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城陽市歴史民俗資料館「神のすがた・仏のかたち」。京都国立博物館「畠山記念館の名品」鑑賞記

12月4日、休日ながら京都で会議。前後に久々の展覧会鑑賞。

城陽市歴史民俗資料館
 特別展 神のすがた・仏のかたち-城陽・井手を中心に-
(10月30日~12月19日)

 帝塚山大学附属博物館と同館による城陽市・井手町の寺社文化財調査の成果を紹介。平川廃寺・神雄寺跡出土の塑像断片や久世廃寺出土誕生釈迦仏など白鳳~奈良時代の作例から平安時代後期の旦椋神社大将軍神像、高神社の鎌倉時代の獅子頭、水主神社の獅子・狛犬(台座裏面に嘉禎4年[1238]の墨書銘あり)など、幅広く資料を集める。西福寺聖観音立像は高く太い髻としなやかな体躯の10世紀彫像、同寺不動明王坐像はがっちりと組んだ膝に厚みのある古様を伝える11世紀彫像。仏像・神像から地域の信仰史を浮き上がらせる大切な取り組み。図録あり(17ページ、390円)。

京都国立博物館
 特別展 畠山記念館の名品-能楽から茶の湯、そして琳派-
(10月9日~12月5日)

 終了直前に滑り込み。現在施設改築中の畠山記念館が所蔵する、近代数寄者畠山即翁蒐集の名品を一堂に展示。柿の蔕茶碗銘毘沙門、伊賀花入銘からたちや伝牧谿筆煙寺晩鐘図など茶道具や茶掛けの名品を中心に、伝日光作の延命冠者(室町時代)、万媚(桃山~江戸)や加賀前田家伝来の装束など能の資料も充実。近世の大名家から近代の実業家へと遷移した茶道・能楽愛好と名品所持愛玩の近代史といったおもむき。図録あり(408ページ、2800円)。

東京国立博物館「最澄と天台宗のすべて」「浅草寺のみほとけ」、東京長浜観音堂「聖観音立像」鑑賞記

11月19日
東京国立博物館
 特別展 最澄と天台宗のすべて
(10月12日~11月21日)

 東京・九州・京都の国立博物館連携による伝教大師1200年大遠忌記念展の第一会場。最澄関係資料はもとより、天台教学の継承と展開、そしてその表象としての美術作品を多数集めて展観。祖師像では観音寺伝教大師坐像、園城寺智証大師坐像(御骨大師)、輪王寺慈眼大師坐像、そしてなんといっても像高2mの深大寺慈恵大師坐像の大迫力。拝するものを畏怖させる迫真的な風貌は、唇がわずかに開かれ像内に貫通していて、微音の真言が聞こえてくるかのよう。法界寺薬師如来立像、伊崎寺不動明王坐像、願興寺薬師如来坐像、法用寺金剛力士立像、明王寺聖観音立像、寛永寺薬師如来及び両脇侍立像など、全国天台宗寺院の仏像をありがたく鑑賞。図録あり(416ページ、3000円)。3館共通で他会場の出陳資料も把握。九博が来年2月8日~3月21日、京博が4月12日~5月22日。

 特集 浅草寺のみほとけ
(9月28日~12月19日)

 天台展と連動して、円仁中興と伝えられる天台宗寺院浅草寺の仏像を紹介。唐~五代十国時代の僧形坐像は、瞳に練物を嵌入した目には笑みを浮かべ、頬にえくぼもあらわした青年僧。昭和13年の売立目録に載り、昭和53年に寺に長野幸彦氏から奉納されたものと判明。鎌倉時代の大仏殿様四天王立像も同氏奉納品。室町時代の阿弥陀如来坐像は、その個性的な風貌の特徴などから、室町時代の奈良仏師、椿井次郎作と推定して公開。同意。リーフレットあり(無料、8ページ)。

東京長浜観音堂
 聖観音立像(長浜市余呉町川並 地蔵堂蔵)
(11月17日~1月10日)

 東京駅近くのビル4階の小さな1室に、来年2月27日までの期間で設営されている東京長浜観音堂の第3期展示。川並集落地蔵堂より出開張の観音像は、厚みが薄く、穏やかで円満な平安時代後期の典型的な作風で、天冠台から地髪部へと彫り窪める表現など古像の影響を受けたところも見うけられる。比叡山文化圏の薫風を林立するビル群と雑踏の中に漂わせる、施設内外のギャップが心地よい別天地のような空間作りは、前施設(びわ湖長浜KANNON HOUSE)以来の長浜方式。資料解説カードあり。

