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展覧会・文化財を見てきました(福井県立歴博「ふくいの面とまつり」ほか)

8月12日
福井県立歴史博物館
 特別展 ふくいの面とまつり
(7月19日~9月1日)
 福井県内に伝わる中世~近世の仮面を、仮面芸能・祭りとともに多数紹介する。
 須波阿須疑神社の少し歳を重ねた表情の女面(室町時代)は、目と目がやや離れて茫洋とした中世の女面らしい表情であるが、面裏の処理は整っていて、近世の能面につながるもの。同社の若い女(室町時代)は、くっきりとした二重の目、笑みを浮かべた口もとなどその華やかな表情はまさしく小面に連なるものであり、その原型の一つと評価できそう。元亀2年(1571)銘を有する天神も、すでに近世能面の原型としての表現を達成しており、「能面」のルーツがまさしく「越前様式」(そんな学術用語ありませんけど)にあることを実感する。
 また火霊産神社で奉納される「馬鹿ばやし」(福井県指定無形民俗文化財)は、芸態自体は仮装して滑稽な身振りを伴って太鼓を叩くというものであるが、仮装の道具として多数の仮面が使用される。実際に展示されている仮面を見ると、「べしみ」(大べし見)、「白おきな」(三光尉か)など中世に遡るであろう資料や、堅実な出来映えの能狂言面が多数含まれ、仮面研究上に貴重な情報を提供する。
 ほか、大野市の旧家に伝わる、顔全体に皺のある満面の笑みを現した尉面は古様で、あるいは寺社の延年で用いられたものか。また國神神社の空吹はゆがんだシャーマンの顔と火男が重なった表情を示し、過渡期的。
 中世の猿楽(能・狂言)で使用された仮面の作者には越前国出身のものが多く、また近世の最も主要な世襲面打の家(大野出目家、越前出目家)も越前国を本貫とする。福井の古面は、能面・狂言面の様式がどのように形成されたのかを考える上で重要な情報を提供するものであり、本展のような機会は大変ありがたい。図録あり(72ページ、1000円)。掲載仮面には全て面裏図版が付され、これも大変ありがたい。

平泉寺白山神社
 学生時代以来の訪問。うっそうと茂る杉の巨木の中を歩いて、社殿に参拝し、巨大な拝殿跡にかつての偉容を偲ぶ。新しくできたガイダンス施設・白山平泉寺歴史探遊館まほろばと、発掘調査と史跡整備が進んだ平泉寺坊院跡を汗だくになってめぐり、白山信仰の聖地の現況を確認する。白山については、3県6市1村が共同で「霊峰白山と山麓の文化的景観-自然・生業・信仰-」という枠組みで世界遺産登録を目指しているが、「どうせ無理」と斜に構える向きもあるだろうが、大切なのは地域の文化遺産を「人類の遺産」であると堂々と誇りに思って発信することであり、その普遍的価値を自らさまざまに再認識していく過程で、たくさんの歴史的発見があるだろう(嗚呼、それにつけても根来寺遺跡の悲惨さよ…)。

光ミュージアム
 世界の仮面展
(6月13日~9月8日)
 福井県から山中へ突入し、九頭竜湖の脇を通って(九頭竜ダム、大迫力だった!)、白山麓を経巡りながら、岐阜県高山市へ強行軍。
 ミュージアムに到着して建物と敷地の大きさに圧倒される。呆然…。壁面から滝が流れているし、内装も絢爛豪華だし。新宗教はすごい…。展示は、日本、アジア、南アメリカ、アフリカなど、世界の仮面を集めたもの。多くは新しいもので世界の風俗展示という観であるが、1点だけ、長滝白山神社の重文の仮面群のうち、女面が出陳(文明2年銘の資料だと思うが、キャプションには記述なし)。小型行灯ケースに若干角度を付けての平置きなので見にくいが、事情があるのでしょう。図録なし。この女面を見てやはり長滝白山神社に行こう!と決心し、駆け足で広い広い館内の展示室をめぐり、滞在40分で高山離脱(もったいない)。

長滝白山神社
 高山から白鳥へ急いで戻り、白山文化博物館の開館時間になんとか間に合った、と思ったら、そうです月曜日です。残念無念。
 久しぶりに長滝白山神社に参拝。昔、調査で訪れて以来で、なつかしくたたずむ。初めて仮面を調査したのは、ここの仮面群と白山中居神社の仮面群。優れた中世仮面にまっさらな状態で対面したからこそ、仮面の魅力に気づくことができたように思う。出会いって、運命的なものですね。
 長瀧殿も閉まっており、時間も遅いので若宮集古館も遠慮して、帰途につく。
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[C248] はじめまして

京都在住の者です。ほぼ毎日のように拝見し、次にどこへいくか考えさせていただいております。なのに栗東に行くのを忘れたのは不覚でした。
「高野山麓」展のおりは音声ガイドで楽しく見学させていただき、信仰圏の広がりと変化、守り伝えられた仏像のすばらしさに感動しました。
週末には「未来へ」展を見学する予定で、小さいながらもなかなか行けないお寺の仏像など、とても楽しみです。
今後のますますのご活躍をお祈りいたします。

追伸:「8月の展覧会」で逸翁美術館が「京都府」になっていますよ。
  • 2013-08-15 16:07
  • あり
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  • 編集

[C249] Re: はじめまして

観仏三昧、ご利用頂きましてありがとうございますm(_ _)m。
和歌山県博もご利用頂き、重ねてお礼申し上げます。

掲載のミス、教えて頂きありがとうございます。さっそく修正しました。
ホントに助かります。

これからもよろしくお願い致します。
  • 2013-08-17 07:10
  • 大河内智之
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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