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展覧会・文化財を見てきました(2011年4月3日、法然展・親鸞展ほか)

滋賀県立安土城考古博物館
・企画展 近江の観音像と西国三十三所観音巡礼
(2月11日~4月3日)
 滋賀県の観音像の優品と、三十三所巡礼に関係する考古・歴史・民俗資料の二本立てで展示。こういう構成になったのは、図録概説にもあるように、もと考古学の展示として企画されたが担当者異動で美術史の展示となったことによる。こういう事態、全国でも多いと思う。異動は計画的に。そういった事情はあっても、会場の真ん中に屹立する来迎寺聖観音立像(平安時代初期・重文)が展示を引き締める。いつみても何度見ても、前から見ても横から見ても、緊張感にあふれて、見飽きない。仏画では法蔵寺如意輪観音像(鎌倉時代初期・重文)がそうした位置にある。図録あり(62ページ・500円)。

寂光院
 安土城博を出て、野洲市の錦織寺(真宗木辺派本山)脇を通って(お参りだけした)、琵琶湖大橋を渡って山へ入り、北から大原入りして寂光院へ。放火による焼失後、再建成った本堂で、やはり焼損後新たに造像された故小野寺久幸(美術院国宝修理所前所長)作の大きな地蔵尊にお参り。お目当ては境内宝物館の、焼損した本尊像(重文)の胎内納入品である、3000体余の地蔵菩薩の小像。5~6㎝ほどの像と10㎝ほどの像の二種。小像ゆえの造形の省略はあるも、何千体もの像を彩色・キリカネも含めて造る大きな信仰の力(勧進であったのだろう)に圧倒される。

京都市美術館
・親鸞聖人750回忌・真宗教団連合40周年記念 親鸞展 生涯とゆかりの名宝
(3月17日~5月29日)
 大原から岡崎へ下りて、親鸞展鑑賞。なんといっても真宗教団連合による「大親鸞展」であるところが肝で、西も東も高田も佛光寺も興正寺も木辺のものも一堂に会される。宗門的には親鸞自筆文書類が集約されることに大きな意味があるだろう。当方は専修寺の親鸞聖人坐像(南北朝時代)、太子寺の善然坐像(南北朝時代・重文)、佛光寺の了源坐像(南北朝時代)など、祖師像に注目して見る。図録あり(260ページ、2300円)。

京都国立博物館
・特別展覧会 法然上人800回忌 法然 生涯と美術
(3月26日~5月8日)
 浄土宗諸本山協力による「大法然展」。「Ⅰ法然の生涯と思想」「Ⅱ法然への報恩と念仏の継承」という章立て。全編で知恩院の法然上人絵伝(国宝)48巻を駆使し、またそのほか法然上人絵伝の諸本も集約しており、絵巻物にみる法然展というスタンスを貫いている。絵巻物で人物を語らせるのは、魅力あふれる絵画資料であるだけに効果的だが、歴史叙述を縁起に寄りかかって行っているように見えてしまうことは、ナショナル・ミュージアムとしては諸刃の剣。もちろん図録掲載の論文(平雅行・若杉準治・大原嘉豊)にそのような偏りはない。よい絵巻、絵伝、仏画が集まって眼福だが、もう少し浄土宗の仏像・肖像彫刻の優品もみたかったなあとは思う。図録あり(294ページ、2300円)。

八幡市立松花堂美術館
・御鎮座1150年記念 石清水八幡宮展
(3月18日~5月8日)
 室町時代の女神像2躯(府指定)や八幡縁起絵巻、僧形八幡神の画像、古文書などから、石清水八幡宮の歴史と文化を眺める。図録なし。

石清水八幡宮
・春の文化財特別公開
(3月26日~4月10日)
 恒例の文化財公開。今年の目玉は、天平12年(740)書写の藤原夫人願経(観世音秘密無礙如意輪陀羅尼蔵義経)。鎌倉時代、角寺(海竜王寺)から石清水の神宮寺である大乗院に伝来し、幕末の動乱期に社殿若宮に避難して入れられ、近年発見されたもの。同様に若宮社殿から発見された道教風が顕著な篝火御影(八幡曼荼羅)も展示。走井餅をお土産に買って帰宅。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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