道成寺「万寿丸生誕七百年祭 秘仏千手観音中開帳」拝観記

道成寺
 万寿丸生誕七百年祭 秘仏千手観音中開帳
(9月20日~11月28日)

 道成寺本堂の背面側に現本尊像と背中合わせに安置される秘仏北向千手の特別開張。昭和62年(1987)、本堂修理に伴い本像を移動する際、像内に朽損した奈良時代の千手観音像部材が多数納入されていることがわかり、その後復元された(現本尊像)。大破した創建期千手観音立像を納入する鞘仏として造像された像高341㎝の巨像で、本堂建立(正平12年[1357]ごろ建立開始、天授3年[1377]に「遷本堂」)と同時期の南北朝時代、14世紀半ば頃の作例。ありがたくご拝観。京都妙満寺から釣鐘(正平14年[1359]の旧鐘銘を写す)が里帰り中(公開期間は11月18日まで)。
 拝観後、御坊市民文化会館で「一陽来復祈願能 IN 和歌山御坊」鑑賞。翁と道成寺という豪華な組み合わせ。翁は分林道治、三番三が茂山逸平、頭取大倉源次郎、道成寺シテ片山九郎右衛門、ワキ宝生欣哉、アイ茂山七五三・茂山宗彦。

高野山霊宝館「高野山の名宝  4期」(2回目)鑑賞記

11月9日
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(4期:10月5日~11月28日)

 開館100周年記念展第4期を2回目の鑑賞。応徳涅槃、八大童子、諸尊仏龕を見回りながら名残を惜しむ。先日の森川杜園展会場で明治9年奈良博覧会に出陳されていたことに気づいた竜光院厨子入倶利伽羅竜剣も改めてじっくり。

大津市歴史博物館「西教寺-大津の天台真盛宗の至宝-」鑑賞記

11月6日
大津市歴史博物館
 企画展 西教寺-大津の天台真盛宗の至宝-
(10月9日~11月23日)

 天台真盛宗総本山、法勝寺の法灯をも引き継ぐ古刹西教寺について、同館による山内文化財調査の成果を反映して、その歴史と信仰の重層性を紹介。中興真盛上人関連資料や法勝寺聖教、比叡山西塔伝来の正教蔵聖教など天台宗の重宝の公開を基軸に、鎌倉初期の優品である法勝寺伝来の薬師如来坐像、平安時代後期の本尊丈六阿弥陀如来坐像の化仏、10世紀の観音像や山内子院の本尊像、画面の縦が2メートルを超える鎌倉時代の阿弥陀如来像や、頭巾を被った行者が座る特殊な熊野本地仏曼荼羅など仏像・仏画も多数展観。天正9年(1581)造像の真盛上人坐像は、像内に「面ウチ出目次郎左衛門尉」(出目満照か)の造立銘を有し、面打が肖像を造像したことのわかる珍しい作例。図録あり(144ページ、2000円)。常設展示室内のミニ企画展「真盛上人の六字名号と絵伝記」(10月12日~11月28日)も特別展の一部として開催。天台宗の重要拠点の悉皆調査の成果をただちに共有する内容で、学術的な進展とともに、地域文化に厚みと広がりをもたらす博物館のかけがえのなさを体現するかのような展示。

元興寺「ならまちの地蔵霊場 十輪院の歴史と信仰」、奈良県立美術館「森川杜園展」、東大寺ミュージアム「華厳五十五所絵巻」鑑賞記

11月4日
元興寺法輪館
 特別展 ならまちの地蔵霊場 十輪院の歴史と信仰
(10月23日~11月14日)

 南都・十輪院の歴史を、地蔵信仰を軸として古代から近代まで丹念に紹介。奈良時代の釈迦誕生仏立像、境内出土の平安時代の常滑焼大甕、下御門仏師の手になる理源大師坐像や、平城十輪院記や南都十輪院記の縁起、尊勝曼荼羅など、多様な資料の悉皆調査の成果を反映。本尊地蔵石仏龕をタペストリーで再現。仏画では真言八祖像(展示は弘法大師像のみ)は永禄元年(1558)の裏書きある中世仏画の新資料で、彩色主体の画風や侍者像の風貌は南都絵所の典型的作風を示す重要資料。図録として同名の書籍を十輪院と元興寺文化財研究所の共編で出版(184ページ、1400円+税、京阪奈情報教育出版)。

奈良県立美術館
 特別展 生誕200周年記念 森川杜園展
(9月23日~11月14日)

