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MIHO MUSEUM特別展「猿楽と面」鑑賞記

3月25日
MIHO MUSEUM
 特別展 猿楽と面-大和・近江および白山の周辺から-
(3月10日~6月3日)

 大和(紀伊含む)・近江・白山周辺の社寺などに群として伝来する、作風に定形化の見られない個性溢れる魅力的な中世猿楽面を多数集め、3期(Ⅰ期3/10~4/8、Ⅱ期4/10~5/6、Ⅲ期5/8~6/3)に分けて紹介する。Ⅰ期では個人蔵の鎌倉時代の大型の翁、長尾神社の翁、談山神社の摩多羅神、天河神社の「おちのきたろう」銘の翁・三番叟、永青文庫の伝日光作翁、甲津原天満神社の翁・三番叟、政所八幡神社の翁・三番叟、白山長滝神社の酒惣作翁、白山中居神社の日与十郎作父尉など、翁とその系統の面を集めて有益。地元滋賀の古面では、門外不出の甲津原天満神社面がずらり。尉面の不思議な現実感と、霊面の見ていると不安になる恐ろしさ。仮面は3期のそれぞれで大半が入れ替わるので3回行くしかあるまい…。図録あり(402ページ、3000円)。

大阪府立近つ飛鳥博物館「慈雲尊者と高貴寺」鑑賞記

3月11日
大阪府立近つ飛鳥博物館
 慈雲生誕300年記念展 慈雲尊者と高貴寺-いつくしみの書とその教え-
(1月20日~3月18日)

 慈雲尊者の生誕300年を記念して、住持として晩年を過ごし、その墓所のある河内・高貴寺のそば、近つ飛鳥博物館で、慈雲飲光の肖像と墨蹟、そして尊者の提唱した正法律などの思想を紹介する。資料は高貴寺、黒川古文化研究所所蔵のものに絞り、肖像は原在中筆のものと、山本義照筆本を複数、原在中・慈雲の紺紙金泥種子両界曼荼羅、そして何より名号梵字真言八祖や法語類など墨蹟の優品がずらり。端正で伸びやかな渇筆を味わう。図録(138ページ、1800円)は黒川古文化研究所の発行(編集杉本欣久)。慈雲提唱の十善戒は展示室でも図録でも紹介。弟子某甲盡未来際~。
 鑑賞後、久しぶりに叡福寺参拝。宝物館の平安前期の仏像など拝観して、聖徳太子廟参拝すると、ちょうど鐘楼では東日本大震災の追悼法要中。鐘声を聞きつつ、合掌礼拝。

東京国立博物館「仁和寺と御室はのみほとけ」、神奈川県立金沢文庫「運慶」鑑賞記

3月3日
東京国立博物館
 特別展 仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-
(1月16日~3月11日)

 仁和寺伽藍の修理事業の完了を記念して、仁和寺一山と御室派寺院の文化財を一堂に集める。冒頭の宇多法皇像と袈裟、御室相承記、檀像薬師如来坐像(北院薬師)、守覚法親王像、金剛寺本弘法大師像、三十帖冊子、聖教類の重厚な並びが、本展の神髄。本尊阿弥陀如来及び両脇侍像、道明寺十一面観音立像、葛井寺千手観音坐像の国宝彫像に嘆息し、神呪寺如意輪観音坐像に身震いする。奈良仏師の手になる金剛寺五智如来坐像と大日如来坐像は研究目線で堪能。図録あり(326ページ、2800円)。葛井寺像の制作時期については同一書内で揺らぎあり。難問。

神奈川県立金沢文庫
 特別展 運慶-鎌倉幕府と霊験伝説-
(1月13日~3月11日)

 仏師運慶の同時代における名声と伝説化に着目し、その実作例、推定作例、活動の痕跡を偲ばせる作例を集め、関東における運慶周辺仏師の作例とともに展観する。運慶銘の光明院大威徳明王像、推定作例の滝山寺梵天立像、光得寺大日如来坐像のほか、曹源寺十二神将立像は永福寺に安置された運慶の手になる十二神将像の写しと評価、永福寺出土の銅製装飾金具は滝山寺聖観音立像の装飾金具と並べて比較。光触寺阿弥陀三尊像は、仏師として運慶が登場する頬焼阿弥陀縁起絵巻とともに紹介。宗慶作保寧寺阿弥陀三尊像、実慶作修善寺大日如来坐像のほか、建久7年(1196)銘を有する個人蔵不動明王坐像及び両脇侍立像など、重要な鎌倉前期の彫像がずらり並んで壮観。図録あり(112ページ、1500円)。

