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高野山霊宝館「ほとけさまと動物たち」鑑賞記

5月19日、新緑の高野山に登り、再開した霊宝館訪問。
高野山霊宝館
 企画展 ほとけさまと動物たち
(4月18日~7月5日)

 仏教美術のなかに表される動物の表象を収蔵資料の中から紹介する。宝寿院六字尊像(重文・前期)、金剛峯寺両頭愛染曼荼羅(重文・前期)、竜光院屏風本尊(重文)、遍明院文殊菩薩及使者像(重文)や天野社伝来の舞楽装束(重文)、竜光院灌頂法具類のうち龍頭(重文)、大津絵の摩利支天像、親王院阿闍梨遍照尊像(昭和2年・福田恵一筆・帝展出品、250㎝×191㎝)などバラエティーに富んだ資料選定。ほか竜光院弘法大師二大弟子像は、大師と二弟子を中央に、左上に一身二頭像(伝奥砂子平尊、殊蛇死平尊)、右上に金剛薩埵、左下に両頭愛染、右下に不動明王を配し、中尊頭上に宝珠・日月・龍・内側に格子を描いた楕円形・白蛇を並べる特殊な修法の本尊像で、南北朝~室町時代前期ごろの作。初公開の清高稲荷社関係品(地蔵寺蔵)の木札には寛文10年銘とともに真徳院の名あり。桃山期に活動した面打真徳院と関わるなら重要情報。動物という観点で間口を広く設定しながら、高野山の密教世界の奥深さを存分に伝える内容。図録なし。

高野山霊宝館冬期平常展「密教の美術」鑑賞記

4月12日
高野山霊宝館
 冬期平常展 密教の美術
(1月18日~4月12日)

 コロナ禍で閑散とする高野山に登り霊宝館の冬期展最終日を一人鑑賞。近時修復した資料を紹介。快慶作の執金剛神立像・深沙大将立像の像内納入品の宝篋印陀羅尼は、建久8年(1197)銘で、源阿弥陀仏や名阿弥陀仏の名あり。円通寺の十巻抄(鎌倉時代・重文)、白描不動明王二童子毘沙門天倶利伽羅龍像(鎌倉時代・重文)も修理後初公開。ほか、光台院毘沙門天像(平安時代・重文)のほか、西南院の熊野曼荼羅(南北朝時代)は兵庫・温泉神社と同系統の図像の作例、成福院の春日鹿曼荼羅(室町時代)は鹿の背に載せた鏡面中央に長谷寺式十一面観音が描かれる作例、親王院の三十番神像(南北朝~室町時代)は堅実な出来映えで、五坊寂静院伝来。同院には日蓮(是聖房蓮長)も遊学。彫刻では金剛峯寺の厨子入三宝荒立像が天正17年(1589)木食真山人作の銘が厨子にあり。図録なし。鑑賞後、参拝者の姿の見えないがらんとした壇上伽藍を巡って悪疫悉除を祈念。

奈良市史料保存館「昭和の奈良町の仏像研究家の足跡-太田古朴・仏像修理研究資料展示-」鑑賞記

3月28日
奈良市史料保存館
 企画展示 昭和の奈良町の仏像研究家の足跡-太田古朴・仏像修理研究資料展示-
(3月3日~3月31日)

 多数の仏像修理に携わり、また研究を行った仏像修復家太田古朴(1914~2000)の遺品の発見と整理の完了に伴い一部を公開。特に日本彫刻史上に重要な意味を有する納入品を伴う仏像として、金峯山寺聖徳太子及び二童子像(文永11年〈1274〉)、伝香寺寺像菩薩立像(安貞2年〈1228〉)、東大寺中性院弥勒菩薩立像(研究4年〈1193〉)、円成寺南無仏太子立像(延慶2年〈1309〉)、興善寺阿弥陀如来立像(源空・証空消息納入)の納入品納置状況を示す図面を紹介して、その資料価値を再評価する。リーフレットあり(6ページ)。  

和歌山県立紀伊風土記の丘「古墳から古代寺院へ」鑑賞記

3月1日
和歌山県立紀伊風土記の丘
 企画展 古墳から古代寺院へ-紀伊における儀礼の変遷を探る-
(1月18日~3月1日)

 用事にかこつけて最終日に滑り込み。終末期古墳から寺院への転換期の様相を、紀伊国内の古代寺院出土資料を中心に紹介。西国分廃寺・北山廃寺・最上廃寺・佐野寺・神野々廃寺・名古曽廃寺・薬勝寺廃寺・田殿廃寺・道成寺・三栖廃寺・堂ノ谷瓦窯・上野廃寺・荒見廃寺・山口廃寺・紀伊国分寺と、和歌山の主要な古代寺院を網羅的に扱う。出土瓦がずらりと並び、瓦当文様の分布から見える地域間の関係性をパネルで示しつつ、日本霊異記の内容ともリンクさせていて丁寧な展示。佐野寺跡と最上廃寺出土の塼仏をありがたく鑑賞。図録なし。

