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なら歴史芸術文化村特集展示「奈良県指定の文化財」鑑賞記

10月22日
なら歴史芸術文化村
 特集展示 奈良県指定の文化財
(10月22日~12月11日)

 古代〜中世の美術工芸品を中心に奈良県指定文化財を集めて、県としての文化財保護の活動と意義を紹介。仏像では陽雲寺菩薩坐像、朝護孫子寺銅造毘沙門天立像、東南院大日如来坐像、野迫川村平区平等寺釈迦如来坐像、絵画では唐招提寺薬師十二神将像、元興寺智光曼荼羅(後期[11/15~])、如意輪寺吉野曼荼羅、金峯山寺吉野曼荼羅(後期)、工芸品では室生寺水晶五輪塔納置黒漆宝筐院塔形舎利殿、十輪院多宝塔、書籍・典籍として観世世阿弥能楽伝書佐渡状、歴史資料として県有の明治十二年七月大和国平群郡寺院明細帳、有形民俗として念仏寺の陀々堂鬼面、考古資料として宮瀧遺跡出土品、纏向遺跡太田池土坑出土品の木製仮面、等々、重要資料を幅広く集める。令和三年度の新指定県指定文化財も紹介(うち興福寺濮陽大師像は(11/29から展示)。同施設の開村以来、施設内の工房(美術院)で修理を進めてきた東南院大日如来坐像、十輪院多宝塔については、修理工程の折々に撮影した動画による映像コンテンツがそれぞれ設置され、修理前・途中・修理後を実物資料も確かめつつ鑑賞。普段拝見の難しい手業の映像は、工房と日々密接に関わる同施設ならではのもの。県指定文化財という枠組みから、文化財の多様さと、文化財保護の歴史の過去・現在(そして未来)を展示室内に展開する充実した内容。図録あり(56頁、1200円)。

百済寺「秘仏御本尊十一面観音菩薩」参拝記

10月16日
百済寺
 秘仏御本尊 十一面観音菩薩 特別参拝
(10月1日~10月16日)

 聖徳太子千四百年御聖忌を記念して、今春新たに重要文化財になった本尊十一面観音立像を御開帳。最終日に滑り込み。同像は、従来奈良末~平安初期の作例とする説(『東近江市史』)、白鳳期金銅仏との類似を指摘する説(伊東史朗「百済寺十一面観音立像について」『国華』1407)のあった針葉樹製の一木彫像で、重文指定の際には装身具表現等から奈良時代後期作例と判断された。ただし耳の形状は白鳳期作例にも見られるたいへん古様なもので、今後なお制作時期についてはさまざまな意見を出していくべき重要作例。像高280㎝の巨像であることを含め、古代における木彫像の成立と展開を考える上で貴重な情報を伝えており、ありがたくご拝観。厨子前の室町時代彫像は、卒論執筆の折りに一生懸命に眺めた思い出あり。

野洲市歴史民俗博物館企画展「近江湖南に華開く宗教文化-野洲・守山の神と仏-」鑑賞記

10月16日
野洲市歴史民俗博物館
 企画展 近江湖南に華開く宗教文化-野洲・守山の神と仏-
(10月8日~11月27日)

 滋賀県立琵琶湖文化館と野洲市・守山市が連携し、琵琶湖文化館寄託品を活用して、旧野洲郡の宗教文化を紹介。鎌倉初期仏画の優品である法蔵寺如意輪観音像や、快慶風を示す西林寺の鎌倉時代前期の阿弥陀三尊像、兵頭神社護摩堂伝来の不動明王立像、応永26年(1419)施入とわかる下新川神社の和韓混交鐘、本願寺赤野井別院の光明本尊、御上神社の平安時代後期造像の相撲人形、益須寺遺跡出土の瓦類等々、多様な資料を展示。近世近江国の寺社研究をするうえで重要な地誌である近江輿地志略も活用。地域の歴史を信仰史から眺める貴重な機会。図録あり(49ページ、1700円)。

和歌山県立博物館特別展「濱口梧陵と廣八幡宮-法蔵寺・養源寺・安楽寺の文化財とともに-」鑑賞記

10月15日
和歌山県立博物館
 特別展 濱口梧陵と廣八幡宮-法蔵寺・養源寺・安楽寺の文化財とともに-
(10月15日~11月23日)

