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四国ミュージアム研究会参加

2月24日、徳島県板野郡松茂町・月見ヶ丘海浜公園ビジターセンターで開催された第4回四国ミュージアム研究会に参加。香川県歴史博物館学芸員御厨義道氏、徳島県立博物館長谷川賢二氏、松茂町歴史民俗資料館・人形浄瑠璃芝居資料館学芸員松下師一氏の各報告を拝聴。

 御厨報告は、香川県立歴史博物館の展示の大きな特徴である部門展示(「松平家歴史資料」「水とくらし」「空海」「宗教文化」「産業と技術」の各部屋を設けて短期間に展示内容を入れ替える)の意義について。平成11年11月の開館以来、平成19年度末までで138本の展示を構築。来館者へは新鮮な展示を常に提供でき、また学芸員にとっては各種資料ときちんと対峙する機会として、実験的な展示手法の導入を行う場として機能しているとのこと。
 私の勤務する和歌山県立博物館では年間に特別展・企画展を8?9本行うが(秋期特別展は全館規模1200平方メートル、他は企画展示室400平方メートル)、展示・イベント等コンテンツの充実は来館者の満足度の高さに直接つながる要素である。多くの展示があることは上記御厨報告で挙げられた意義に付け加えて、広報資源の増加に直結することをウェブサイト等広報も担当する学芸員としては強調したい。一つより二つ、二つより三つと、複合的な広報内容を用意することではじめて、来館への動機につながる。

 長谷川報告は、長年検討されている徳島県立博物館の常設展示リニューアル計画を通して、博物館展示の本質を考えるもの。総合博物館である徳島県博の特徴を活かして、人文系・自然系を融合させた展示の可能性を探っておられるとのこと。通史展示の是非もある中、いったんは通史展示自体の撤廃も検討された上で、現在は社会生活史的な柱を持たせた通史展示へと収斂された構想に至っているとのこと。
 私自身は、ものごとを通史的に考えるということ自体が、「人間性」の本質につながることだと考えている。赤ん坊が、成長する中で「時間」の概念を獲得していく過程はかなり複雑だと思う。人が体験し実感できる「時間」は過去から現在への流れであり(短いスパンでは、自分の記憶と現在の間の時間。先祖崇拝だって時間性の獲得と無関係ではないと思う)、それによって獲得した時間の概念がなければ、未来への志向性も獲得できない。ヒトがヒトたりえるのは時間の概念の獲得によってであり、それにより「今」だけの刹那的存在であるその他の動物と区別される(ゆえに刹那的なヒトも存在する)。文化財を守ることや、地域の歴史を守ること、またそういった機能を担う博物館の存在意義は、ヒトの中に時間軸を構築するところにあるのではないかと、最近考えている。

 松下報告は、町立博物館がいかに特色を持たせ、来館者に「生の感動」を味わってもらうか、人形浄瑠璃のライブや学校対応での事例などから検討。また古くなった常設展示の映像機器をいかに新しいものに更新しているかについても報告され、参考となった。小規模館においては、人員の不足の面からも展示の頻繁な更新は難しいが、博物館という空間の魅力作り(展示室内での学習会や講演会、芸能催行)に工夫を凝らす方向性を追求されている。
 展示更新による活性化←→展示空間の魅力作りによる活性化は、どちらも対立せず相互補完される。こういった図式を自分の中で意識することができ、大変有益であった。

 なお、香川県立歴史博物館は、新年度から香川県文化会館の近現代美術資料を引き継いで、香川県立ミュージアムに改組するとのこと。ミュージアム業界はいたるところで激動の渦中にあり、学芸員は振り回されている。ただ、厳しい状況に陥った場合でも、それで博物館活動が不活性化してしまうことによる本当の被害者は市民である。学芸員は展示や活動を通して、博物館の存在意義を声を大きくして伝えていかねばならないと、改めて自覚する。

観仏三昧―仏像と文化財の情報ページ―
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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