龍谷ミュージアム「仏像ひな型の世界」鑑賞記

2月23日
龍谷ミュージアム
 特集展示 仏像ひな型の世界
(1月9日~2月9日・ 2月22日~3月22日)

 京都仏師畑治良右衛門家に引き継がれた七条仏師の仏像雛形をずらりと並べて紹介。明暦4年(1658)3月康知作の妙心寺花園法皇坐像の10分の1の雛形にはその1ヶ月前の年紀が付されていて、事前の作と判明。ほか四条天皇(康乗作)、東照大権現、慈眼大師、徳川家光(康知作)など幕府筋の肖像のほか、清凉寺式釈迦胸像(康朝作)、東寺御影堂の弘法大師頭部(康傳作)、専修寺の親鸞聖人坐像(康傳)の写しといった特別な像の模刻が含まれるのも正系仏師ならではで、さまざまな僧侶の胸像も頭部のみを取り替えて体部を定型とする造像の現場をうかがわせる。仏師の工房研究や江戸時代彫刻史を大きく進展させるものであり、展示そのものが重要な研究の途中成果報告の体を成す。今後の論文化を期待。京都ならではの重要資料を掘り起こし、信頼を得て寄託を受け、ただちに共有化するという、「公共」の博物館としての活動を同館が果たしていることはとても重要。リーフレットあり。

福島県立博物館「震災遺産を考える-それぞれの9年」鑑賞記

2月22日
福島県立博物館
 特集展 震災遺産を考える-それぞれの9年
(2月11日~4月12日)

 東日本大震災と原発事故からの9年を、同館が収集を続けている震災遺産と、それらの資料に深く関わる福島の人々の生き様や活動を通じて紹介する。展示の冒頭に設置された、福島県博が作成した南相馬市半杭牧場牛舎の柱のレプリカは、原発事故後の避難で放置せざるを得なかった牛が飢餓のために齧った痕跡が生々しく再現され、餓死した牛の苦しみと、生産者の癒えぬ苦しみを伝える負のモニュメントとして、場を規定する力を持つ。ほか、避難所運営・寺子屋的活動・情報伝達・歴史の記録と、突き動かされるように活動した人々の痕跡を、丁寧に収集した資料が伝える。天災・人災ののち、翻弄されながらも精一杯生きる福島の人々の同時代史をどれだけ残すことができるか、県立博物館がその機能を活かしつつ役割を果敢に果たしていることを、そしてこれから果たしていくこととなる長い道のりへの決意表明を展示の行間に見る。心揺さぶられる。図録なし。

東京国立博物館「出雲と大和」「伝説の面打たち」、びわ湖長浜KANNON HOUSE鑑賞記

2月21日
東京国立博物館
 日本書紀成立1300年特別展 出雲と大和
(1月15日~3月8日)

 古代の祭と政の構造を日本書紀を基軸に出雲・大和を対比的に捉え、祭祀や葬送の場とかたち、そして仏教受容の様相を紹介。島根県・奈良県と東博の共同企画。前半は出雲大社の心御柱・宇豆柱、荒神谷遺跡出土の銅剣・銅矛、加茂岩倉遺跡出土の銅鐸など島根県立古代出雲歴史博物館の収蔵品、メスリ山古墳の埴輪や黒塚古墳の鏡、藤ノ木古墳の副葬品など奈良県立橿原考古学研究所の収蔵品を中心に重要資料を紹介。後半の仏像ゾーンでは法隆寺献納宝物の仏像、鰐淵寺金銅仏、當麻寺持国天立像、石位寺浮彫伝薬師三尊像、大安寺楊柳観音立像や多聞天立像、矢田寺十一面観音立像、萬福寺四天王立像など飛鳥・奈良・平安前期彫刻がずらり並んで壮観。八重垣神社本殿板壁画の可憐な神の風貌を間近に確かめる。図録あり(342ページ、2500円)。

 特集 伝説の面打たち
(1月2日~2月24日)

 室町時代に活動し、その後能面制作者や能役者の間で語り継がれ、また創作仮面に名を残した半ば伝説化した数々の面打について、鑑定銘を伴う収蔵資料から紹介。赤鶴作の山姥、一透作の大癋見、日光作の三番叟、文蔵の鼻瘤悪尉、龍右衛門の中将、越智の深井、増阿弥の増女、福来の阿古父尉、日氷の痩女などずらりと並ぶが、真にそれらの面打の作と確証を得られるものは一つとしてないところが重要。鑑定の真偽の問題ではなく、いかに能面が受け継がれたのかという受容史に果敢にコミットして共有化を図る、科学的な能面研究のあり方を提起していてキラリと光る(山姥の眼もギロリと光る)。図録あり(24ページ、660円)。

びわ湖長浜KANNON HOUSE
 高月町西野 正妙寺 千手千足観音立像
(12月24日~3月15日)

