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展覧会・文化財を見てきました(大阪市美「北魏 石造仏教彫刻の展開」ほか)

10月5日
大阪市立美術館
 特別展 北魏 石造仏教彫刻の展開 
(9月7日~10月20日)

 自館所蔵の優れた中国石仏コレクションを核に、国内のミュージアムに伝わる資料をも集約して、北魏彫刻の表現とその展開を、61件の資料から探る。
 5世紀半ばから6世紀半ばにかけての100年間で、インド風をなお残すややふくよかな初期作例から、漢式服制にかわって細面となり、さらにその相貌に柔らかみが加わっていくという様式の展開と、そうした中央の様式が各地に伝播して地域ごとの文化と溶融しつつ「地方化」していく展開を、「北魏の仏像」「交脚像と半跏像」「平行多線文造像」「多彩な地方性」「河南北部の大型像」「石窟寺院」の各章で示し、北魏彫刻理解を大きく助けてくれる好企画。
 大きな空間に、5世紀後半の如来像頭部(伝雲岡石窟将来)、6世紀前半の菩薩立像頭部(龍門石窟賓陽洞将来)、景明元年(500)の大きな如来三尊像が前後に並ぶ第2会場の光景は、白く浮かび上がるそれらが立体的な年表を構築しているよう。
 図録は『北魏 石造仏教彫刻の展開』(64ページ・1000円)と『大阪市立美術館山口コレクション中国彫刻』(144ページ・1800円)の2冊立てとなり、出陳品のうち山口コレクション分は後者に掲載。これまで作られていなかった待望の山口コレクションのカタログであり、重要資料は側面や背面も掲載されていて便利。

四天王寺宝物殿
 秋季名宝展 極楽浄土へつづく道-四天王寺の浄土信仰-
(9月19日~11月10日)

 四天王寺は、末法到来を間近に控えた寛弘4年(1007)に「発見」(実際は創作)された四天王寺縁起に極楽浄土の東門と記され、浄土信仰の拠点となって、古代寺院の中世的変貌を遂げた。その四天王寺縁起(国宝)、元亨3年(1323)の聖徳太子絵伝(重文)、平安時代前期の阿弥陀如来坐像(重文)と片足を後にひょこっと上げて踊る観音・勢至菩薩立像(重文)、鎌倉時代の当麻曼荼羅図、近世初頭の行道面などから、浄土信仰の諸相を提示。図録なし。
 鑑賞後、四天王寺境内を歩き、これまで行くことがなかった元三大師堂とか大黒堂、旧大鐘楼(英霊堂)、墓など、隅々まで巡る。都市の中の聖地としてたくさんの参拝者が訪れ、さまざまな祈りを受け入れているこの場は、現在も確かに俗世と浄土をつなぐ境界である。振り返ると、巨大なあべのハルカスビル。山越阿弥陀ならぬ、ビル越阿弥陀が見えたような…。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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