 広川町の廣八幡宮及び別当明王院と町内寺院3か寺の文化財調査に基づく成果を公開。広村出身の実業家・政治家濱口梧陵の安政地震津波時の活動をあわせて紹介する。廣八幡宮別当明王院の十一面観音立像は、像内納入の法華経に元徳元年(1329)に納められたことが記され、制作時期を把握できる基準作例。この明王院旧蔵の仏像群が大阪・四天王寺に引き継がれていることが知られるが、そのうち元廣八幡宮多宝塔本尊の、鎌倉時代後期の大日如来坐像を展示。同様に移動した四天王寺薬師如来坐像と阿弥陀如来坐像もパネルで紹介。資料散逸により把握しづらくなっている廣八幡宮のかつての神仏習合のあり方を、実物に即して把握できる貴重な機会。ほか、法蔵寺一空上人坐像や十六羅漢像、安楽寺光明本尊や馬上清江筆の徳本上人像、富岳図、玉龍筆の極めて雄渾な書「天鑑」「無私」、養源寺に江戸青山御殿資材により建築された堂舎に関する資料など、海に開かれた湊町の寺院に伝わった多様な絵画・墨蹟・工芸品・典籍類が並ぶ。地域に密着した地道で丁寧な資料調査活動に基づき、新たに把握され価値評価がまだ定まっていない資料群をただちに公開して広く共有することで、地域文化の知られざる一面を紹介しまたそれを地域に還元する学術的な営みは、「各地域で知的、文化的中枢として奉仕すべき」(ユネスコ「博物館をあらゆる人に開放する最も有効な方法に関する勧告」)博物館が果たすべきあり方を体現するもの。図録あり(240ページ、2000円)。

春日大社国宝殿特別展「春日大明神に祈る 時代を変えた兵」鑑賞記

春日大社国宝殿
 特別展 春日大明神に祈る 時代を変えた兵-頼朝・義経から幕末まで-
(7月16日~12月13日)

 美術史実習の見学講義でご訪問。春日大社に武家によって奉納された武器武具類を多数展観。常設の国宝鼉太鼓も源頼朝奉納伝承あり。赤銅造太刀銘友成、黒漆山金作太刀の平安刀や、楠木正成奉納の胴丸(国宝)、足利将軍家奉納の金装花押散兵庫鎖太刀(国宝)など武器武具の重要資料がずらり。大東文書や春日大社文書から関東御教書や足利尊氏御教書、豊臣秀吉朱印状などもあわせて並べる。春日本春日権現験記をうまく活用し、武士の風体も提示。刀剣大好きゼミ生に解説してもらう。図録なし。本殿、若宮参拝して禰宜道歩いて高畑へ抜ける。

新薬師寺
 奈良時代本堂に安置される本尊薬師如来坐像(国宝)、塑造十二神将立像(国宝)をぐるぐる巡りながら心ゆくまで拝観できる幸せ。香薬師の複製像見て仏像盗難問題を思う。

龍谷ミュージアム特別展「博覧-近代京都の集め見せる力-」鑑賞記

10月4日
龍谷ミュージアム
 特別展 博覧-近代京都の集め見せる力-初期京都博覧会・西本願寺蒐覧会・仏教児童博物館・平瀬貝類博物館
(9月17日~11月23日)

 資料を集め供覧する博覧・蒐覧のあり方を、明治初期に開催された博覧会のごく初期事例である西本願寺を会場として行われた明治4年京都博覧会、明治8年から開催された西本願寺蒐覧会、真宗僧中井玄道による仏教児童博物館と西本願寺周辺の事例と、民間の貝類研究者平瀬與一郎による平瀬貝類博物館を取り上げて紹介。京都博覧会の実態が詳細に明らかにされていることや、西本願寺蒐覧会の開催内容と宗派による末寺法宝物の鑑査と鑑査状の発行といった、国の古器旧物保護の動きとも連動した実態を示していることなど、明治時代の「文化財」を巡る動きが、本山内の資料も含めて集められた多数の資料から展示室内に立ち上がり、極めて重要な学術成果を共有する機会となっている。博覧をテーマにした展覧会自体が、微に入り細を穿つ種々多様な資料を博捜し供覧して成り立っているという「博覧」の二重構造になっている。図録(260ページ、2500円)もまさに博覧の二重構造で、単なる資料カタログには留まらず、担当和田秀寿学芸員による単著とみなすにふさわしい膨大な文章量で展示内容が詳述されていて、参考文献も充実。近代期の「文化財」保護と普及を巡る研究分野において、必見の展示であり必携の図録。

大和文華館「一笑一顰-日本美術に描かれた顔-」鑑賞記

9月27日
大和文華館
 一笑一顰-日本美術に描かれた顔-
(8月19日~10月2日)

