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琵琶湖文化館の機能再生への道筋

滋賀県立琵琶湖文化館の休館問題について、これまでに次の記事で取り上げてきました。
 琵琶湖文化館、頑張って(2008年1月5日)
 琵琶湖文化館の展覧会企画力(2008年1月30日)
 琵琶湖文化館休館決定(2008年3月3日)
 「休憩」前の琵琶湖文化館(2008年3月10日)
 琵琶湖文化館さらに受難(2009年10月11日)
 琵琶湖文化館の今後(2010年1月20日)
 九州国立博物館「湖の国の名宝―最澄がつないだ近江と太宰府―」(2010年8月30日)
 これからの琵琶湖文化館(2011年2月11日)

 前回記事から1年以上過ぎました。その間、滋賀県教委内に近江の仏教美術等魅力発信検討委員会(委員長:木村至宏成安造形芸術大学名誉教授)が立ち上げられ、議論が重ねられ、2月8日にその報告書が教育長に提出されました。
 →近江の仏教美術等魅力発信検討委員会(報告書PDFファイル等あり)
 報告書の内容をざっくりと要約すると、文化財の保存・発信拠点であった琵琶湖文化館の機能再生は喫緊の課題で、近江の仏教美術等の魅力発信のために別の展示保存施設の確保が必要であり、求められる機能を果たせる施設として県立近代美術館がふさわしく、ただし新たな収蔵スペースや展示スペースが必要である、というものです。
  
 前回の記事では「廃館の判断がされたことで琵琶湖文化館の施設改修や新施設建設の線がなくなり、「文化館収蔵庫内の文化財は観光や地域活性に積極的に活用できる資源」であるという一面を強調してアナウンスし、実際に活用の成果をあげることで、他の県立施設に新収蔵庫を建設する予算を確保する、という筋書きか」と書きましたが、委員会の関係者、担当部局、県民の方々の努力で、もっとも穏当な方向性が示されたと思います。

 こうした動きと並行して、『美の滋賀』発信懇話会(座長;鷲田清一前大阪大学総長・大谷大学教授)という会議が知事部局内に立ち上げられ、2月15日に懇話会報告書が知事に提出されました。
 →「美の滋賀」発信懇話会(報告書PDFファイル等あり)  
 こちらもざっくりと要約すると、滋賀の様々な美を人と人がつながり合い交差しながら伝えていく場、そして美を通して誰もが関わりつながれる座としての新生美術館を作り、そこでは神と仏の美(おそらく琵琶湖文化館収蔵品が核)、滋賀近美コレクションの近現代美術、アール・ブリュットの三つの柱を軸に、「滋賀をみんなの美術館に」をテーマに、アートの土壌作り、地域や現場との交流・発信、滋賀の美を県民自らが伝える舞台作りを行うというものです。

 さらに滋賀県立近代美術館機能・発信力強化検討委員会(委員長:牛尾郁夫成安造形大学学長)、アール・ブリュット発信検討委員会(委員長:保坂健二朗東京国立近代美術館主任研究員)が設置されていて、先の『美の滋賀』発信懇話会と同時に報告書が提出されました。
 →滋賀県立近代美術館機能・発信力強化検討委員会(報告書PDFファイル等あり)
 →アール・ブリュット発信検討委員会(報告書PDFファイル等あり)
 こちらの要約は省略しますが(各ページに要約のPDFファイルがあるのでご参照ください)、滋賀県立近代美術館を仏教美術、近代美術、アール・ブリュット(アウトサイダーアート)を展示の軸とする新生美術館として再スタートすることを提言しています。
 こうした流れの中で、これらの動きを報じた毎日新聞3月3日の記事では、嘉田知事が「千年の仏教美術、百年の近現代美術、そして今生まれ出るアール・ブリュット。滋賀に自生した三つの花を、花束にして発信したい」とよく練られたコメントを出していて、これら一連の委員会の設置を主導したり、最終的な落としどころの絵を描いたのも、知事周辺であったのでしょう。これら諸委員会が一気に立ち上げられた5月~6月頃までに、概ね流れを作った優秀なブレーンか、実務チームがあったに違いありません。

 これから議会対応という難関がありますが、琵琶湖文化館の収蔵資料は、現時点では滋賀県立近代美術館を母体にして再編成される新生美術館(滋賀県立美術館とか、滋賀県立ミュージアムとかかな?)に移される可能性が高まってきました。とはいえ、それが順調に進んでもまだ何年も先です。琵琶湖文化館は、まだその役割を終えていません。滋賀の至宝というべきその収蔵資料が、無事に次の施設にバトンタッチされるまで、まだしばらく定点観測を続けたいと思います。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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