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玉稿拝受(『絵巻の図像学-「絵そらごと」の表現と発想-』)


「以上のように、平安後期から鎌倉時代にかけての絵巻には、しばしば邸宅の朽ち果てた様子が実に詳細に描かれることがあった。これは王朝文化の中で、人々があばら家に託す思い入れを反映した結果である。
 すなわち、単に四苦八苦の「求不得苦」の表現として貧を厭うのみでなく、茅家に身を隠す落ちぶれた姫君を貴公子が見出すという恋物語的な幻想や、荒廃した邸宅を「あはれ」と鑑賞して歌を詠む詩情の対象、また貴人が貧家の生活を細密に描写して興じる好奇心ともいうべき趣向である。その建物の腐朽を端的に象徴する表現の一つが、縁板の穴であった。」(113ページ、「あばら家の美学-なぜ絵巻に荒廃が描かれたのか-」)

「それにしても、一族の血統を断絶してまでの親子の出家が、なぜここまで賞賛されたのか。おそらくは仏典にその最も貴い類例があるゆえだろう。すなわち小国の王の嫡子であった釈迦は、一子羅睺羅を置いて出家する。悟りを開いた釈迦に再会した羅睺羅も、父の下で出家し、仏弟子として仕えたとされるからである。羅睺羅の名は『今昔物語』にも天竺部巻三「仏入涅槃給時遇羅睺羅語第三十」など七話に見え、この逸話も当時から知られていたものである。親子の出家が家の存続よりも尊ばれるのは、この先例によるものであろう。」(132ページ、「粉河寺縁起絵巻の長者の娘の出家について-武士一族の出家譚-」)

山本陽子『絵巻の図像学-「絵そらごと」の表現と発想-』(勉誠出版、2012年5月)
ありがとうございましたm(_ _)m。
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「以上のように、平安後期から鎌倉時代にかけての絵巻には、しばしば邸宅の朽ち果てた様子が実に詳細に描かれることがあった。これは王朝文化の中で、人々があばら家に託す思い入れを反映した結果である。 すなわち、単に四苦八苦の「求不得苦」の表現として貧を厭うのみ...

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「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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