 コレクションを駆使して日本美術の多様な顔貌表現に着目。同館を代表する寝覚物語絵巻(国宝)、佐竹本三十六歌仙絵断簡小大君像(重文)、維摩居士像(文清筆、重文)、呂洞賓図(雪村筆、重文)、婦人像(重文)、中村内藏助像(尾形光琳筆、重文)をはじめ、物語絵や歌仙絵などずらり。応永30年(1423)の賛がある龍湫周沢像をじっくり。図録なし。

和歌山県立博物館企画展「あの人からの手紙」鑑賞記

8月31日
和歌山県立博物館
 企画展 あの人からの手紙
(8月27日~10月2日)

 同館が積極的に収集し続けている、紀伊国・和歌山県の中世~近現代の書状・書簡・手紙類を活用して、紀伊国ゆかりの人物を紹介しつつ、さまざまな歴史的事象を浮かび上がらせる。中世文書では康永4年(1345)高師直施行状(藤並彦五郎宛)、寛正6年(1465)畠山政長書状(隅田能継宛)、天正13年(1585)羽柴秀吉書状写(佐竹義重宛)、天正13年木食応其書状(長老坊宛)、近世文書では慶長4年(1599)浅野幸長書状(吉村橘左衛門宛)、徳川頼宣書状(朽木植綱宛)、徳川吉宗黒印状(相良長興宛)、祇園南海書状(奥野鶴渚宛)、本居宣長書状(本居大平宛)、近現代では陸奥宗光書簡(伊東巳代治宛)、南方熊楠書簡(宇井縫蔵宛)、徳川頼貞書簡(喜多村進宛)、島崎藤村葉書(喜多村進宛)など。読売日本交響楽団所蔵のベートーヴェン自筆書簡(C.F.ペーターズ宛)ほかも出陳。図録なし。

龍谷ミュージアム「のぞいてみられぇ!“あの世”の美術-岡山・宗教美術の名宝Ⅲ-」鑑賞記

8月12日
龍谷ミュージアム
 企画展 のぞいてみられぇ!“あの世”の美術-岡山・宗教美術の名宝Ⅲ-
(7月16日~8月21日)

 リニューアル中の岡山県立博物館コレクションを活用し、浄土信仰と熊野信仰の観点から“あの世”への憧れと畏れの種々相を紹介。ずらり並ぶ法然上人伝法絵断簡は6幅中5幅が岡山県博所蔵で、収集方針の確かさがうかがえる。遍明院阿弥陀二十五菩薩来迎図や木山寺阿弥陀三尊十仏来迎図、吉備津神社菩薩面などで極楽への憧れを、日光寺地蔵十王像や宝福寺寺蔵十王図、熊野観心十界曼荼羅にて地獄への恐怖を提示。笠加熊野比丘尼関係資料からは那智参詣曼荼羅や熊野観心十界曼荼羅、熊野権現縁起絵巻、熊野牛王版木、懸守などを紹介。熊野比丘尼の勧進道具をありがたく拝見。お盆の時期に、時宜に叶ったテーマ設定で、優れたコレクションを活用する好企画。図録あり(変形判型の小冊子、46ページ、500円)。

京都国立博物館「河内長野の霊地 観心寺と金剛寺」鑑賞記

8月12日
京都国立博物館
 特別展 河内長野の霊地 観心寺と金剛寺-真言密教と南朝の世界-
(7月30日~9月11日)

 観心寺と金剛寺の様々な文化財を真言密教・南朝の括りで集約し一堂に展観する。観心寺勘録縁起資財帳、伝宝生如来坐像、伝弥勒菩薩坐像など観心寺創建期の重宝や、現存最古本の弘法大師像や伝阿観上人所持の宝剣、多宝塔本尊大日如来坐像など金剛寺の平安末伽藍整備期の重宝など、国宝・重文を多数展示。平成28年度~令和元年度に同館が実施した科研「河内地域の仏教文化と歴史に関する総合的研究」による調査成果の公開を兼ね、あらたに断簡多数が発見された金剛寺遊仙窟(重文)の紹介のほかにも、悉皆調査により把握された中世末~近世の仏画や密教法具を積極的に取り上げ、真言寺院における修法の場と儀礼のあり方を紹介するとともに、中世末~近世仏教美術を研究の俎上に上げる機会とする。昭和50年代より続く、美術工芸品を中心とする社寺伝来文化財の悉皆調査と報告書及び展示による共有化という同館の手法を、大阪南部地域の名刹を対象としてエリアを拡大して取り組んだものであり、多分野にわたる研究者を擁する稀少な博物館としての社会的責務を果たすもの。図録あり(172ページ、2200円)。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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