滋賀県立近代美術館・生誕100年特別展 白洲正子―神と仏、自然への祈り―
(10月19日?11月21日)
白洲正子が巡り、著書で取り上げた作品を、その文章とともに並べる。お目当ては、伊賀の観菩提寺本尊十一面観音立像(重文)。六臂の姿。側面も鑑賞でき、体部は9世紀彫刻としてのオーソドックスな造形の範疇にあることを確認。それに対する頭部の威相を歴史的文脈に位置づけるためには、「森厳」「神秘的」といった印象論ではない威相の系譜の理論的な解釈が必要であることを改めて感じる。「神らしさ」はどこに現れるかが、思考の鍵か。ほか、金勝寺軍荼利明王立像(重文)、大蔵寺毘沙門天立像・地蔵菩薩立像(各重文)、岐阜日吉神社十一面観音坐像(重文)、天河神社の仮面などなど、多数の仏像・神像が並ぶ今年一番の仏教美術展でないかと思う。特殊な作りの図録あり(2500円)。
京都国立博物館・特別展覧会 高僧と袈裟―ころもを伝え こころを繋ぐ―
(10月9日?11月23日)
高僧が身につけ、重宝として伝領されてきた袈裟を多数集める。染織技法史展かと思えばさにあらず、伝法衣の文化史展として、無形の「心」をも展示している。傷みきった袈裟を開くのは、パンドラの箱を開けたようなもので、会期後も相当ご苦労があるだろうと思うが、それゆえに京博でしかなしえなかった展示。来館者は少ないようだが、京博の存在価値を自ら高める「奇跡の」展示であり、そうした歴史的な場にはぜひ立ち会ってほしい。図録あり(304ページ、2500円)。
以下は愚痴。子連れで行くと、各室で注意されいたたまれなかった。自分では大きな声は出していないつもりだったが、子への説明を騒音扱いされると、どうすればよいのかと悩む。「うるさい」というご意見を強くおっしゃるお客様への、自己防衛なのだろうとは思う。でも、せっかく古い袈裟が今日まで残されてきた理由を、子に伝えるよい機会だったのに、心が折れてしまって、妻に託して子を先に退館させた自分が一番情けない。
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