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平成20年度美術館等運営研究協議会(と展覧会鑑賞)

 2月12日・13日の両日に、奈良国立博物館を会場に開催された文化庁主催の平成20年度美術館等運営研究協議会に参加してきました。
 今年のテーマは「ミュージアムと市民サポート」ということで、MUSEUMをサポートする市民、市民をサポートするMUSEUMという、双方的な市民サポートのありかたを巡って初日には5つの事例を拝聴しましたので、その概要を記し、少しでもその成果を共有できればと思います(とはいえ、あくまで私の視点による要約・感想です。当然文責は当方にあります。)。
 吹田市立博物館長小山修三氏の「市民に開かれた博物館―吹田市立博物館の試み―」は、市民参画によって開催された「千里ニュータウン展」での試みの紹介を中心に、市民の視点に立ったときにMUSEUMが観客に強いる制約や、MUSEUMの弱点が見えてくるという、視点の切り替えを促してくれる内容。ブログの有効利用のススメ(スピード・双方向性・記録性・マーケットリサーチ)も、共感。
 たつの市立龍野歴史文化資料館学芸員市村高規氏の「市民とともに地域の賑わいを」は、文化庁の芸術拠点形成事業を活用して、城下町龍野において、町中で協賛者をつのってひな飾りを飾り付けるフィールドミュージアムを開催し、かつ関連事業をボランティアスタッフや諸団体とともに行った事例報告。高齢者の多い実行委員会の世代交代と自立が課題とのことで、どこでも同様の問題があるだろうと、納得。
 那須塩原市那須野が原博物館長金井忠夫氏の「地域文化と市民活動―地域を見つめ・地域を創る―」は、那須野が原博物館に関わる地域の中の市民団体が、ミュージアムフレンズなすのや学校支援ボランティアの石ぐら会など11団体もあり、その団体との協同によって市民による市民のサポートが実践されている事例を拝聴。博物館が市民の活動の場として機能している好例。博物館協議会が年5?6回開かれて事業の見直しや成果の検討がなされているという点も重要。
 三重県立美術館副館長毛利伊知郎氏の「三重県立美術館と関連の市民組織」では、三重県美の支援団体としてのボランティア組織「欅の会」、友の会、美術館協力会、岡田文化財団との関係性と活動実体の報告。最も身近にある市民の眼は館にとってよい緊張を生んでいるが、やはり、メンバーの世代交代や中心となる人材不足がネックとなっているとのこと。
 徳川美術館企画情報部部長小池富雄氏の「市民のサポートを得て」は、同館の展示解説や土曜こども教室などさまざまな教育普及活動の実際と、それに携わる300名を超えるボランティアの受け入れ制度と緻密な研修の状況を拝聴。ボランティアに応募し参加する市民が、ここでの活動を誇りに思っているだろうことも、想像されました。なお、同館は大学メンバーシップ制度を最初に発案し行った館であり、現在21大学が制度に加わっているとのこと。
 奈良国立博物館西山厚学芸部長の「奈良国立博物館とこどもたち」は、同館が奈良市教育委員会ほかと進めている世界遺産学習の実践事例を拝聴。8世紀の奈良が現在ともつながっているということを実感させるための講座の実演を聞き、「語り」と「物語」の重要性を再認識。歴史的事実を羅列する堅実さに寄りかからず、歴史的事実の蓄積を切り口に物事の見方を考えるきっかけを提供するスタンスに共感。
 それぞれ、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 そんな協議会の合間には展覧会鑑賞も。
奈良国立博物館
・特別陳列 お水取り
(2月7日?3月15日)
 初日の昼休みに鑑賞。恒例のお水取り展。二月堂再建に際して作られた大きな指図や古文書、典籍類が充実。読経の音声がちょっと音飛びしていた。図録あり(80頁・1000円)。常設展では仏画が充実。ケース狭しとぎっしり涅槃図の優品が並ぶ。涅槃講式も数種展示していて、特集陳列などと銘打ってもよいぐらい。本館では特集展示「とてもよく似た二つの仏像―金峯山寺の釈迦如来像と兵庫県所蔵の天部像―」(1月14日?5月17日)を開催。平安時代前期の作例で、同一仏師といい得る事例が紹介されたことは重要。

春日大社宝物殿
・神道美術の華 春日曼荼羅と鹿の名品
(1月15日?3月29日)
 2日目、協議会終了後急いで宝物殿へ。春日大社所蔵の春日曼荼羅の諸本を展示。鎌倉時代の春日社寺曼荼羅は、肉眼ではほとんど図様をみることができないが、赤外線写真をあわせて展示。確かに古様を示す。南円堂本尊の下に弁財天があるように見える・・。掛仏や鏡像も展示。図録なし。

興福寺国宝館
 国宝館にも立ち寄る。阿修羅展の前に阿修羅像を見ておこうかな、と。でも結局、元山田寺本尊の、国宝仏頭(7c)の前にずっといましたとさ。「精神性の高さ」という用語は限定的に使わなければいけないと自分を戒めつつ、その造形美に心を研ぎ澄ます一日の終わり。翌日の桃山時代彫刻についての研究報告(於奈良学学会例会)を一時忘れながら。

【観仏三昧―仏像と文化財の情報ページ―】

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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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