10月13日、京都市内をぐるり一周しながら、ミュージアム巡り。
龍谷ミュージアム 特別展 極楽へのいざない-練り供養をめぐる美術-
(9月7日~10月20日)
再訪(前回訪問9/10)。展示替えで出陳された得生寺当麻曼荼羅、出光美術館六道絵(天野大念仏講旧蔵)、小童寺阿弥陀二十五菩薩来迎図をじっくり。図録あり(184頁、2200円)。
泉屋博古館 企画展 仏の美術-ガンダーラから日本まで-
(9月7日~10月20日)
副題の通り、インドから日本までの仏教美術を、所蔵品と諸家所蔵のものからチョイス。京大人文研所蔵の五胡十六国時代の小金銅仏5躯、北魏・太和22年(498)銘弥勒仏立像(重文)、隋代の楊柳観音立像、雲南大理国時代の観音菩薩立像など同館を代表する金銅仏が並ぶ中国仏ゾーンは、数は多くないが、様式理解の上でありがたい機会。先日の大阪市美の北魏仏展での学びを踏まえると、太和22年銘弥勒仏立像は、年紀よりも古い様式を残している作例ということになる。高麗時代の阿弥陀三尊像の大幅は表具裂に古い金・銀襴が使われていて、これ自体も文化財。鎌倉時代の毘沙門天立像(伝青蓮院旧蔵)は、鎧の鎖や足首の宝飾が銅製であることを確認。納入品の多数の毘沙門天像が摺仏でないのも興味深い。各図の筆致を見る限り同一人のようで、摺仏より丁寧な作善である。図録なし。
京都府立総合資料館 開館50周年記念 東寺百合文書展
(10月12日~11月10日)
「ユネスコ記憶遺産推薦決定」と冠が付き、東寺百合文書の普遍的価値を広く伝えようとするもの。中世史研究の上で著名な史料を多数含む47件が選択され展示される。冒頭では百合文書がいかに守られ整理されてきたかを提示し、現在保管する桐箪笥まで見られる。各文書の解説は「ですます」体にして、できるだけ平易に、興味をもってもらえるようにしようとする意図が見える。
ご来館の方が、係の人に「何かお花のことが書かれているのかと…」と尋ね、「保存箱が“ひゃくごう”あるんですよ」という(奇跡の)やりとりを直に聞き、昔、橋本初子さんが講義で、「ゆり文書ってきれいですね」と言ってあきれられたという鉄板ネタを語られていたのを思い出す。図録はないが、史料全部の解説文と釈文が準備されている。
佛教大学宗教文化ミュージアム 特別展 明・萬暦版大蔵経の諸相
(10月12日~11月4日)
同館で行われてきた高麗版大蔵経、黄檗版大蔵経の展示の続編。日本に所在する萬暦版大蔵経のうち、延暦寺・天竜寺・知恩院・萬福寺・清凉寺、大正大・東大・大谷大・龍谷大などの蔵本を比較検討し、その版行のあり方などを探ろうとするもの。ゴリゴリの研究展示(ケースごとに諸家の同じ巻の経本7冊が淡々と並ぶビジュアル)で、わあきれい、とかの感嘆はまず漏れないが、アカデミックの場である大学ミュージアムは、それでよいと思う(ただし、文章に「周知のように」が多用されているのはちょっと…)。図録はこれから作製とのことで、後日送付いただくことに(無料、送料負担)。また同館発行の『高麗版大蔵経の諸相』『東アジアと高麗版大蔵経』『黄檗版大蔵経展-その流布と改刻-』『『全蔵漸請千字文朱点』簿による『黄檗版大蔵経』流布の調査報告書』『魅惑の仏たち-大阪・孝恩寺の木彫群-』もいただく(希望者に無料配布)。
広隆寺 新霊宝殿の諸尊像、講堂諸尊像を、平安時代彫刻の展開を一望する視点で拝観。康平7年(1064)長勢作の日光・月光菩薩像を見ていると、見えにくい「定朝様」の中の「奈良様」がぼんやりと見えるが、寛弘9年(1012)の千手観音坐像ではよくわからない。定朝様は難しいし、先学の背中はまだ遠い。ついつい表現の問題より、造像システムの問題に逃げてしまう。来月にはバスツアーで訪れるので、何を話すか考えないと…。
東寺宝物館 特別公開 東寺の密教図像
(9月20日~11月25日)
白描図像や図像集、淡彩画で示された密教の仏の姿を展観。治承5年に覚禅本から写したという端裏書きがある仁王経五方諸尊図は南北朝~室町時代の転写本として位置付けて展示。特殊な大元帥明王像の図像を複数(前期2件・後期3件)展示するのも珍しいこと。唐時代の蘇悉地儀軌契印図の謹直な描線に震え、室町時代の六大黒天の素朴な描写に和む。リーフレットあり(8ページ)。
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