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徳島県立博物館・香川県立ミュージアム「四国へんろ展」、瀬戸内海歴史民俗資料館「巡る人々、巡る信仰」鑑賞記

徳島県立博物館
 四国霊場開創1200年記念 空海の足音 四国へんろ展 徳島編
(10月25日~11月30日)

 四国4県でそれぞれ独自のラインナップで開催する四国へんろ展の、徳島編。14世紀末ごろ造像の神山町・焼山寺弘法大師坐像は表情に威厳のある等身の作例(応永7年<1400>の彩色銘あり)。近時重文指定された鳴門市・東林院弥勒菩薩坐像は、両手の掌を前に向ける弥勒の経軌に則った手勢の作例で、平安時代後期の洗練された作風を示す。高野山北室院伝来。つるぎ町・東福寺美術館の熊野権現影向図は、京都・檀王法林寺本の忠実な近世の写し。小松島市・恩山寺の神形坐像は三面で冠をつけて長い顎髭を蓄え、蓋襠衣をまとって右手に持物を持つ特殊な図像。像主不明(牛頭天王?)であるが、鎌倉~室町時代ごろの新出神像。美波町・薬王寺星曼荼羅図は小幅であるが、九曜の星の中に尊像を描く。各尊の丸々とした輪郭は古様で、室町時代より遡りそう。ほか、阿南市・太龍寺の康和5年(1103)阿波国大瀧寺所領注進状、徳島市・井戸寺の日光・月光菩薩立像などなど。四国各県や高野山からの出品はもとより、こうした徳島県内の重要資料・新出資料を鑑賞できる貴重な機会であり、得るもの多し。図録あり(240ページ、2200円)。
 子は敷地内の公園「子どものとりで」で遊ぶ。文化の日のイベントで販売中の農産物を物色し、ゆずを購入。徳島ラーメン食べて、美馬市から山を越えて香川入り。妻子を高松空港・さぬきこどもの国に下ろし、高松市内へ。

香川県立ミュージアム
 四国霊場開創1200年記念 空海の足音 四国へんろ展 香川編
(10月18日~11月24日)

 四国へんろ展の香川編。徳島編同様、香川県内の資料を多数集めて独自色を表出する。善通寺市・善通寺の金剛力士像は事前調査で応安3年(1370)の造像と判明。琴平町・松尾寺弘法大師坐像は文保3年(1319)の基準作例。衣紋をやや生硬に刻む仏師法眼定祐の個性は、鎌倉末の作例の中に類例がありそう。豊中町・本山寺愛染明王坐像は等身に近い12世紀後半~末ごろの作例で、徳島県雲辺寺の仏頭5点も同じころの秀作。坂出市・白峯寺の不動明王坐像は像高16.2㎝の銅製で、平安時代後期の優美な作風。解説では崇徳上皇の存在をほのかに匂わせ重ねる。三豊市・大興寺の両界種子曼荼羅は元文6年(1741)開版と読める墨書が付随するが、中世の種子曼荼羅に見まがう古様さ。ほか、善通寺錫杖頭、三野町・弥谷寺四天王五鈷鈴、さぬき市・志度寺十一面観音像や志度寺縁起絵、東かがわ市・與田寺の稚児大師像など重要資料がずらり。香川の信仰遺産を満喫する。図録あり(204ページ、1900円)。
 9月6日の高知・愛媛、今回の徳島・香川への「遍路」で、四国へんろ展を巡る遍路修行をコンプリート!。今回の4会場での四国へんろ展は、「四国八十八箇所霊場と遍路道」の世界遺産登録への運動も背景にあるだろうが、今後、4会場のそれぞれの展示に結実した最新の調査研究成果を一書にまとめることで(おそらく大部のものとなりましょう)、遺産の真実性の証明のための、貴重な達成となるのではなかろうか。辺路(へち)修行、巡礼、聖人(及び聖遺物)崇拝が重なる点が四国霊場の独自性であり、4会場で出陳された多数の中世在銘弘法大師像は、そうした独自性とも合致する。おそらく四国には、中世後期の弘法大師像が各地に遍在していると推察され(在銘資料はそのごく一部)、そうした大師像把握の進展は、あわせて四国の魅力を伝える歴史遺産の新たな発見につながる。四国の文化財調査のこれからが楽しみ。

瀬戸内海歴史民俗資料館
 テーマ展 巡る人々、巡る信仰-讃岐を訪れた木食、全国を巡った六十六部-
(10月7日~12月7日)

 香川県立ミュージアムで駐車場待ちなどで時間をとられ、時間の猶予がなかったが、後悔しないために車を西に走らせ、瀬戸内海歴史民俗資料館へ。
 四国へんろ展(香川編)の開催にあわせ、中近世において四国を巡った修行僧たちの造像の軌跡を、大木食以空、大木食蓮業、木食仏海、木食行道(明満とも)、木食観正、木食善住、木食相観ほかの作例から紹介する。全て素朴な木彫像であり、こうした行者系彫像の活動を一望できる貴重な機会。この中で木食行道(明満)の知名度は柳宗悦や民芸との関係で極端に高いが、比較すれば行者系彫像の中では作風が洗練されており、いわば民芸もまた峻別の所産であった。「芸術」とはみなされてこなかった行者系彫像の重要性は、像の存在価値が造形表現ではなく、行者の験力の眼に見えた現れであることにあると思う。各地の調査で同様の作例(多くは無銘)は普遍的に見つかるが、こうした造像を分類し編年する努力を続けることもまた、日本の文化史を見つめていくための大切な作業であることを、あらためて思う。これもまた、美術史が果たすべき役割である(もちろん日本史学であり民俗学であり宗教学でもある)。リーフレット2種あり(A4・4ページ)。すばらしい展示と、心の中で拍手。パチパチ。資料館の他の展示を見る時間が一切なかったが、行っておいてよかった。
 急いでさぬきこどもの国に戻り、閉館時間前になんとか滑り込んで、YS-11の実機展示などみる。こちらも楽し。しかし疲れた。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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