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展覧会・文化財を見てきました(2011年1月23日、安倍文殊院)

・安倍文殊院
 宇陀へお見舞いに行って、帰宅途中に安倍文殊院に参拝。子にお抹茶を与えて、本尊拝観。快慶作の文殊菩薩騎獅像及び眷属像(重文)の群像は、順次進められている修理のため、善財童子像、仏陀波利三蔵像は不在。文殊はまだ獅子から降りていて、1月25日まで特別公開とのこと。
 今回の注目は維摩居士像。修理にあたって像内に慶長12年(1608)南都大仏師宗印による制作であることを示す銘文が発見され、新たに重文に追加指定された(指定名称は住吉明神像)。改めて見てみると、その大きな特徴は面部の表現にあると思う。老人の風貌を表現するにあたり、能面の尉の表現を意識的に用いている(笑みを含んだ目・線を彫ってあらわすしわなど)。像内にはさらに住吉明神像として造像したとする銘記もあり、謡曲「高砂」で用いる尉面(住吉尉・小尉)との連想もはたらく。
 宗印は兄宗貞とともに、金峯山寺の蔵王権現像、方広寺大仏(東山大仏)を造像し、研究史上では下御門仏師とよんでいる。戦国期に奈良一円を主な活動圏とした宿院仏師を出自とし、奈良町・下御門町に工房を構えた。豊臣秀長に登用され天正期後半に豊臣家と強く結びついて活躍したがすぐに失脚、慶長期以降は奈良の仏師として逼塞したが、鎌倉時代彫刻に深く学習したいくつかの作例を残す。奈良町の上層町民であり茶人や僧、職能民らとの文化サロンの構成員でもある。能面の表現を意図的に用いることは教養人として十分ありうる。
 そんなことをぼんやり考えていると子が飽きて騒ぎ出したので退散。絵馬を購入して、よい論文がかけますようにと祈願文を書き込み、たくさんの合格祈願の絵馬の邪魔をしないようにそっと懸ける。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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