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三井記念美術館「能面と能装束」、東京国立博物館「仏像のみかた 鎌倉時代編」鑑賞記

三井記念美術館
 美術の遊びとこころⅦ 能面と能装束-みる・しる・くらべる- 
(7月24日~9月21日)

 金剛宗家ほか伝来の能面の優品と、三井家伝来の能装束を通じて、能面・能装束の魅力を分かりやすく伝える。能面展示のコンセプトは明確で、面の表裏を見せたり類似面を並べる展示手法によって、能面の種類、細部の形状の意味、面裏の情報などを「知り」、そして表現の差異を「比べ」、能面自体の表現のわずかな(しかし重要な)個性が「見え」てくることを示そうとする。そうした意図の結実としてあるのが、第2展示室にただ一面展示された孫次郎(オモカゲ)であり、その抜群の造形表現への気づきをうながす。仮面をめぐる伝承も美しいが、仮面自体の立体表現の絶妙さは写しでは成し遂げられない(と感じさせる)もので、16世紀半ば頃の孫次郎作といいうる重要資料である。そのわずかな抑揚表現による生動感は、写真でも表現されにくく、またおそらく舞台上でも見えなかっただろうが、これを手にとってきた人びとが、美しい伝承をそこに重ねずにはいられなかったことは、素直に理解される。霊現化した運慶仏と似た認知の構造がありそうである。同行した娘が、花の小面とオモカゲ孫次郎を見比べて(なんと贅沢な見比べ!)、眉の形が違うねと即答。おお、確かにそうだと、こちらが教えられる。館蔵能面の図録『三井記念美術館所蔵 旧金剛宗家伝来 能面』(156頁、2500円)あり。

東京国立博物館
 親と子のギャラリー 仏像のみかた 鎌倉時代編
(6月10日~8月31日)

 館蔵・寄託のおなじみの鎌倉時代の仏像の特徴を、分かりやすく、また理解しやすいようにさまざまな工夫をこらして展示する。文殊菩薩騎獅像および侍者立像に波のイラストを重ねる工夫は、絵画表現の持つ臨場感という利点を彫刻で再現しようとする営みの延長にあって、斬新でもあり、伝統的でもある。群像表現にすでに物語が付随している渡海文殊をチョイスした点は堅実。ほか玉眼や、千手観音の持物、像内納入品などのトピックスの紹介も。彫刻としての仏像の魅力である立体性については、展示全体として、運慶作例を始めとする鎌倉時代初期~前期から中期の優品が配置されるが、比較して鑑賞するトピックス展示を設けてもよかったかも。「運慶のすごいところはココ!」みたいな。リーフレットとして「トーハク新聞」(A4)を用意。
 あわせて、特集「春日権現験記絵模本Ⅰ-美しき春日野の風景-」(7月23日~8月31日)、「伎楽面」(8月5日~8月31日)を鑑賞。台北故宮博物院展は、同行の娘が疲れ果てたので(ゴメン)再訪せず。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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