京都文化博物館「保存と修理の文化史」、京博「豪商の蔵」、奈良博「薬師寺の名画」、東大寺ミュージアム「二月堂修二会」鑑賞記

2月17日
京都文化博物館
 保存と修理の文化史
(1月5日~3月4日)

 日本の歴史上において、折々の価値観において重要と認識された資料が、管理され、修理され、継承されてきた事例を丹念に拾い起こし、その心性(作善、権威の継承、組織の継承等)を浮かび上がらせるとともに、修理に携わった人々の存在をクローズアップする。誓願寺文書の箱や巻子外装に幾度も貼られた付箋、薬師寺吉祥天像の旧下地・表装類、きらびやかな絵画の背面に記された修理銘など、極めて地味な、しかし輝くように重要な、モノの伝来史を伝える情報に光を当てる貴重な機会。奈良国立博物館仏涅槃図は、画絹の左半分は南北朝時代、右半分は元禄16年(1703)の補筆とのことであるが、全く判別できず自信喪失(画絹の劣化度に違いがあるらしいことは分かる)。図録あり(64ページ、1300円)。

京都国立博物館
 特別企画 貝塚廣海家コレクション受贈記念 豪商の蔵-美しい暮らしの遺産-
(2月3日~3月18日)

 貝塚の豪商廣海家より寄贈された1000件の資料の中から、近世~近代の優品をずらり展観。漆器の状態がよく、管理が行き届いていたことを思わせる。大正期の膳具を数十個ずらりと並べる展示手法は大迫力。図録あり(164ページ、1500円)。
 彫刻の展示では、久しぶりに安祥寺五智如来像にご対面。旧館の展示とは異なり、横一列に並ぶのも新鮮な印象。いろいろな獅子・狛犬と神像もじっくり。

奈良国立博物館
 特別陳列 お水取り
 特別陳列 薬師寺の名画-板絵神像と長沢芦雪筆旧福寿院障壁画-
 特集展示 名もなき知識、発願者たち(写経編) 
(2月6日~3月14日)

 恒例「お水取り」を地域博物館としての役割により開催しつつ、収蔵品を活用した特別陳列・特集展示を重ねる。「薬師寺の名画」では南都絵所吐田座の尭儼の手になる板絵神像の修理(H11~13年)と模本作製(H20~25年)事業、そして長沢芦雪筆の旧福寿院障壁画の修復事業(H25~29年度)が完了した記念に全点を公開。板絵神像は法体・俗体・女体からなる22神。寛治年間(1087~94)の絵を永仁3年(1295)に写したもの。図録(64ページ、1000円)にはこれとよく似る新出個人蔵板絵神像(伝手向山八幡伝来)が紹介され、南都の絵師における古画学習と図様継承の実態がより詳細に判明。ずらり並ぶ初見の芦雪画はゆったり鑑賞できて贅沢。

東大寺ミュージアム
 特集展示 二月堂修二会
(2月2日~3月15日)

 3月1日からの修二会に合わせた特集展示。天文14年(1545)亮順筆の二月堂縁起上巻を大きく開く(下巻は奈良博お水取り展で展示中)。詞書は後奈良天皇と尊鎮法親王。当面の仕事に合わせて絵巻モード。図録なし。

高野山霊宝館「密教の美術-霊宝館収蔵宝物お蔵出し!」鑑賞記

1月20日、2週間ぶりの休みで、寒さも少しやわらいでいるので、ようやく高野山へ向かう。

高野山霊宝館
 密教の美術-霊宝館収蔵宝物お蔵出し!-
(12月9日~4月8日)

 これまでに展示機会の少なかった資料を中心に公開。初公開の能・狂言面5面は、中将とされる男面の面裏に「真徳院作」と刻銘があり、古沢厳島神社の慶長15年(1610)銘悪尉の作者と同人で貴重な発見。目の見開きの大きい表情など近世能面としての定型化が見られないのも共通。残りの笑尉・万媚・小飛出・見徳(赤鶴作銘あり)は室町時代の制作。万媚とされる若い女面は額が広くて古様。5面が重なって箱に収まっていたとの由。高野山周辺の神社などに伝来したか。ほか戦国~桃山期の在銘鉄製吊灯籠、高屋肖哲など近代期仏画など紹介。護摩灰を型に詰めて作った大師御手形弁才天十五童子像をきちんと江戸時代の資料として位置づけて紹介しているのも誠実。図録なし。

鑑賞後、胡麻豆腐と餡入生麩を買って、高野山御手印縁起の東端ラインをたどって山を降り、帰宅。

細見美術館「末法」、京都文化博物館「至宝をうつす」、京博「いぬづくし」「梵音具」鑑賞記

12月20日
細見美術館
 末法/Apocalypse-失われた夢石庵コレクションを求めて-
(10月17日~12月24日)

