仙台市博物館・特別展 仏のかたち 人のすがた-仙台ゆかりの仏像と肖像彫刻-
(11月1日~12月11日)
東日本大震災復興祈念の展示として、仙台市内の仏像・肖像を集約する。仏像は制作時代順に展示され、冒頭は奈良時代造像の可能性が極めて高い十八夜観音堂の菩薩形立像。先般奈良時代の作という調査結果が紹介された、表現が細部まで近似する大分県・天福寺奥院の菩薩形立像のパネルもあわせて展示され、東北と九州の作例比較という古代彫刻研究上新たな、かつ重要な視点を提供する。西光院十一面観音立像も、朽損・補修はあるが、奈良時代風を残す9世紀の彫像。ほか、高蔵寺や大郷町教育委員会所蔵の破損仏陸奥国分寺不動・毘沙門・十二神将の群像、龍寶寺の清凉寺式の釈迦如来立像、小針薬師堂の建長6年銘薬師如来坐像、黒川神社の金剛力士像など中世の注目作例を集める。また、特に地域権力の発願となる仏像と、領主・妻子の肖像(彫刻・絵画)を集め、近世の美術資料から地域の文化的・宗教的な側面を浮かび上がらせる。展示冒頭のあいさつに、多くの人により守られている文化財は大切な地域の誇りであり、地域の力である旨が示されている。文化財が地域と乖離しないことの重要性を改めて噛みしめる。図録あり(132ページ、1300円)。
展示は最終日に滑り込み、名取市、石巻市、女川町の津波被害地をまわる。被害の甚大さを、目に焼き付ける。和歌山県も海岸線が長く、各地の光景は、和歌山のあの町、あの湾、あの浦にそのまま重なってみえた。東南海大地震が必ず起こると予想される中、被害を減らす平時の備えと、緊急時のシステム作りが必要と痛感。
翌日は仙台東照宮、陸奥国分寺、大崎八幡宮、龍寶寺、瑞宝殿を巡るとともに、東北学院大学博物館で牡鹿町文化財収蔵庫被災資料レスキューの取り組みについてレクチャーを受ける。繰り返し発生するカビ、腐敗、塩害による劣化、水洗い後の乾燥不全など、さまざまな困難が山積する中、それでも前を向いて、資料を未来へ伝えるという強い意志に触れる。
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