今年一年を振り返って、印象に残っている展覧会を列記します。
滋賀県立琵琶湖文化館 琵琶湖文化館収蔵品特別公開 近江の美術 第3期 仏教美術の精華(3月4日?3月30日)
東京国立博物館 国宝 薬師寺展(3月25日?6月8日)
大阪市立美術館 特別展 聖徳太子ゆかりの名宝―河内三太子 叡福寺・野中寺・大聖将軍寺―(4月26日?6月8日)
奈良県立美術館 特別陳列 庶民の祈り 志水文庫 江戸時代の仏教・神道版画(6月7日?7月27日)
奈良国立博物館 特別展 西国三十三所―観音霊場の祈りと美―(8月1日?9月28日)
大津市歴史博物館 企画展 石山寺と湖南の仏像―近江と南都を結ぶ仏の道―(7月13日?8月24日)
元興寺総合収蔵庫 特別展 近世律師の肖像―その姿とこころ―(10月26日?11月9日)
島根県立古代出雲歴史博物館 企画展 秘仏への旅―出雲・石見の観音巡礼―(10月4日?11月30日)
兵庫県立歴史博物館 特別展 ふるさとの神々―祝祭の空間と美の伝統―(10月18日?12月7日)
栗東歴史民俗博物館 特別展 創造と継承―寺院復興―(11月1日?12月7日)
山口県立美術館 特別展 運慶流―鎌倉・南北朝期の仏像と蒙古襲来―(11月11日?12月21日)
大阪市立美術館 智証大師帰朝1150年 特別展 国宝 三井寺展(11月1日?12月14日)
名宝展(出開帳展)の開催は、大型で集客の見込める館に固定化されているだけに、自分の職場のことも考えると、やはり地域に残された文化財から地域の歴史や文化を読み解こうとする展示に、シンパシーを感じます。
それぞれの展示のコンセプトやターゲットが違うので順位の付けようがありませんが、思い切って3つを選ぶとすれば、「創造と継承―寺院復興―」(栗東歴史民俗博物館)、「近世律師の肖像―その姿とこころ―」(元興寺総合収蔵庫)、「運慶流―鎌倉・南北朝期の仏像と蒙古襲来―」(山口県立美術館)。
「創造と継承」は文化財はいかに造られ、いかに残されるのかという問題に着眼。我々はモノを語るとき、往々にして始まりのことばかりを取り上げますが、実は重層的な歴史を物語ることにも意を払わなければならないでしょう。共感するものがあります。
「近世律師の肖像」は中世の戒律復興に対してあまり知られていない近世の戒律復興に着眼。それら律師の系譜とともに多数の肖像があることを知りました。一部の律師の存在は知っていましたが、その知の体系に初めて触れることができました。未知の知に足を踏み入れた喜びがあります。
「運慶流」は、鎌倉後期?南北朝時代の慶派仏師の仏像が西国に多くある理由を、元寇(モンゴル襲来)と結びつけて提示。仏像があることの理由を東アジア世界の大きなうねりのなかで語ることができる、その可能性を感じることができました。
そしてこの一年、私が関わった和歌山県立博物館の展覧会。
企画展「高僧のすがた―きのくにゆかりの僧侶たち―」(2月16日?3月16日)
企画展「奇跡の仮面、大集合!―紀州東照宮・和歌祭の面掛行列―」(7月19日?8月31日)
特別展「没後400年 木食応其―秀吉から高野山を救った僧―」(10月18日?11月24日)<副担当>
マイミュージアムギャラリー「かざりの美―母の愛した装飾品―]」(1月19日?4月11日)
マイミュージアムギャラリー「思い出はカメラとともに(前篇)」(4月12日?6月6日)
マイミュージアムギャラリー「思い出はカメラとともに(後篇)」(6月7日?8月6日)
マイミュージアムギャラリー「博物館の思い出?―青岸渡寺大日如来坐像の複製―」(10月25日?12月12日)
マイミュージアムギャラリー「赤岸鎮の石―弘法大師の踏みし足跡―」(12月13日?2月13日)
展覧会では、既知の情報だけでなく、準備を通して獲得したダイナミックで新鮮な情報のつながりを提示できる時がありますし、そんな時は自分の知の枠組みも大きく広がったという充実感を得られます。そういった意味で、展覧会を開催するということは、造る側にとっても未知との遭遇であるといえるでしょう。
来年も展示を見る側、造る側、その両方でたくさんの「未知との遭遇」があることを確信しています。
→
【観仏三昧―仏像と文化財の情報ページ―】
スポンサーサイト
コメントの投稿