 宗教美術を中心とした資料群をフィクションによって結びつけて集約し、展示自体を一つの物語として提示する。伝来場所より切り離された美術資料を個人が「収集」し「所有」する行為を前景化させつつ作品との対峙を促すもので、それゆえ伝来情報も資料の価値評価もまた各自が対峙し判断するべき要素となる。公立館では不可能な、個人コレクションに基づく私立美術館ならではの挑戦的な展示。近時詳細が報告された道隆寺旧蔵の天部立像(清水眞澄「香川・道隆寺旧蔵木造天部立像と、いわゆる「獅噛」について」『国華』1454、2016)、像内に記された天文12年の修理銘により興福寺子院伝来と分かる弥勒菩薩立像、伝来不詳ながら格調高い随身坐像、集約された「伝」金峯山出土の鏡像群をじっくり鑑賞。図録あり(208ページ、3000円)。

京都文化博物館
 便利堂130周年記念 至宝をうつす-文化財写真とコロタイプ複製のあゆみ-
(12月16日~1月28日)

 絵画・古文書の精細な文化財複製の制作に携わる便利堂によって継承されてきたコロタイプの技術と印刷されたさまざまな「作品」を提示。法隆寺金堂壁画はその写真撮影の様子を示しつつ、原寸大のコロタイプ印刷(モノクロ)12幅が一室にずらりと懸けられ壮観。蒙古襲来絵詞や地獄草紙の複製など、その再現度の高さに改めて気づく。図録あり(52ページ、972円)。

京都国立博物館
 新春特集展示 いぬづくし-干支を愛でる-
(12月19日~1月21日)

 平成30年の干支にちなんで犬の表された作品をチョイス。京丹後市・竹野神社の等楽寺縁起絵巻、栗棘庵石清水曼荼羅のほか、館蔵の獅子・狛犬、仏涅槃図など。リーフレットあり(A3二つ折り、無料》。

 名品ギャラリー 梵音具
(12月19日~1月28日)

 金工室の特集。最古の紀年銘がある長承3年(1134)銘鉦鼓、称名寺剱阿の室生寺への寄進銘がある梵字を墨書した銅鑼など、鉦鼓・鰐口・錫杖頭・磬が並ぶ。

永青文庫「細川家と天下泰平」、慶應義塾大学図書館「空海と密教の典籍」、神奈川県立金沢文庫「唐物」鑑賞記

12月14日、会議出席のため早朝から東京へ出立し護国寺へ。お昼までで会議が終了したので、永青文庫・斯道文庫・金沢文庫と文庫巡り。

永青文庫
 熊本大学永青文庫研究センター設立10周年記念 細川家と「天下泰平」-関ヶ原からの40年-
(12月9日~1月28日)

 細川家文書を活用して、藤孝・忠興・忠利の細川三代における戦乱から治世への転換期の動向を提示。細川忠興像、細川忠利像や、当主と家臣・家臣団との関わりを示す古文書、島原・天草一揆関係の古文書など、熊本大学永青文庫研究センターにおける着実な研究成果の報告展。慶長10年細川忠利自筆血判起請文(道家伝三郎宛)は那智山の牛王宝印を使用。季刊永青文庫第100号(30ページ、300円)に展示概要あり。平成27年度の「細川家起請文の世界」展の図録がこのたび発行されており(56ページ、1500円)購入。

慶應義塾大学図書館展示室
 センチュリー文化財団寄託品展覧会 空海と密教の典籍
(11月13日~12月15日)

 慶應義塾大学斯道文庫に寄託されるセンチュリー文化財団の資料から、真言密教に関係するものを、中世資料を中心に紹介。南北朝時代の恵果像、室町時代の弘法大師像のほか、弘法大師請来目録(天文4年、高野山往生院二階堂にて書写)、金剛三昧院伝来(か)の秘密曼荼羅十住心論(高野版)、善集院伝来(か)の性霊集(享禄2年、小田原中生院書写)など、高野山関係資料が充実。工芸品では把手の部分に四方に仏面を配した五鈷鈴が珍しいもの。第2会場のアートセンターでの展示は既に会期終了で見逃す。図録あり(26ページ、無料)。

神奈川県立金沢文庫
 特別展 唐物-中生鎌倉文化を彩る海の恩恵-
(11月3日~1月8日)