 10月での閉館を表明された同施設の定点観測。瞋怒相で額に三目を配し、真手を伴わない千手を表して、条帛を着けず、君裾をまくって膝頭を出し、千足を表した稀有な図像の観音像。台座形状から17世紀末~18世紀前半ごろの制作かと思われるが、上記特徴には古像に類例のあるものもあって大変興味深い。1点集中で鑑賞するという手法(長浜方式)は汎用性があると思う。小冊子『観音さま』(26ページ、300円)に図版と解説掲載。

奈良国立博物館「毘沙門天」「お水取り」鑑賞記

2月11日
奈良国立博物館
 特別展 毘沙門天-北方鎮護のカミ-
 (2月4日~3月22日)

 奈良時代から鎌倉時代までの毘沙門天像の優品を集約して展示する貴重な機会。愛媛如法寺の稀有な奈良時代乾漆毘沙門天立像や、像内から保安5年(1124)銘が確認された島根岩屋寺旧蔵の大型の毘沙門天立像といった新資料とともに、東寺の兜跋毘沙門天立像、道成寺の毘沙門天立像、鞍馬寺の毘沙門天・吉祥天・善膩師童子立像や、誓願寺像、雪蹊寺像、観世音寺像等々、代表的な作例が勢揃いして壮観。図録あり(176ページ、2000円)。側面背面等の図版が豊富でありがたく拝み見る。

 特別陳列 お水取り
 (2月4日~3月22日)

 東大寺二月堂の修二会の時期にあわせた恒例お水取り展。天文14年(1545)亮順筆の二月堂縁起を長めに展示。図録あり(72ページ、1300円)。二月堂縁起上下巻の図版を全部掲載。二月堂本尊光背はなら仏像館に展示。

奈良国立博物館「法隆寺金堂壁画写真ガラス原板」「おん祭と春日信仰の美術」「新たに修理された文化財」鑑賞記

奈良国立博物館
 重要文化財 法隆寺金堂壁画写真ガラス原板-文化財写真の軌跡-
(12月7日~1月13日)

 昨年保存修理が完成した昭和10年撮影法隆寺金堂壁画ガラス原板(重文)のお披露目に際して、近代における文化財写真による記録の軌跡を紹介。東京国立博物館の旧江戸城写真帳(H12重文指定)、同写真原版(H13重文指定)、壬申検査関係写真(H15重文指定)、臨時全国宝物調査関係資料(H28重文指定)の写真や宝物精細簿、法隆寺と便利堂の法隆寺金堂壁画写真原板とガラス原板(H27重文指定)がずらり並び、国による文化財としての「文化財写真」保存の達成点をも提示する。ガラス原板と模写と焼損後壁画の高精細写真と会場内映像コンテンツで再現された法隆寺金堂壁画の隔絶された高い芸術性を堪能。図録あり(112ページ、2300円)。
 
 特別陳列 おん祭と春日信仰の美術-特集 春日大社にまつわる絵師たち-
(12月7日~1月13日)

 春日若宮おん祭の光景を多数の絵画資料で紹介するとともに、中世後期の南都絵所絵師、近世・近代の春日絵所絵師に注目して、春日社と絵師の関わりにクローズアップして資料選定。とくに江戸中・後期の春日絵所の展開(勝山琢眼→原在照)や活動について、古記録や粉本類を活用して明らかにしており有益。図録あり(80ページ、1500円)。

 特集展示 新たに修理された文化財
(12月24日~1月13日)

 昨年度修理完成した館蔵品・寄託品のお披露目。館蔵の絹本著色親鸞聖人像(熊皮御影・重文)、釈迦十六善神像、聖護院役行者八大童子像、達磨寺玄奘三蔵十六善神像と重要な大幅の作品がずらり並んで壮観。彫刻では元吉野山個人蔵で館蔵となった弘安九年(1286)慶俊作役行者倚像、元興寺町共和会の10世紀の大日如来坐像(県指定)。配布資料なし。

和歌山大学紀州経済史文化史研究所 「七宝瀧寺と志一上人-葛城修験二十八宿の世界-」鑑賞記

12月6日、すぐ近くなのに終了間際に滑り込む。
和歌山大学紀州経済史文化史研究所
 特別展 七宝瀧寺と志一上人-葛城修験二十八宿の世界-
(10月31日~12月13日)
 葛城修験の歴史と文化について、犬鳴山七宝瀧寺伝来資料を中心に紹介し、同寺中興志一上人に関わる伝承についてもフォロー。七宝瀧寺の金銅装笈(室町)、建久六年摩利支天法、不動明王八大童子像(室町)のほか、粉河寺の粉河寺御池海岸院本尊縁起(江戸)、神於寺の神於寺縁起絵巻模本(明治)、根来寺の根来寺伽藍古絵図(複製)など。紀の川市梵釈寺の至一上人像は応安元年(1368)着賛の頂相。ありがたく鑑賞。図録あり(16ページ、無料)。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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