FC2ブログ

Entries

講演会「吉祥寺の三ッ目不動と童子像」

 11月23日。和歌山県有田郡有田川町粟生の地域住民で作られた、明日の粟生を考える会によばれて講演してきました。
 この会は、今年の春に和歌山県博で開催した特別展「移動する仏像」を契機に、地域に残されてきた文化・文化財を再認識し地域の活性化の方法を考えようとして作られたものです。自分の作った展覧会がそうしたかたちで地域の方々の心に届いたことは、学芸員冥利に尽きます。
 午前中から講演会会場となる吉祥寺本堂でプロジェクター等の準備をおこない、13時から吉祥寺の収蔵庫で参加者にまず仏像の解説。
吉祥寺で講演会
 続いて吉祥寺本堂に移動して講演開始。戸数約200軒の粟生地区で、80人ほどの参加者があり、町長さん、教育長さん、町会議員さんも参加頂きました。演題は「粟生に伝わった不思議な仏像―吉祥寺の三ッ目不動と童子像―」。章立ては?吉祥寺の仏像について、?三ッ目不動明王のフシギ―日本で唯一の姿―、?移動していた童子像―二体の童子像は三ッ目不動とセットだった―、?童子の意味―かつて日本では、童子は聖と俗をつなげる存在だった―、?三ッ目不動と童子像―神と仏の境界に立つ姿。
 いろいろとご質問や、地域の中の情報などもお教えいただき、ありがたかったです。さあ、論文にしないといけません。お話しした内容の概略は、つぎのとおりです。

粟生に伝わった不思議な仏像―吉祥寺の三ッ目不動と童子像―
 吉祥寺に所蔵される平安時代後期に造像された不動明王及二童子立像(重要文化財)のうち二童子立像は、頭部両脇に耳豆良(みずら)を結い、袍を着て沓を履いた姿で、一般的な不動明王の眷属像とは大きく異なる姿を示しています。像高も、中尊の不動明王像と比べて小さく、本来一具のものではないと考えられます。
 日本において童子像は、人と神仏との間を介在し、聖俗をつなぐ役割を果たす存在として認識され、多くの彫刻や絵画、また文学のなかに表現されてきました。例えば阿弥陀如来の来迎の際に往生者のところへと先導する持幡童子や、みずらを結って袈裟を着けた姿に表される聖徳太子像、また修験道では修験者に使役される護法童子など、その聖性を、幼い子どもの姿を借りることで表現しています。こういった事例を踏まえれば、吉祥寺の二体の童子像も、当初は聖なる介在者としての童子像として造られ、後世に別の不動明王像と組み合わされ、その眷属像として転用されたのだろうと推測されます。
 では吉祥寺の童子像は、本来いかなる像と組み合わされていたのでしょうか。実は吉祥寺には、重要文化財に指定されているその不動明王立像とは別に、もう一体不動明王像が伝わっています。それは、牙を上下に出し、右手に剣、左手に羂索を持つので不動明王であることは確かなのですが、額に眼を持ち、髻があり、冠をつけ、鎧に身を包んだ、極めて特殊な不動明王像です。作風からその造像は平安時代後期、12世紀にまでさかのぼるものですが、知りうる限り、日本で類似する形式を持つ仏像・仏画は見つかっていません。寺では、三ッ目不動と呼ばれています。
 実はこの三ツ目不動の両脇に、先の童子像を並べてみると、ぴったりとあてはまるのです。穏やかな丸顔、やや首を前に突き出した猫背の姿勢、腰高で下半身がすらりと伸びる体型、足先の長い沓の形状、その足裏に造られたほぞのかたち。あらゆる表現が一致しています。謎の三ツ目不動と、謎の童子像は、本来一組のものとして造られたものだったのです。
 謎の三体が組み合わさることがわかったことで、類例のない三目で鎧をつける不動明王像について考えるための手掛かりも、少しですが得られます。先に童子像が、聖と俗の境界にあって、人と神仏を結ぶ聖性を帯びた存在であることを確認しましたが、実は日本で、不動明王二童子像が神の姿として造られたことが分かる、これも特殊な事例が一例だけあるのです。それは大分県の長安寺に伝わるもので、耳豆良を結った童子形の中尊像に、やはり耳豆良を結った童子と髪を逆立てた荒ぶる姿の童子像が付随し、中尊像の像内の銘文から、大治五年(1130)に、不動明王を本地仏(神の本来の姿である仏、の意味)とする太郎天(屋山太郎惣大行事)という名の神の像として表されたことが分かります。
 吉祥寺の、三目を表して鎧をつけるという儀規(仏の姿や性格を規定する経典に基づく約束事)に全く属さない不動明王像の姿も、あるいは長安寺の像と同様に、不動明王二童子を本地仏とする神の表象として選択され造形化されたものではないでしょうか。
三ッ目不動

観仏三昧 仏像と文化財の情報ページ
-全国の展覧会や仏像の公開情報が満載!-


スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://kanbutuzanmai.blog66.fc2.com/tb.php/397-7df5107a

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

月別アーカイブ

ブログ内検索