 奈良の一刀彫りで有名な森川杜園の、一刀彫りに留まらない多様な事蹟の全貌を紹介する好企画。奈良人形の制作のみならず、絵師であり、狂言師であり、また書もよくした才能溢れる文化人としてのその人物を、多数の作品を通じて紹介。なにより本展を重厚なものとするのが、明治時代初期の壬申検査における正倉院宝物の多数の模写資料とその模造作品、あるいは法隆寺九面観音像ほかの模造作品を集約した3章で、明治時代の古器旧物保護を巡る在地の動向を追跡し続ける同館の展示の蓄積を踏まえ、近世の職人的工人が近代の「美術」の制度に接して昇華していくその遍歴をも展示室内に視覚的に構築する。図録あり(160ページ、2400円)。

東大寺ミュージアム
 開館10周年記念特別公開 華厳五十五所絵巻
(10月1日~11月16日)

 東大寺所蔵の華厳五十五所絵巻を、前後期に分けて全巻公開。後半部分をじっくり鑑賞。戒壇堂四天王立像、法華堂日光菩薩・月光菩薩立像の林立する空間のなんと贅沢なことか。東京芸大文化財保存学保存修復彫刻研究室寄贈の執金剛神模刻像2軀の特別公開(~3/21)も、まさに今この展示室内にこそふさわしい時宜にかなった展示。

大阪市立美術館「聖徳太子-日出づる処の天子」「社寺縁起」、四天王寺宝物館「四天王寺聖教の世界」、国立民族学博物館「ユニバーサル・ミュージアム」、和泉市いずみの国歴史館 「希う-いのりのかたち」鑑賞記

10月19日
大阪市立美術館
 千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子-日出づる処の天子
(9月4日~10月24日)

 聖徳太子信仰にまつわる重要資料を広汎に集成。聖徳太子絵伝は元亨3年(1323)遠江法橋筆四天王寺本をはじめ、縦長・横長の掛幅装から、絵巻、断簡、略縁起まで総覧するように多数集める。聖徳太子像も二歳像、十六歳像(本展では童形像と表記)、摂政像、勝鬘経講讃像や、二王子を従えた三尊像まで彫像・画像をずらり展示。四天王寺本尊に関連してその模刻像や古代の金銅仏を、太子・観音同体信仰に関連して如意輪観音像を集めるほか、四天王寺の寺史にも目配りしてその重宝や舞楽関連資料までバラエティに富む内容。図録あり(370ページ、2800円)。本展はこの後サントリー美術館に巡回。

 コレクション展 社寺縁起-聖なるファンタジー
(9月4日~10月24日)

 施設改修による休館前に、寄託・館蔵の縁起絵巻を多数お蔵出し。堺市・長谷寺の長谷寺縁起絵巻(府指定)、開口神社の大寺縁起(重文)、大念仏寺本の融通念仏縁起絵巻、館蔵の犬寺縁起絵巻、佐太天神宮の文安3年(1446)芝観深筆北の天神縁起絵巻などなど。図録なし。

四天王寺宝物館
 秋季名宝展 四天王寺聖教の世界
(9月11日~11月17日)

 四天王寺伝来の聖教に関する最新の調査成果を公開。四天王寺勝鬘院で正安3年(1301)に書写された密教儀軌、高山寺旧蔵の顕戒論巻中(11c)、元永元年(1118)三井寺増恵書写の虚空蔵求聞持法、承安元年(1171)に皇慶本を全玄が書写した胎蔵儀軌、大御輪寺経蔵伝来の奈良時代の十一面神呪心経など、重要資料多数。リーフレットあり(19ページ、無料)。宇都宮啓吾「四天王寺の聖教」、同「ヲコト点とは」収載。有益。

国立民族学博物館
 特別展 ユニバーサル・ミュージアム-さわる!“触”の大博覧会-
(9月2日~11月30日)

 資料に触れて情報に接する手法を推進し、その理論化を進めている同館広瀬浩二郎氏とユニバーサル・ミュージアム研究会の実践的取り組みの集大成を展示。博物館的常識にとらわれず、触ることで「触常者」と「見常者」の垣根を越えた異文化コミュニケーションを促進する、開かれた新しい博物館像を提示する取り組み。展示資料は全て触ることができ、現代美術の作品や、研究会のワークショップ作品などのほか、興福寺仏頭、薬師寺聖観音像ほか仏像の原寸大複製もさわって鑑賞できる貴重な機会。図録あり(248ページ、2500円)。図録というよりは、図版の充実した事例報告及びコラム集で、展示のユニバーサルデザインを考える上での道しるべとなるもの。

