目。さすが平日でも善男善女大参集。絢爛豪華な平螺鈿背八角鏡、玳瑁螺鈿八角箱、精緻で華麗な犀角如意、沈香木画箱、繡線鞋や錦紫綾紅臈纈絁間縫裳などの染織品、新羅琴、胴匙などなど見どころ多い。麻布に墨で描かれた山水図、光明皇后発願一切経の経名を書き上げた続々修正倉院古文書第十六帙第八巻、押出仏の形である仏像形をじっくり鑑賞。図録あり(152ページ、1200円)。本館の、奈良時代木心乾漆造の新資料である如法寺毘沙門天立像には解説板が設置。

興福寺国宝館
 興福寺中金堂再建落慶記念特別展示 邂逅-「志度寺縁起絵」-
(10月1日~10月31日)
 興福寺中金堂再建落慶記念特別展示 再会-興福寺の梵天・帝釈天-
(10月1日~11月15日)

 中金堂の落慶記念展として、国宝館の一角で特別展示。「邂逅」は藤原不比等と海女の婚姻と海中の宝珠を得る説話を描く志度寺縁起絵(重文)を展示。海女が命と引き換えに得た宝珠は中金堂本尊釈迦如来坐像の眉間に入れたと語る。この説話の形式を転用する道成寺創建縁起理解の上でしっかり鑑賞。「再会」は明治時代に寺を離れて現在は根津美術館に所蔵される帝釈天立像を、本来一組となる梵天立像と並べて展示。昨年1月~3月に根津美術館で先行お披露目ののちの機会。両展内容を解説する資料(B4・1枚両面)あり。興福寺の文化(財)の広がりや影響、関係性を可視化する好企画であり、今後も期待。

元興寺法輪館
 元興寺創建千三百年記念 大元興寺展
(9月13日~11月11日)

 法興寺(飛鳥寺)が平城京に移され元興寺として建立されてから1300年の記念展。考古資料・文献資料・美術資料から、創建から現代に至る通史を、奈良町の形成と関わりにも目配りしながら紹介。徳融寺菩薩立像残欠は等身大木心乾漆菩薩像の断片で厚く盛られた乾漆の状況がよく分かるよい資料。真言律宗元興寺の厨子入智光曼荼羅(重文)は南都絵所松南院座の大輔法橋清賢作の可能性が高いもの。なお華厳宗元興寺蔵の薬師如来立像・十一面観音立像などを「里帰り」した「大元興寺諸仏展」は9月27日で終了済み。図録あり(56ページ、1000円)。

大和文華館
 特別展 建国1100年 高麗-金属工芸の輝きと信仰-
(10月6日~11月11日)

 高麗時代の金属工芸に着目して、国内の諸機関より在銘品を多数含む重要資料を集約する。奈良博銀製層塔形舎利容器及び金製内容品、東博銀製鍍金観音菩薩・毘沙門天蔵小仏龕、長谷寺銅製銀象嵌梵字唐草文香炉、照蓮寺と園城寺の梵鐘(重文)、東博金鼓、愛知県美鉄地金銀象嵌鏡架、大阪歴博龍樹殿閣文鏡、高麗美術館銅製匙などなど。館蔵品の高麗経や高麗仏画もうまく活用。同館の平成28年度特別展「呉越国-西湖に育まれた文化の精粋-」からの連続性を意識したテーマで、銭弘俶塔ずらりの余韻がふと蘇る。図録あり(152ページ、2484円)

鎌倉国宝館「鎌倉国宝館1937-1945」、神奈川県立金沢文庫「西湖憧憬」、東京国立博物館「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」鑑賞記

10月26日、足を棒にして展覧会巡り。

鎌倉国宝館
 開館 90 周年記念 鎌倉国宝館 1937-1945
(10月20日~12月2日)

