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展覧会・文化財を見てきました(2011/7/27、奈良博など)

奈良教育大学教育資料館
・妙法寺展 繋-あなたと吉備真備と妙法寺-
(7月25日~7月30日)
 恒例となっている、奈良教育大学大学院教育改革推進プログラム「地域と伝統文化」教育プログラムの一環としての展示。本年から、橿原市東池尻町の妙法寺(通称:御厨子観音)を取り上げる。御厨子山妙法寺縁起絵巻は吉備真備の入唐の物語を繰り広げる新出の資料で、元禄9年(1696)銘あり。注目は大日如来坐像。像内に銘があり、従来文安2年(1445)と読まれていた年紀が新規調査で元亀2年(1571)と判明。制作者は椿井式部で、奈良町の「柚留木」という地名や、追善のための過去者の名前などが判読されている。戦国期の椿井仏師の動向はほとんど明らかになっていないが、こうした新出の作例の出現によって、宿院仏師と同時代の正統な奈良仏師の実像に少しずつ迫ることが可能となろう。絵巻を立体的な絵画に変身させる立版古作成のワークショップあり。院生さんの発案とのことで感心。さっそく参考にさせてもらおうと、作り方など聞く。図録あり(52ページ。ただし自家制作版、受付で要確認)。

奈良国立博物館
・特別展 天竺へ~三蔵法師3万キロの旅
(7月16日~8月28日)
 藤田美術館の玄奘三蔵絵(鎌倉時代・国宝)12巻を、とにかくどどーんと全部展観する、一点突破の好企画。前期(~8/7)・後期(8/9~)で全て巻き替えされるが、展示では作品に対応させて詳細な大型パネルが準備され、前期分・後期分の画面をその場で把握でき、会期を通じての展示ストーリーの維持に周到な準備がなされている(本紙の横幅寸法を一紙ずつ足し算しながら展示ケースとパネルの準備をしている様子が目に浮かぶ)。藤田本の画面構成・細部の描写の緻密さ、顔料の鮮やかさ、保存状態の良さは驚異的。興福寺大乗院伝来資料であり、法相宗祖としての玄奘からの血脈相承の証として機能したとする図録谷口論文(谷口耕生「総説 玄奘三蔵絵-三国伝灯の祖師絵伝-」)の指摘に納得。ほか藤田美術館所蔵の大般若経(魚養経)387巻、釈迦十六善神像の優品、五天竺図の諸本を展示。図録あり(264ページ、1800円)。

・特別陳列 初瀬にますは与喜の神垣-與喜天満神社の秘宝と神像-
(7月16日~8月28日)
 奈良県桜井市、長谷寺の鎮守である与喜天満神社の歴史と地域で育まれた文化を、神社と長谷寺の資料から展観。なんといっても、初公開となる神像群に注目。主祭神の天神坐像は、像内に正元元年(1259)の年紀と十一面観音を毛彫りで描いた六花鏡を納める、等身大の堂々たる像。昭和初期の修理でその存在は知られていたが、その後長く調査は許されず、こうしたかたちで拝観できることを喜びたい。そのほか角材を粗彫りしてあらわしたプリミティブな神像(平安時代後期)も神像研究上重要な新出資料。ほか、天満神社で中~近世に行われた連歌関連資料や、与喜天神に奉納された戦国~桃山時代の鎧(重文)、江戸初期の神輿など。図録あり(72ページ)。
 奈良の地域史を新資料の紹介や高い水準の調査研究の成果により提示する本展のような機会は、県立博物館のない奈良にあってきわめて貴重なものである。奈良県全域をフィールドとし県民に寄り添い親しまれる地域博物館としての顔は、国立博物館としての使命とともに、地域とともにある「ならはく」の存在基盤の一つである。良心と見識と愛情で、なんとかこれからも維持して欲しい。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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