 鎌倉時代における中国憧憬とその文化の伝播、受容の諸相を、称名寺聖教・金沢文庫文書から浮かび上がらせるとともに、大陸よりもたらされた輸入品である「唐物」を実資料により紹介。称名寺・円覚寺・清浄光寺・神奈川歴博の青磁群(南宋~元)、清雲寺観音菩薩坐像(南宋)、泉涌寺月蓋長者立像・韋駄天立像(南宋)、称名寺陸信忠筆十王図(元)、建長寺白衣観音像(元)、円覚寺五百羅漢像(元)など。もう一つのテーマとして、入唐僧恵蕚(えがく)と普陀山に注目。恵蕚書写本により校正された金沢文庫旧蔵白氏文集(三井記念文庫美術館蔵)を示しつつ、恵蕚が創始した聖地普陀山と東アジアに広汎に展開した普陀山観音の伝播という観点で、請来観音像を定位する。称名寺伝来の明代の画軸が、まさにその普陀山内(舟山群島龍樹庵)に伝来した普陀山観音像と判明したのも貴重。図録あり(152ページ、1800円)。

島根県立古代出雲歴史博物館特別展「島根の仏像」鑑賞記

11月30日、担当特別展の展示替え期間ながら、順調に作業を進めて奇跡の中休みを確保して、出雲へと向かう。

島根県立古代出雲歴史博物館
 特別展 島根の仏像-平安時代のほとけ・人・祈り-
(10月20日~12月4日)

 島根県内に伝来する特色ある平安時代彫像を集約して公開する。清水寺十一面観音立像(9c)、萬福寺(大寺薬師)薬師如来坐像・四天王立像、佛谷寺薬師如来坐像・菩薩立像、禅定寺聖観音立像・阿弥陀三尊像などの9~10世紀彫像を極力地域史の中に位置づけつつ、曖昧な「出雲様式」の枠組みに押し込めずに関連諸像との比較の中で特徴を抽出する態度を徹底。新資料として、雲南市長安寺の引き締まった体躯の十一面観音坐像と、古様な髻と華麗な冠繒(右手分は後補)が特徴の菩薩坐像、出雲市日藏寺の像の大半を一木より木取りする十一面観音立像、華麗な宝冠を体幹部と同木から彫出する大日如来坐像など、近年の着実な調査成果も提示。金剛寺馬頭観音坐像、華蔵寺薬師如来坐像など平安時代後期彫像も多数。ほか神像では、高い髻と襟を立てた衣の萬福寺老僧神坐像(10~11c)と拱手した法体の櫛代賀姫神社僧形神坐像がともに法量も大きく重要な作例。図録あり(190ページ、1944円)。側面や背面の図版も極力掲載していて重要な研究資料となるもの。
 帰りに安来清水寺に立ち寄ってご参拝。

茶道資料館 「仏教儀礼と茶」鑑賞記

11月23日、京都での仕事の後、茶道資料館に駆け込む。閉館時間が早く、滑り込みセーフ。

茶道資料館
 特別展 仏教儀礼と茶―仙薬からはじまった―
(10月3日~12月3日)

 仙薬としての茶の役割とそれが受容される仏教儀礼の場に着目して資料を集める。星宿に除災や長寿を祈る北斗法では祭壇上に茶と菓が献じられることを北斗曼荼羅や聖教類から提示し、また中国・天台山における羅漢信仰と山中の石橋での羅漢への呈茶について宋元代のものを初めとする羅漢図や古記録から示すなど、中国における「茶」のパワーの重視とその文化の流入期のようす、信仰との関わりについて認識を新たにする。東京国立博物館三宝絵詞(国宝)、大徳寺五百羅漢図(重文)、個人像上堂図、東福寺参天台五臺山記(重文)など。図録あり(116ページ、2160円)。

大津市歴史博物館「大津の都と白鳳寺院」鑑賞記

11月15日
大津市歴史博物館
 遷都1350年記念企画展 大津の都と白鳳寺院
(10月7日~11月19日)

 天智天皇6年(667)に建都された大津京の姿と仏教との深い関わりを、主に出土した瓦と塑像断片から紹介するとともに、当該時期とその前後に渡る日本・中国・朝鮮半島の塼仏・金銅仏の優品を集約して、白鳳期仏教美術の特徴を浮かび上がらせる。崇福寺・南滋賀町廃寺・穴太廃寺等の出土資料とともに、塑像・塼仏の比較のため川原寺・山田寺・橘寺・二光寺廃寺・夏見廃寺出土資料等もずらり紹介。金銅仏では、注目の妙傳寺如意輪観音半跏像、東博小倉コレクションの菩薩半跏像、四天王寺の誕生釈迦仏など朝鮮半島の作例、東京芸大菩薩立像、焼損痕のある四天王寺菩薩半跏像、岡寺菩薩半跏像、那智経塚出土の金銅仏群などの白鳳時代の作例がずらり。感嘆。図録あり(160ページ、1800円)。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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