 日中戦争から太平洋戦争時の国宝館の状況を、戦中の展示資料や疎開資料、公文書、行政文書から伝える。日中戦争中の昭和14年に開催された「元寇展」出陳品として、館蔵の元寇展覧会目録とともに明王院の異国降伏御祈祷記、円覚寺の巻頭下知状(重文)、建長寺蘭渓道隆像(国宝)、極楽寺の釈迦如来坐像・十大弟子立像(重文)など紹介。時局に迎合して戦意高揚の一翼を博物館が担った過去をしっかり胸に刻む。また太平洋戦争時の昭和19年に郊外へ疎開された資料として光明寺當麻曼荼羅縁起絵巻(国宝)、當麻曼荼羅図(重文)、十八羅漢及び道宣律師像(重文)など。戦況がまだ悪化する前の昭和17年に開催された、東京帝室博物館・奈良帝室博物館・恩賜京都博物館・靖国神社遊就館・大阪市立美術館と鎌倉国宝館の6館と文部省の協議会に関する「国宝関係博物館事務協議会」の書類中では、出席した学芸員の復命書で、本土攻撃に備えた対策として国宝館では遠隔地出陳品の返却、疎開の計画、防空壕の設置、八幡宮境内池水の防火利用などを既に計画していることが知られる。先の疎開もこの方針に基づくもの。ほか、庶務綴や庶務日誌も活用して戦時下の動向を伝える。鎌倉国宝館90年の歴史とは、まさしくこれら行政文書によって活写される近現代史であるといえる。図録あり(104ページ、800円)。所収の金子智哉「総論~戦時下の鎌倉国宝館~」は18ページに及ぶ大論文。

神奈川県立金沢文庫
 特別展 西湖憧憬-西湖梅をめぐる禅僧の交流と15世紀の東国文化-
(9月22日~11月11日)

 中世、金沢の内海の風光明媚な景勝は中国・杭州の西湖と重ねられた。北条実時は西湖の白堤・蘇堤に倣って瀬戸堤を作り、称名寺境内には金沢北条氏が西湖から取り寄せたという西湖梅があった。金沢の地に移植された西湖イメージのもと紡がれた禅僧の交流の痕跡を書画で示すとともに、西湖を描いた絵画作品を集約する機会とする。禅僧の交流は中国僧による景勝を愛でた詩を列記する応長元年(1311)東漸寺詩板、建長寺僧玉隠英璵(1432~1524)と万里集九(1428~1507)が着賛した梅渓図(静嘉堂文庫美術館)、建長寺の書記である賢江祥啓筆の瀟湘八景図画帖(白鶴美術館)などから、西湖図は伝雪舟等楊筆西湖図(静嘉堂文庫美術館・前期)、如寄筆西湖図(天寧寺・後期)、欧斎筆西湖図屏風(京都国立博物館・10/23~11/11)、狩野元信筆西湖図屏風(出光美術館・前期)、雲谷等的筆西湖図屏風(瑞泉寺・後期)などなどを多数集める貴重な機会。図録あり(120ページ、2000円)。板倉聖哲・梅沢恵・畑靖紀・須田牧子・髙岸輝の五氏による論考を収載。充実。

東京国立博物館
 特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ
(10月2日~12月9日)

開創800年を間近に控えた大報恩寺の数々の鎌倉時代彫像の魅力を紹介する。タイトルには入っていなくとも、本展の見どころはなんといっても秘仏本尊、行快作の釈迦如来坐像(重文)の出開帳。その尊容に間近にまみえることのできる希有な機会に、保存状態良好な台座・光背も含めてじっくりと鑑賞。この像とともに安置されていたと想定される快慶晩年の作である十大弟子立像(重文)、貞応3年(1224)肥後定慶作の六観音立像(重文)も含め、それぞれ露出でゆったりと展示して四囲から鑑賞できるようにし(六観音は後期から全て光背を撤去する珍しい試み)、彫刻資料の魅力を存分に伝える国立館らしい鑑賞環境作り。ほか、銅造誕生釈迦仏立像(重文)の原型製作者は行快、地蔵菩薩立像(未指定)は肥後定慶作の可能性が示され、承久2年(1220)の創建から間を置かずに次々造像された慶派仏師の仏像が林立する空間を堪能。昨年同館で開催された運慶展からの継続性があり、好感。図録あり(260ページ、2300円)。図版多数で必携。所収論文の皿井舞「大報恩寺の創建と慶派仏師の競演」始め、コラムも充実。本館彫刻室も連動して鎌倉時代彫像と檀像を展示。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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