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なぜ展覧会を開催するか

 展覧会開催の主たる目的を仮に「集客」とすれば、対応は難しくない。1、知名度のある素材、2、明快なテーマ、3、広報力強化の三つの要素で充分。事実、不本意ながらも入館者と歳入増加を厳しく課せられた諸館では、この「三原則」を忠実に履行することで、一定の成果を上げている。では、展覧会の主たる目的が「集客」と言い切れるケースはどのようなものがあるか。例えばデパートで開催される展覧会は、その事例と言える。集客することで商品の販売を誘因するという目的が明確だからだ。言い換えれば、より高次の目的のための集客装置であると言える。
 翻って、先の三原則方式で展覧会を開催している諸館ではどうか。それらでは「集客」したあとのさらに高次の目的をどこまで提供できているだろうか。来館者の視線からすれば、高い入館料を払って展示を見にきた客に最終的に提示されるのは、時として、会場の一角を占める特設のグッズ販売所で何か買ってねというメッセージであり、実はデパートと同じ経営モデルであると錯覚しかねない場合がある。
 独立行政法人化・指定管理者制度の導入によるミュージアムの市場化のつけは、結局利用者に回された(入館料・図録・音声ガイド機の利用で一人およそ4?5000円に達するケースもでてきた)。ミュージアムの市場化とは、たやすく「集客」を自己目的化させることであり、博物館資料や文化財を消費の場に提供することである。言うまでもなくこの経営モデルでは、展示資料は主役のような顔をして並んでいるが、実は脇役であるところにねじれがある(主役は貨幣の運動)。いや、極言すれば脇役でもよい。より高次の目的が、文化財など資料を正しく包括するものであれば。
 最前線で(駒として)働く学芸員・専門職員に何ができるか。まずは「集客装置」としての展覧会自体に、高次の目的である資料を守ることの理念・ミュージアムの存在意義を、来館者に共感してもらうためにアピールとして盛り込むこと。そして代価に対するサービスの提供という発想ではない、資料を万人が共有するための方法を講じるという、これも高次の目的を達成しようとすること。まずはこの2点が重要になるのではないか。
 ミュージアムが誰にとって必要な施設なのか、自らの立ち位置を明確にすることで、おのずと見えてくる答えがある。
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コメント

[C1]

博物館は、それぞれの地域の歴史・文化財の保存と研究の場でもあったはずなのですが。
なかなかそういう業務は出来なくなりりつつあるのでしょうか。
収益の出ない活動でも大事なことはあるはずなのですが、、、
客の寄せられる文化財=護るべき文化財という構図が出来てきそうで心配です。
  • 2007-12-11 09:42
  • もくじき
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[C2]

祝ブログ開設!
これからはブログ仲間?ですね

[C3]

もくじき様
もちろん、地域の中にきちんと足場を築いている博物館はたくさんありますので、ご安心を。
何万人、何十万人の来館者をよぶ展覧会であることが「成功」であるというイメージが形成されつつあるのは、ミュージアム業界にとっても得策ではないと思います。利用者の立場に立てば、多様な展覧会をさまざまに選ぶことができる、ということが大事なのだろうと考えています。ミュージアム群による多様性の提供、というキーワードになるでしょうか。

Sea様
ありがとうございます。展覧会評、いつも拝見しています。ブログでどんな情報を発信していくか、五里霧中ですが、本家サイト同様、皆さんのお役に立つものでありたいと思います。
  • 2007-12-11 22:06
  • ookouchitomoyuki
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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