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運慶の仏像、三越が落札。

 先般より話題となっていた、運慶作の可能性がとても高い大日如来坐像がクリスティーズで競売に掛けられた件、三越がアメリカの収集家と競り合って、1437万7000ドル(約14億円、手数料込み)で落札されたとのこと。このところ急激に進んだ円高が追い風だったかもしれませんね。
 日本国内に外国の文化財が大量に所有されている状況で、日本の宝を流出させることだけは絶対に避けなければならない、という論調に単純にくみするわけにはいきません。ただ、そんな小難しいことをいいながらも、三越は代理人のようですのでどうなるのかはわからないものの、国内に残ってくれたことは今後の公開の可能性があるかもしれず、そのことに素直に喜びたいと思います。

 ところで、この像のニュースに関連して多かった世間の評価は、文化庁はなぜ文化財指定しなかったのか、あるいはなぜ購入しないのか、という非難でした。ただ産経新聞などの記事によれば所有者が指定・購入ともに同意しなかったとのことで、歯がゆいかもしれませんが、文化庁に落ち度はないと思うのです。交渉の内容までわかりませんが、こういう交渉はタフですし、先方の提示した金額が予算をかけ離れていたら、お手上げになるでしょう。同意がなくとも文化財指定できてきてしまう制度がほんとうによいのか、これも慎重であるべきでしょう(指定されるということは制限されるということでもあり、所有者にとって全てがハッピーといえるものでもない)。
 また国は競売になぜ参加しないのかという批判もありましたが、税金を計画的に運用する組織が、いくらで落札されるかもわからない競売に参加するのはシステム上無理ではないでしょうか(税金なのだから、予算(上限金額)をだれでも知ることができるわけで、これでは競売には勝てない。相手は1円だけ高くつければいいだけ)。
 
 それにしても、「運慶」は現在においても多くの人びとを魅了し、また熱くさせる存在です。私自身も学生の時は、運慶にぶつかっていくためにそのお父さん(康慶)やもう一つ前の世代の研究をしていました。運慶がある種伝説化されていく中世後期・近世・近代・現代の運慶言説から読み解く日本文化史というものも、きっとおもしろい研究テーマになるでしょうね。 

追記:ちなみに、真ん中の段落の「世間の評価」は、ネット内で散見した評価や意見です。
また、当方の文化財に対する基本的なスタンスは、伝来してきた場からの「暴力的」な移動は、資料自体を歴史を失った不安定なものにしてしまう、というものです。下記の記事をご参照下さい。
なぜ文化財を守るか(観仏三昧的生活2007年12月12日記事)

追記の追記:運慶仏を購入したのは、新宗教の真如苑とのこと。展示公開を行うことも確実になりました。ルーツは真言密教だし、教祖は仏像制作を行っているし、経済力があるしで、なるほどという感じ。大団円といえるかもしれませんね(3/25)。

観仏三昧―仏像と文化財の情報ページ―
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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