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展覧会・文化財を見てきました(愛染明王展、鎌倉×密教展ほか)

神奈川県立金沢文庫
・特別展 愛染明王-愛と怒りのほとけ
(10月15日~12月4日)
 叡尊鎌倉下向750年という節目を設定して、西大寺流律宗における愛染明王信仰を軸にしながら、愛染明王像の諸相を紹介。院政期に王権護持、調伏、敬愛などの効権を求めて隆盛した愛染信仰の所産として、仁和寺円堂様の像として奈良博本(前期は細見美術館本)、個人蔵本などを、法勝寺八角円堂安置の愛染明王像を写した法勝寺図様の像として、根津美術館本、醍醐寺白描本などを集める。醍醐寺の白描図像には台座が十二角形だったという書き込みあり。所依経典である「瑜祇経」に、愛染王は白檀を用い五指を量等とするとあり、これに基づいて造られた小さな愛染明王像や香合仏も集める。西大寺流の愛染像としては、善円の愛染像の前立ち像(北川運長作)、金銅製の称名寺像、黒漆大神宮御正体厨子など。展示されていた、天皇即位法に関する口伝である輪王灌頂口決には「稲荷ハ即熊野権現、熊野権現は即愛染明王、謂ク神倉也(中略)愛染三目即チ三ノ山と聞ケ給ヘリ」とあることが初めて示され、熊野三山のうち新宮神倉の本地愛染明王が熊野信仰と中世王権を結ぶ接点となっていた(こともある)可能性も垣間見えた。文庫の展示はいつも中世社会の深みと広がりに気づかせてくれ、ありがたい。図録あるも、売り切れ。図書室で閲覧可。

鎌倉国宝館
・特別展 鎌倉×密教
(10月15日~11月27日)
 鎌倉地方における密教の歴史とその造形的所産を集めて展観する。明王院不動明王坐像(五大明王像)は定慶作と比定されるもの。側面からの立体造形はまさしく湛慶世代のもの。修禅寺大日如来坐像は実慶作。滋賀・園城寺(三井寺)の不動明王坐像は鎌倉時代前期の優品。彫刻ではほかに五島美術館の愛染明王坐像(鶴岡八幡宮旧蔵資料)、来迎寺の如意輪観音坐像、英勝寺宝冠阿弥陀三尊像龕、巨福呂坂町内会の歓喜天立像など。仏画では円覚寺虚空蔵菩薩像、神護寺十二天像ほか。また明庵栄西坐像、退耕行勇坐像、極楽寺の密教法具なども。図録は売り切れ。

遊行寺宝物館
・特別展 熊野に惹かれて
(10月9日~12月19日)
 遊行寺(清浄光寺)所蔵の資料を中心に、熊野権現と時宗の関わりを提示する。初公開の役行者前後鬼像は室町時代、熊野十二所権現像(元禄2年銘)、熊野垂迹三十三所観音像は室町時代、上段に笏を取る男神、衣冠束帯の男神、僧形神が並び、背景に那智滝が流れ、下段に三十三所の観音像を配置する。ほか江戸時代の熊野成道図のほか、二河白道図や一遍上人縁起絵など。小書院安置の熊野権現像は像高13.2㎝、江戸時代作。図録なし。

東京国立博物館
・特別展 法然と親鸞-ゆかりの名宝-
(10月25日~12月4日)
 法然上人800回忌・親鸞聖人750回忌の記念展。両宗門の諸本山の協力で資料を集約し、師弟関係の中で同時代を生きた両祖師の歴史的位置を、肖像、消息、聖経類や縁起絵巻、祖師絵伝などで位置づけ、また宗門を継承した高僧たちの軌跡も同様に肖像・絵巻類から追い、それぞれの生涯や関わりを提示。彫刻では浄土宗所蔵となった阿弥陀如来立像をはじめ、数は少ないながら厳選され出陳。奈良県・光明寺の阿弥陀如来立像(快慶初期の作例か)や、真正極楽寺像を鎌倉時代に模刻した京都府・大念寺の阿弥陀如来立像など未見資料を間近に鑑賞できありがたい。大念寺像、側面観はまぎれもない鎌倉時代彫刻で、模刻における正面観照の高さを認識する。展示後半は浄土教美術や本山所蔵の名宝展。善導寺善導大師坐像や浄光明寺阿弥陀三尊像など、こちらも未見だったので本当にありがたい。図録あり(383頁・2500円)。
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[C185] 図録……

19日に鎌倉国宝館、23日に金沢文庫に出掛けた時には
どちらもまだ図録の在庫はありました。
金沢文庫は山積みで、「現品限り」表示(在庫僅少になると掲示する)も出ていなかったのですが。
運慶展のように増刷していただければ良いのですが。
会期末の売れ行きの早さに驚きました。
  • 2011-11-27 10:49
  • ひえのやま
  • URL
  • 編集

[C186] Re: 図録……

> 19日に鎌倉国宝館、23日に金沢文庫に出掛けた時には
> どちらもまだ図録の在庫はありました。

金沢文庫は23日に売り切れたとの由です。増刷は難しいでしょうねえ・・。
私の勤め先では、会期中に売り切れたことはありません(^_^;)が、『熊野速玉大社の名宝』展は会期最終日にぴったり全て売り切った前例あり。奇跡でした。
  • 2011-11-27 11:06
  • 大河内智之
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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