fc2ブログ

Entries

玉稿拝受しました(2011年12月3日)


「これまで称名寺本『覚禅抄』に「東寺事」として『東寺講堂御仏御舎利員数』が組み込まれていた可能性が高いことを見てきた。(中略)東寺講堂諸尊が運慶工房によって修理され、その最中の舎利発見が大きな驚きをもって受け止められたことは、よく知られている。では何故『覚禅抄』に含まれたのかを考えるとき、高野山西南院本をはじめとして、『覚禅抄』が文永から弘安頃に多数書写されたということに注目される。この時期はちょうど元の脅威にさらされていた時期であり、空海ゆかりの舎利について注目が集まった時期でもある」(47頁)

向坂卓也「称名寺本にみる『覚禅抄』展開の可能性について-称名寺本『覚禅抄』と『東寺講堂御仏御舎利員数』-」(『金澤文庫研究』327、2011・10)

「愛染明王は白河院政期に重要な尊格として浮上し、真言密教の秘宝としての如意宝珠を安置する「如法愛染王法」も始まった。如法愛染王法は後に天皇家の代表的な御産祈祷となる一方、愛染明王を天照大神と結びつける神道説や儀礼が成立し、中世神話の中でも愛染明王が異彩を放ちつつ登場することになる、また、蒙古襲来に際しては調伏の霊験が喧伝され、国家的祈祷の主尊とも見なされた。愛染明王は、日本密教の展開を考える上で、きわめて重要な位置を占める仏尊といえよう。」(8頁)

高橋悠介「愛染明王をめぐる儀礼世界」(神奈川県立金澤文庫編集発行『愛染明王 愛と怒りのほとけ』2011年10月)

「本書には、特に荒神の像容に関する記事が豊富であり、荒神像の実際の作例や荒神を描いた仏画の背景を考える際にも、大いに参考になる。特に、荒神の像容が愛染明王から大きな影響を受けて成立していることがうかがえ、また荒神が不動・愛染二明王を脇侍とする一方で、舎利・宝珠と同体ともされるのは、宝珠(舎利)・不動・愛染の三尊合行法からの影響も推測される。」(58頁)

高橋悠介「高野山大学図書館蔵高野山三宝院寄託本『荒神縁起事 付霊瑞』翻刻・紹介」(『巡礼記研究』8、2011年11月)

「『巻数集』や『宮寺縁事抄』では、「印仏」が版画の意味で用いられている。これを参考にすれば、『小右記』にみる、「去月印仏」を「供養」したとの記事は、版画の制作をしるしたものと考えられる。これは制作が容易な印仏だった可能性が高い。この見解が妥当ならば、十世紀後半に集中して出現する、「印仏」にかんする史料にも再考の余地が生じる。ただし、こうした用例からは「印仏作法の産物」という意味あいが読みとれ、技法的な観点からのみ「印仏」の語が用いられているとはいいがたい。」(13頁)

佐々木守俊「仏教版画の呼称について」(『町田市立国際版画美術館紀要』15、2011年7月)

「大権現様(徳川家康)に住持の快印が手製酢を献上し、それが恒例となり、住持の快雅の時に献上は辞退申し上げたが、吉例であるので酢は絶えさせることのないようにとの指示があり、十八世紀後半にも東泉院で手製酢は造られて貯蔵されていたようである。」(17頁)

大康正「善徳寺酢に関する一考察」(富士市立博物館『六所家総合調査だより』9、2011年10月)

「田辺市中辺路町近露のNPO等から、旧野長瀬晩花生家(ツシ二階建・切妻造・四面付・桟瓦葺、明治初期頃の建築)の雨漏り対策について相談を受け現地調査した折り、二階のツシに大型の宮殿が保管されているのを偶然発見した。(中略)宮殿調査の機会をえ、今まで全く考えてもみなかった“旧近露王子神社本殿内に祀られていた宮殿”である可能性が思料された」(1頁)

山本新平「近露王子神社本殿の宮殿について」(『田辺市文化財』49、2011年9月)

「仙台とはいかなる場所であったのか、その歴史的な歩みを知りたい、というのが展覧会の企画意図であるが、展覧会自体は、そのことを仏像や肖像彫刻といった彫像を通して考える試みでもある。それぞれの像から知りえる様々な情報は、歴史の断片であると同時に何かしらの大きな流れも示してくれるのではないか」(107頁)

酒井昌一郎「仙台平野周辺の仏像・肖像彫刻概観-今後の調査へ向けて-」(仙台市博物館編集発行『仏のかたち 人のすがた-仙台ゆかりの仏像と肖像彫刻-』、2011年11月)
峰岸純夫・江田郁夫編『足利尊氏再発見-一族をめぐる肖像・仏像・古文書-』(吉川弘文館、2011年10月)
京都府立山城郷土資料館編集『木津川ものがたり-木津川が生み、育てた文化-』(発行:第26回国民文化祭木津川市実行委員会、2011年10月)
視覚障害者文化を育てる会編集発行『SHOKU』11(2011年11月)
玉稿をたくさん頂戴いたしました。みなさまの学恩に感謝致します。
スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://kanbutuzanmai.blog66.fc2.com/tb.php/510-d70e51ea

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

最近の記事

月別アーカイブ

ブログ内検索