雄山神社(前立社壇・中宮祈願殿) 前日夜に富山市入りし、朝から立山へ向けて出発。まず岩峅寺の集落内にある雄山神社前立社壇(旧岩峅寺<立山寺>)に参拝し、続いて立山博物館脇の雄山神社中宮祈願殿(旧芦峅寺<中宮寺>)に参拝。それぞれ中~近世に立山信仰の拠点となった場所。

左/前立社壇 右/中宮祈祷殿
富山県[立山博物館]・企画展「綜覧 立山曼荼羅―こころをうつす絵鏡―」
(7月1日~9月25日)
立山博物館の開館20周年を記念して、立山博物館と水墨美術館の両会場で立山曼荼羅を特集。立山博物館会場では、立山曼荼羅の機能とそれが受容された背景を解説。近世の儒教・仏教論争を巡る言説を通して、近世社会においては物事の本質が「心」にあるとする唯心論的理解が一般的であったことを示し、立山曼荼羅とその唱導はそうした心のありようを映し出す「絵鏡」として機能したことを論じる。慈興上人坐像(芦峅寺雄山神社蔵、重要文化財)は杉材を用いた鎌倉時代の肖像彫刻。内縛印を結び眉根を寄せた沈鬱な表情が特徴的で、山岳修験の霊場の開祖に求められた優れた験者の理想像を如実に表す。図録は両会場共通のものあり(136ページ、2000円)。ただ、立山博物館会場の展示資料は掲載されておらず(展示概説はあり)、残念。
日石寺 立山博から市内へ戻る途中、昔から訪れてみたかった日石寺へ向かう。門前で素麺と山菜を食べてから、不動明王及び二童子像の巨大な磨崖仏を拝観。平安時代末頃の作風を示し、重要文化財。案外オープンに拝観できる(脳内で勝手にふくらんでいたイメージとしては、行者の修行場所に入れてもらいにらまれながらおずおずと拝観、だった)。現在は新しい本堂が巨岩にとりつくが、岩の側面をみると庇など取り付けた加工跡もあり。

境内の滝に子をならばせパチリ。
富山県水墨美術館・企画展「綜覧 立山曼荼羅―絵で知る立山信仰の世界―」
(6月18日~7月18日)
会期を数日残して、なんとか馳せ参じる。水墨美術館の広々とした展示室いっぱいに、48件の立山曼荼羅がひしめく。立山博(および学芸員福江さん)のこれまでの研究の蓄積があってはじめて成り立つ、空前絶後の光景。従来江戸時代前期のものとされていた来迎寺本も、最近の蛍光X線撮影でわかった顔料の特徴から江戸時代後期の作成とみられることが提示され、立山曼荼羅が江戸時代後期に作られた絵画ジャンルであることが明確になった。一つの絵画ジャンルの生成と展開が、物語と絵画の分析、布教の主体と受容者(信仰者)の広がりの緻密な分析により飛躍的に明らかになっており、その作業を追体験する上で、現存する(ほぼ)全資料の鑑賞はかけがえのない宝となる。展示方法では、赤外線撮影の画像も掛幅形式にしたり、解説キャプションがとても大きく、また解説ごとにみどころを短文で提示して同一主題の資料を多数提示することの「デメリット」を回避する工夫も参考になる。図録(136ページ、2000円)には全資料のカラー図版が掲載される。
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