読書記録、2011年10月分。論文は除く。発行年月日は初版のもの。内田樹『レヴィナスと愛の現象学』(文藝春秋、2011年9月)「正義と慈愛、「語ること」と「語られること」、全体性と無限、超越と内在、男性と女性…人間性の条件とは、まさしく「一でありつつ二である」こと、引き裂かれていることによって、知性と自由を確保する困難な選択のうちに存するのである。」(352ページ)ロラン・バルト著、森本和夫・林好雄訳註『エクリ...
国立民族学博物館で、10月29日、30日の両日にかけて開催された公開シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムの理論と実践-博物館から始まる「手学問のすゝめ」-」に参加してきました。 シンポの趣旨は次の通り。 科学研究費プロジェクト「誰もが楽しめる博物館を創造する実践的研究」(通称「ユニバーサル・ミュージアム研究会」)は、09年度から各地のミュージアムで研究集会とワークショップを開催してきた。このシンポジ...
岡山県立博物館・特別展 法然上人と岡山(10月7日~11月13日) 開館40周年事業として、美作国稲岡荘に漆間時国の子として生まれた法然について取り上げる。前半は知恩院本法然上人絵伝(国宝)や当麻寺奥院本の法然上人行状絵巻(重文)など縁起を利用して法然の生涯を紹介し、後半は浄土教美術という枠組みで優品を集め、最後に法然生誕地に創建された誕生寺の文化財を集める。 近年見出された知恩寺阿弥陀如来立像は作風から...
大津市歴史博物館・特別展 神仏います近江 日吉の神と祭(10月8日~11月23日) 大津市歴史博物館・滋賀県立近代美術館・MIHO MUSEUMの3館が、各館の特色を活かしながらテーマ設定し、会期を重ね合わせ、共通の分厚い図録(512ページ!、2400円)を編集して開催。 大津歴博(大津会場)では日吉神を基軸に神像・神祭りの種々相を提示。展示室冒頭では、展示台と壁面を落ち着いた赤色で大胆に彩り、そこにずらりと並び居る神像...
「八幡神の要求に応えて、清麻呂が建てた寺が神願寺であった。この八幡神の要求は、実は「仏力をもって神威を増す」という神仏習合の一類型として理解されるものであり、まさに神威を増すための仏としてつくられたのが本像であった。すなわち本像は、平安時代初期における神仏習合の一つのあり方を示す貴重な作例として、位置づけ直されるべきものである。」(131-132頁)皿井舞「神護寺薬師如来像の史的考察」(『美術研究』403、...
「美術研究本「本朝大仏師正統系図并末流」は、あくまで康祐側の立場からみた系図であり、康祐、二十七代康伝、二十八代康伝までの系譜は、それまでの康猶や康音、康知、康乗に至る「七条左京」家の系譜とは別系統であることが説明できた。原本が行方不明であるために時々に系譜を書き継いだ仏師が誰であるのか判断できないが、康祐を「中興開基」とし、康伝の生没年を記さないことで、まさに「正統系図」となした事情が理解できよ...
奈良県立万葉文化館・開館10周年記念特別展 大飛鳥展(10月1日~11月13日) 同館の10周年記念の展覧会で、飛鳥時代の仏像や文化財を多数集めるとともに、明日香村内の仏像・仏画を集める。主な出陳資料を列記すれば、堺市博観音菩薩立像、藤井斉成会有鄰館の貞観13年(639)銘仏坐像、白鶴美の金堂五尊板仏、向原寺の観音菩薩立像(かつて盗難被害を受け、昨年発見されたもので、頭部のみ飛鳥時代)、法隆寺の夢違観音、金堂木...