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「私たちが考える博物館・美術館職員の職業倫理規定」

 日本では、博物館・美術館職員の職業倫理規定に相当するものは、現在のところ作られていません。博物館・美術館で働く職員が守るべき倫理基準は、現状、「個々人の常識」・「業界の常識」・「母胎となる組織の規定」等で運用されている状況といえるかと思います。
 しかし世界に目をむければ、国際博物館会議(ICOM)の職業倫理規定があり、微に入り細に入る規定が提言されています。国内でも、日本図書館協会が図書館員の倫理要項を作成し、また倫理の問題に常に直面する病院でも倫理規定は作られています。
 博物館・美術館を運営する職員がいったいいかなる活動基準を持つべきなのか、指定管理者制度の導入や博物館法の改正、博物館施設の存続問題など、博物館・美術館を取り巻く環境が大きく変化している現在、これまで「雰囲気」でやってきたことを見直すべき時期に来ているものと思われます。
 こういった現状を踏まえて、帝塚山大学の博物館経営論受講生に、日本で初めて(^_^)の「博物館・美術館職員の職業倫理規定」を作ってもらいました。受講生それぞれに、自分が重要だと思う倫理規定を3つ程度あげてもらい、集約して、内容に合わせたインデックスを付けたものです。内容の細目は次のようになりました。
■利用者のために
■専門職員のこころがまえ
■地域との関係
■普及に努める
■博物館の基本的活動
 中には「倫理規定」という枠組みとは少し違うものも含まれていますし、内容が重複するものも含まれていますが、若干の調整をした他はあえて取捨選択をせず、出てきた意見を反映させています。

■利用者のために(50音順)
・学芸員は施設にとっても、利用者にとっても安全に公開できる場所を作る。
・サービスの向上を目的とした研修を行うこと。
・社会のニーズに応えるような展示を行うこと。
・全ての利用者が平等に知識を得、教養を高められる公共機関とする。
・全ての利用者に対して理解してもらえる、分かりやすい展示をすること。
・展示の方法を工夫し、利用者を楽しませるように努力する。
・どのような利用者でも利用できるようにすべきである。またその為に改善すべきところはすぐに改善すべきである。
・入館者への配慮に万全を期するよう努力すること。
・年齢・性別・国籍・思想・宗教等で利用者を区別することなく平等に接すること・
・博物館が開館している間はできるだけ入館者の事も考え、学芸員など特に専門的な職員を常時おいておくこと。
・博物館学芸員は利用者を差別しない。博物館は利用者を選ばず全ての人に利用されるべきである。経済的、社会的地位に関係なく、全ての利用者に資料を提供する。観覧料はできるかぎり無料にし、できない場合でも低い値段にする。
・博物館の専門職員は利用者からみて展示物がどのようなものであるか分かりやすくするべきである。また利用者に見やすく工夫していかなければならない。
・博物館は、来館者ありきの施設である。従って、来館者が楽しめるような工夫・趣向を凝らすべきである。
・博物館は利用者の意見を聞く場を設けるべきである。またそれを積極的に取り入れていくべきである。
・目安箱などの設置をし、常に利用者の意見をリアルタイムで聞き入れることができる博物館であること。
・老若男女全ての人々が見やすい展示を心がける。

■専門職員のこころがまえ(50音順)
・偽りの展示や、情報の提供をしないこと。
・己の私情をはさまないよう努め、常に第三者の視点で博物館の運営に関わること。
・学芸員、その他職員は文化財をより良く、わかりやすく利用者に伝えるということを念頭に置き、文化財と利用者をつなぐ存在だということを意識しなければならない。
・学芸員、その他職員は、高価、または貴重な文化財を狙う、奪おうとする不当な輩から、いざという時は文化財を死守せねばならない。
・学芸員は、積極的に変化を好み、開放的な姿勢で博物館に関わることが望ましい。
・学芸員は博物館で有する文化財を利用者に提供するとともに、未来に残していくために現状維持、または修復等で文化財をよりよい状態に維持することに力を注ぐこと。
・学芸員は有形、無形の文化遺産に対する責任を負い、それを社会や利用者に鑑賞、理解を促進する機会を提供する。
・研究の最先端のものを展示するように心がける。
・資料を不用意に扱わない。
・所有する収蔵品に対して、その博物館に所属する全職員が責任を持つこと。
・博物館学芸員は資料に関する情報を提供すること。
・博物館職員は、常に自分が社会に向けて文化遺産や美術品を公開する立場であることを意識し、その任務に積極的に取り組むべきである。
・博物館専門職員は活動の過程で得た知識や経験を人々に公開し、提示し、共有する努力をおこなうこと。
・博物館専門職員は専門知識を高めるための継続的研究・学習に努め、その結果を博物館運営に反映しなければならない。
・博物館で展示を行う時、知識のない人にでもわかるようなデータ説明をできるように、収蔵品などのデータはひととおり知っておくこと。
・博物館に勤めている職員はその博物館に対して、一定水準以上の知識・教養を持つべき。
・博物館を管理、経営するために必要な専門知識を全ての学芸員が持っていること、また持つように努めること。
・一つの博物館で働く学芸員に能力差が少しでもなくなるように、相互協力したり研修会を行ったりすること。
・保管物に対し常に意欲的に研究し、向上心を持って望むこと。

■地域社会との関係(50音順)
・地域社会と博物館、博物館職員の間の友好的な関係を促進するべきである。
・地域の人々にできるだけ多くの歴史や文化を正しく伝え、感じさせる事。
・博物館はその建っている地域と密接な関係を持つべきである。
・館職員は社会や利用者との相互理解を深めるほか、同業者や作家や資料を有する人物との交流も念頭に置かなければならない。

■普及に努める(50音順)
・資料に関する説明(名前・年代・利用目的等)を利用者にわかりやすく伝えるようにつとめる。子どもから大人まで、全ての利用者に理解してもらえるようにする。
・展覧会などのイベントを行う場合、より多くの人に来館してもらえるように、広報活動を行うべきである。
・博物館職員は社会全体に向けて、もっとより多くの人に美術や芸術に興味、関心をもってもらえるような宣伝・広告・案内に努めるべきである。

■博物館の基本的活動(50音順)
・一定の基準にあった保管方法で収蔵品、資料等を保管すること。
・過剰な収益活動をしないこと。
・収集した物品はそれぞれ適切な保管の仕方・扱い方を徹底する必要がある。
・収蔵品・展示物等を無断で他に渡さない。
・収蔵品や他の博物館から借りてきたものを適切に扱えるように、博物館学芸員の資格も教員の資格にならって、数年おきに研修などを受けて、一定基準に達した者のみ更新できるようにするべき。
・専門職員として学芸員をおくこと。
・展示物の保存に注意を配る。
・どの職員にも適正な労働条件を設けること。
・博物館にある資料は惜しむことなく全ての人に提供すべきである。それにより学習意欲の向上、娯楽の一環として知識を高めることを協力すべきである。また資料について知り、研究することにつとめなければならない。
・博物館は基準と法を守り、専門的に事業を行う。
・博物館は資料の収集、保存、研究、調査、展示に努める。
・博物館は収集したものをただ保管するだけでなく、なるべく全て展示するようにすべきである。

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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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