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展覧会・文化財を見てきました(名古屋市博「大須観音展」・徳川美術館「日本の神様大集合」)

1月5日
名古屋市博物館
 特別展 古事記1300年 大須観音展
(12月1日~1月14日)

 大須観音・真福寺宝生院に伝わる、日本を代表する有数の知のアーカイブスである大須文庫。その善本の数々は、日本の中世思想史の豊饒さを伝え、また継続中の調査の中で驚くような発見が今も続いている。本展は、この文庫がいかに形成され、いかに守られ、いかに調べられてきたのかを主題としている。
 弘法大師伝はじめ伝記類、日本霊異記、扶桑略記、水鏡、七大寺年表、続本朝往生伝はじめ往生伝類、東大寺衆徒参詣伊勢大神宮記、麗気記、大和葛城宝山記、類従神祇本源、大田命訓伝、熊野権現金剛蔵王宝殿造功日記、本朝文粋、空也誄、和名類聚抄、口遊、古事記…と、展示順に列挙するだけ目が眩むような善本の数々。そしてそれらを調べ、保存してきた歴史を、塙保己一による蔵書調査と『群書類従』への採録、尾張藩寺社奉行書による蔵書整理、明治の宝物調査、黒板勝美による目録作成と文庫整備、近年の栄西著作の新発見や紙背文書の紹介と、大須文庫の近世・近代・現代史を丁寧に提示する。共催には名古屋大学が入り、またさまざまな連携研究による研究者のつながりを生かしていて、各資料の評価も慎重かつ重厚なものとなっている。
 展覧会の開催に合わせ、図録を兼ねて大須観音宝生院から発行された『大須観音 いま開かれる、奇跡の文庫』(254ページ、2000円)は、阿部泰郎監修、名古屋市博・真福寺大須文庫調査研究会の編集で、こちらも目が眩むような充実の執筆陣(阿部泰郎・伊藤聡・稲葉伸道・上川通夫・岡田荘司・川崎剛志・末木文美士・武内孝善・近本謙介等々)。
 一般的な興味から言えば、地味と言えば地味な展示であるかもしれない。しかし奇跡の文庫の軌跡をたどり、その成果を受け継ぎながら未来へ伝えることの重要性を、地域の博物館が、地域の大学や研究者と連携し、所蔵者によって書籍も発行しながら展示へと結実させたその意義は極めて大きく、名古屋市博物館の面目躍如たる好内容。

徳川美術館
 企画展示 日本の神様 大集合ー徳川美術館へ初詣
(1月4日~2月3日)

 尾張徳川家伝来資料の中から、神祇に関わるものを幅広くチョイスして展示。取り上げる神々は東照大権現をはじめ、八幡、伊勢、熱田、春日、天神、柿本人麻呂(和歌の神)、七福神など。ほか祭礼図や能装束、翁面、狂言面、雅楽器も。徳川美術館所蔵の宗教美術を代表する、石清水八幡遷座縁起絵(重文)や八幡大菩薩像(市ヶ谷上屋敷内八幡宮御正体)、春日曼荼羅図、熱田社参詣曼荼羅などの中世絵画や、内部に諸尊が精緻に描き込まれ荘厳された蒔絵舎利厨子などが見どころ。熱田社参詣曼荼羅は伝狩野賢信筆とされるが、こうした参詣曼荼羅の制作者としてなぜ近世の狩野派絵師が比定されたのか、参詣曼荼羅の受容史や伝来史という点から興味深い事例。図録なし。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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