備忘のための読書記録、2011年4月分。学術論文は除く。発行年月日は初版のもの。小山聡子『護法童子信仰の研究』(自照社出版、2003年10月) 「童子信仰は、末法思想を歴史的な背景として隆盛に赴いた。本書で指摘したように、童子は、平安中期から末期にかけて、貴族だけではなく一般庶民によっても信仰されていたのである。」(211頁)野本寛一『神と自然の景観論―信仰環境を読む』(講談社、2006年7月) 「かつて熊野川の吐...
高野山霊宝館・企画展 宝を護れ!―大正時代の保存プロジェクト―(4月29日~7月10日) 大正10年(1921)に高野山内の宝物を保存し展観する施設として開館した高野山霊宝館がいかに作られたのか、関連資料を網羅して明らかにする。根津嘉一郎、益田孝、上野理一、渋沢栄一、高橋是清、馬越恭平、団琢磨、原三渓、村井吉兵衛、松方幸次郎、野崎広太、高橋義雄など蒼々たる発起人の名を見るだけでうなる。ほか歴史学者では黒板勝美...
本像は、海上交通と密接な関係をもつ北部九州の在地的な如意輪観音の信仰を具体的に知ることのできる好例であり、九州や瀬戸内においてしばしば残る十三、四世紀に制作された如意輪観音像の意味を考えるうえでも新たな視点を提示するものと言えよう。(12ページ)末吉武史「宗像市・承福寺の建武年銘如意輪観音像」(『福岡市博物館研究紀要』21、2011年3月)本像が建武元年に制作された本格的な作例であり、鎌倉後期から南北朝時...
2011年度博物館経営論(於帝塚山大学)アンケートの2回目は、「学芸員に必要な○○力はなんですか?」。回答が重なるものもありますが、一人分づつ回答の50音順に全て提示します。・エンターテイメント力が必要。いろんな人に自分の知識を教えるのに普通のやり方ではダメ。人によって教え方を変える力が必要。例えばでんじろう先生や池上さんなど、ただ知識を披露すればいいてもんじゃない。・学芸員には知識力もいるが、展示力、...
恒例の博物館経営論の講義(於帝塚山大学)でのアンケートを2011年度も行い、ブログ上で公開します。第1回「あなたは博物館・美術館に何を求めますか?」(回答50音順)・感動・詳しさ、見やすさ・見学したあと、満足して帰れること。・作品の見やすさ。作品と作品の距離。・様々な人が興味を持てるようないろいろな視点からみたエンターテイメント性があればよいと思う。・品物がどういうものなのか分かるような説明。・自分の趣...
2011年4月10日、中津川行者堂(和歌山県紀の川市中津川)で、聖護院による採灯大護摩供が勤修されました。ここは、葛城修験の中胎とよばれ、葛城灌頂もここで行われる重要な場所です。五鬼とよばれる行者に奉仕する家も健在です。 朝、粉河寺を出立した聖護院の一行は、いったん行者堂に参集し、直ちに葛城修験の第七経塚に登り、戻ると中津川の熊野神社、行者堂と巡拝・読経して、行者堂前広場で大護摩供を行いました。 今年は...
金峯山寺・春の特別展 寺宝にみる金峯山の信仰(3月26日~5月8日) アタマを修験に切り替えるため、まだまばらな咲き具合の吉野山に登り、金峯山寺参詣。境内では採灯護摩の準備中。蔵王堂後方の本地堂で開催中の同展を拝観。重文・千手観音像は坐像の姿に描いた鎌倉時代の一幅。南北朝~室町期の吉野曼荼羅2幅、室町期の役行者前鬼後鬼像が絹目も見えるほど間近に露出展示。ほか蔵王権現鏡像(重文)や三昧耶五鈷鈴(重文)...
滋賀県立安土城考古博物館・企画展 近江の観音像と西国三十三所観音巡礼(2月11日~4月3日) 滋賀県の観音像の優品と、三十三所巡礼に関係する考古・歴史・民俗資料の二本立てで展示。こういう構成になったのは、図録概説にもあるように、もと考古学の展示として企画されたが担当者異動で美術史の展示となったことによる。こういう事態、全国でも多いと思う。異動は計画的に。そういった事情はあっても、会場の真ん中に屹立す...