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展覧会・文化財を見てきました(2009年4月18日)

長野県信濃美術館
善光寺御開帳記念 “いのり”のかたち 善光寺信仰展
(4月4日?5月31日)
 善光寺開帳を記念し、善光寺式阿弥陀三尊像を多数集めるほか、長野県内の仏像をうまく関連づけて展示(古代の仏像、霊験仏、善光寺仏師の仏像という枠で)。ドイツ・リンデン民族学博物館の善光寺式阿弥陀三尊像は、開帳している御前立本尊(重文)と酷似する像。脇にお前立ち本尊像の拡大パネルあり。観松院菩薩半跏像(重文、?5/10)、清水寺観音菩薩立像(重文、?5/6)のほか、東大寺俊乗堂の快慶作阿弥陀如来立像(重文)を、善光寺で新発見された快慶様式の阿弥陀像との関わりで出陳され、有意義。善光寺仏師による鎌倉時代の仏像もおもしろいもの。なお、県立歴史館の特別展と善光寺式阿弥陀像ほかの重要作例が一部かぶっているが、4月4日?4月9日の間だけの展示という力技のほか、会期の前後半で交換という手法をとった模様。御開帳という「非常事態」ですから、こういうこともあるでしょうし、善光寺脇の信濃美術館でいろいろな作例が見られることは意義があるものと思う。それだけに、普段の客層とは異なるはずなので、作品の芸術的意義と、その作品の歴史的意義(縁起といってもよい)を接続させるための解説文が個々にあってもよかったのでは、と思う。図録あり(144頁・2000円)。

善光寺・善光寺史料館
 善光寺の内陣拝観は恐ろしいほどの行列なので、外陣から参拝(行列なし)。それでも十分阿弥陀三尊像のようすはうかがえる。さっき大きなパネルで細部まで見たことだし。拝観後、善光寺史料館で、近時東京芸大で調査・修理された、快慶様式の阿弥陀如来立像を拝観。確かに快慶風(後期の)。さっき東大寺像を見たことだし。史料館には他にも平安?近代の仏像多数。

大勧進宝物館
 続いて大勧進宝物館も拝観。平安仏も少しあるほか、諸種の奉納品が、ある種文化財級の古い展示ケースに収まる。勧進所の機能的側面は近代期の早い段階で常設の宝物展観所の設営につながったのでは、と妄想する。「近代期の寺社における宝物展観所の歴史的研究」って、近代史・宗教史・美術史・国文学・建築史等の複合した研究テーマになりそうだ。博覧会ともリンクするのだろう。

長野市立博物館
特別展 女たちと善光寺
(4月4日?5月31日)
 善光寺如来による女人救済譚に着目し、善光寺と女性という枠組みで展示を構成する。善光寺式阿弥陀三尊像は、千葉・清光寺像(正安2年(1300)銘)、千葉・東陽寺像(永享4年(1432)銘)、群馬・青蓮寺像(重文)を展示。青蓮寺像は極めて精巧な鎌倉時代の作例。善光寺と直接関係ないが「中世の女性たち」の枠組みで和歌山・熊野速玉大社古神宝(国宝)や神奈川・光明寺大麻曼荼羅縁起絵巻(国宝)、神奈川・正念寺熊野権現影向図などを展示。また女人救済の枠組みで、千葉・正泉寺の熊野観心十界図や血盆経、血盆経縁起などをまとまって展観できたのは貴重。図録あり(102頁・1500円)

長野県立歴史館
企画展 善光寺信仰―流転と遍歴の勧化―
(4月11日?6月7日)
 善光寺の歴史を流転・遍歴・勧化いう観点からみる。善光寺式阿弥陀の展示は、同じ型を用いたと想定されるものに特化して集約していて、テーマ性が明確。和歌山・不動院像(重文)、長野・庄内町善光寺像、長野・個人と庄内町万部落、真岡市荘厳寺の分蔵像を並べたり、東京国立博物館の建長6年(1254)銘三尊像と、長野・筑北村八木区像(建治元年(1275)銘、鉄仏)、長野・羽生市天宗寺像(鉄仏)、長野・行田市龍高寺像、長野・喜多方市熊野神社像が並ぶ様に、知的好奇心を喚起される。一見の価値あり。甲斐善光寺の豊臣秀吉朱印状は、甲斐に移動してた善光寺本尊像を京都東山大仏殿(方広寺)の本尊とするために遷座することを命じた内容。実物を見られてうれしい。時宗本山清浄光寺の重要資料がまとまって展示されるが、一遍聖絵(国宝)、現品展示のはずがレプリカで、かつ現品の展示期間がどこにも提示されておらず困惑。序盤、考古資料で長野と朝鮮半島との関わりを示す部分は蛇足のようにも思えたが、所蔵資料の活用ということが大事な事もよくわかる。図録あり(84頁・1000円)。

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[T6] 長野県信濃美術館

長野県長野市箱清水1-4-4 (善光寺東隣) http://www.npsam.

[T7] 長野県立歴史館

長野県千曲市大字屋代字清水 科野の里歴史公園内 http://www.npmh.

[T8] 長野市立博物館

長野県長野市小島田町八幡原史跡公園内 http://www.city.nagan

コメント

[C46]

週末に善光寺参りに出かけ、市立博物館以外の展示を観て参りました。

>一遍聖絵(国宝)、現品展示のずがレプリカで、かつ現品の展示期間がどこにも提示されておらず困惑。
4月24日から5月6日に原本(第1巻)展示でした。
たしかにどこにも表示されていません。
知人は県立歴史館に電話で問い合わせて、ずいぶん待たされてこの展示日程を教えていただいたそうです。
人手が足らないなど、いろいろ事情があるのかもしれません。
  • 2009-04-27 12:07
  • ひえのやま
  • URL
  • 編集

[C47]

お返事が遅れてしまいました。
そうですか、連休中だけの展示だったんですね。お教えいただきありがとうございました。
ひえのやまさんのブログ、また拝見させていただきます。
  • 2009-05-02 20:03
  • tomoyuki ookouchi
  • URL
  • 編集

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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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