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展覧会・文化財を見てきました(2009年10月27日)

鎌倉国宝館
特別展 大本山光明寺と浄土教美術
(10月23日?11月29日)
 早朝、飛行機で関空から羽田へ飛び、朝一番で鎌倉へ。法然上人800年御忌記年展。国宝・当麻曼荼羅縁起絵巻などの光明寺の重宝が一堂に展示されているだけでなく、浄土教美術の観点から、阿弥陀如来像の優品を集める。なんといっても見所は、浄楽寺阿弥陀三尊像(重文)。文治5年(1189)、運慶の作。その溌剌とした青年相、量感あふれる立体造形に釘付けとなる。側面・背面もしっかり確認できるまたとない機会。朝一番の国宝館で、来館者もまばらな中、運慶作品をほぼ独り占めできる幸せを堪能する。三尊ともに、両手と上半身で作る彫刻空間にやや窮屈さがある点が何に起因しているのか興味深い。工房作という考え方、作風の展開という考え方などあるが、なんらかの制約があると考える視点もあるかもしれない。その他の仏像も、鎌倉初期の興味深い作例多し。関東で、運慶仏を堪能できるこの機会をお見逃しなく。図録あり(128頁、1000円)。

神奈川県立歴史博物館
特別展 鎌倉の日蓮聖人―中世人の信仰世界―
(10月17日?11月29日)
 立正安国論奏進750年記念事業。鎌倉と周辺地域の日蓮宗寺院に残される関係資料を中心に展示。日蓮像も、浄光院の日蓮聖人像(水鏡御影・重文)など多数集められている。日蓮の墨跡も多数あり参考になる。彫刻資料では、中山法華経寺の二仏并坐像(釈迦如来・多宝如来)が建武2年(1335)の作。中世の釈迦・多宝のセットを初めて見たので、大変参考になる。日蓮宗内での重層的な信仰のありかたを、地域の中に残されてきた資料を丹念に拾い上げ、さまざまなベクトルから照射する展示コンセプトはとても意義深いと思う。図録あり(192頁、1500円)。常設展示では、寄託品の宿院仏師源次の阿弥陀如来坐像を展示。ぐっとくる(もちろん、個人差があると思います)。

根津美術館
新創記念特別展第1部 新・根津美術館展―国宝那智瀧図と自然の造形―
(10月7日?11月8日)
 馬車道から渋谷、表参道へ。なんとしても、しばらく見られなかった那智瀧図を見ておかねばならないと、新館オープンした根津美術館へ向かう。平日なのに大盛況。ただ、那智瀧図前に人はほとんど滞留しないので、贅沢に鑑賞できた。照明しっかり細部まで見える明るさ。
 全ての展示資料に解説は付されていない。ただ那智瀧図の画面理解のためには、ある程度の前提知識が必要ではある。那智瀧図の前提は、瀧自体が神体であり、千手観音であると、この瀧を知るものはだれもが認識していたということ。画面上部には月が浮かぶ。月光に照らされる那智瀧。滝の下には、拝殿。その屋根を突き破って杉が生えている。生貫杉。これは滝の水の神秘の力を視覚的にイメージさせる記号。その左脇に、杉の木に沿って何か字を書いた柱が立てられている。碑伝(ひで)という、修験において聖地参詣の痕跡として建てる碑。この瀧図を見るものは、滝を神として、仏として見、その両者を結合させる存在―滝で修行する修験者・滝衆―をも喚起される。鎌倉時代後期に描かれたこの絵の享受者がいかなるものだったか、亀山上皇説が有力だが、中世の那智滝と修験という重要なテーマで研究を深めていく中で、あるいは謎に近づけるかもしれない。
 那智瀧図の一つ前に春日補陀落山曼荼羅を展示しているのは、観音の浄土・補陀落山を導く連想のためか。一つ後ろには熊野曼荼羅を展示して熊野信仰をフォロー。ということで展示コンセプトはよく分かるが、大多数の来館者が那智瀧図をちらっと見ただけで立ち去っていくのは忍びない。

大倉集古館
特別展 根来
(10月3日?12月13日)
 表参道から溜池山王へ。アメリカ大使館の横を通って大倉集古館へ。黒漆地に朱漆をかけた漆器を、一般に根来(ねごろ)と呼んでいる。和歌山の根来寺にちなむ名だが、もちろん同種の漆器は全国で作られた。中世の根来(根来塗)を多数あつめる近年になかった展示。朱漆の下に覗く黒漆になぜ心が揺さぶられるのだろうか。三輪神社伝来の平安時代の高坏は、京博所蔵のものと個人蔵の2点、大滝神社伝来の足付盥(室町時代)は別々の個人蔵2点が集められていて貴重。六地蔵寺の足付盥は展示になかったので、会期中に展示替えがあるもよう。が、出陳品リストがないので時期は不明。図録なし。夕方の飛行機で関空へ。何とか4カ所回れました。

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コメント

[C90]

浄楽寺は年に2回しか一般公開されないので楽しみにしております。

那智瀧図がメインのはずなのにおっしゃるとおり解説がなかったですね。

このブログでようやく理解できました。

有難うございました。
  • 2009-10-29 12:29
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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