和泉市いずみの国歴史館
 希う-いのりのかたち-
(10月16日~12月12日)

 和泉市域の文化財の中から、信仰に関わる縄文時代~江戸時代の資料を選んで展示。天授院の銅造如来立像(飛鳥時代)、郷荘神社の狛犬(室町時代)、森光寺大般若経(平安末~鎌倉時代)のほか、仏並・池辺家伝来の資料として、池辺氏出身の10世紀の比叡山僧覚超自筆の修善講式(複製)と、鎌倉時代写本、江戸時代写本を並べるなど、地域の宗教文化に関わる資料を拝する貴重な機会。リーフレットあり(12ページ、無料)。

和歌山市立博物館特別展「加太淡島神社展」鑑賞記

10月17日
和歌山市立博物館
 特別展 加太淡島神社展-女性・漁民の祈り-
(10月9日~12月12日)

 膨大に奉納された人形類で著名な加太淡島神社所蔵の書画と加太沖海揚がり陶磁器が同館に寄贈されたことを受け、そのお披露目を兼ねて同社の歴史と信仰史を紹介。鎌倉時代の大円山形星兜(重文)、南北朝時代の金銅造丸鞘太刀(重文)の周知の指定文化財のほか、海獣葡萄鏡(唐)や瑞花双鳥八稜鏡(鎌倉)など事前調査で見出された資料も紹介。加太沖の海揚がり陶磁器の中核をなすのが中国明代・15世紀の大量の龍泉窯系青磁で、香炉、稜花盤、広口壺、双耳瓶のほか、大量の青磁碗(蓮弁文碗・雷文帯碗)がずらりと120個ほど並んで圧倒的。重文級。漁民が拾得するたび神社に納めたもので、完形品の美品が多い一方で、焼成不良品が含まれていることから明から堺へ輸送途中で難破した船の積荷と推定される。図録あり(116ページ、1500円)。
 県博特別展「きのくにの名宝」とセットでぜひどうぞ。

高野山霊宝館開館100周年記念大宝蔵展「高野山の名宝」(4期)鑑賞記

10月11日、特別展展示替えの中日の休日に高野登山。
高野山霊宝館
 開館100周年記念大宝蔵展 高野山の名宝
(4期:10月5日~11月28日)

 開館100周年記念展の最終第4期目。仏画総入れ替え。紫雲殿正面に応徳3年(1086)銘を有する仏涅槃図(国宝)、左右の壁に血曼荼羅の当初彩色復元図。桜池院薬師十二神将像(重文)と普門院勤操僧正像(国宝)を目と鼻の先で間近にじっくり鑑賞。諸尊仏龕(国宝)、釈迦如来及諸尊像(枕本尊・重文)、浮彫九尊像(重文)の唐代檀像の重要作例とともに、親王院阿閦如来立像(重文)、宝亀院十一面観音像(重文)、竜光院厨子入倶利伽羅竜剣(重文)とバラエティに富む彫刻資料。運慶作八大童子も何度もじっくり。収蔵品図録あり(214頁、4500円)。1期~4期まで無事にコンプリート。

龍谷ミュージアム特別展「アジアの女神たち」鑑賞記

龍谷ミュージアム
 特別展 アジアの女神たち
(9月18日~11月23日)

 古代アジアの女神信仰の諸相を示しつつ、仏教に組み入れられた女神の展開と、東アジアにおける観音の女神化という観点から展示を構成。紀元前5500年のシリアの土偶から明清のマリア観音、20世紀のインド彫刻まで幅広い資料を集約しつつ、龍谷大学図書館所蔵の多様で豊富な版本経典を各所に用いて、信仰の背景や形の意味を解説する。実光院十羅刹女(十種供養菩薩)立像(平安、重文)、東大寺訶梨帝母坐像(平安、重文)、仁和寺菩薩坐像(南宋)、清荒神清澄寺千手観音像(鎌倉・重文)、蓮乗寺宝塔絵曼荼羅(長谷川等伯ら筆、室町)など仏像仏画も多数。弁才天にサラスヴァティーとドゥルガーの両方が重なっているという指摘(図録論考・森雅秀「サラスヴァティーから弁才天へ」参照)は目からウロコ。経典には見られない東アジアにおける観音の女性化という現象を、女神信仰を観音へと投影・集約した「新しい女神」の形成と捉えることも重要な提起。図録あり(260ページ、2500円)。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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