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東京国立博物館「日本国宝展」、サントリー美術館「高野山の名宝」鑑賞記

東京国立博物館
 日本国宝展
(10月15日~12月7日)

 国宝を集め、その美術的・学術的価値の高さを提示する国宝展。昭和35年、平成2年、平成12年に引き続いて4回目。重要資料は列記しきれないが、元興寺極楽坊五重小塔を運べたり、正倉院御物を特別展示できるのはさすが国立館で、毎回のチャレンジングな姿勢に感心する。絵画資料はごく近距離で鑑賞できるケースに入れられて細部まで確認できるのは、鑑賞者の便を図る姿勢に溢れる(一部ケースは近づくと注意されたけれど)。
 元来、文化財保護法に基づいて設置された国立博物館は、独法化後の法律(独立行政法人国立文化財機構法)も元の法律の条文を引き継いでいて、「貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図ることを目的」とする。「国宝展」の開催はその使命に合致するもの。本展では資料の分野別ではなく、歴史の諸段階での信仰のかたちを追うように資料選定を行った点に新味があり、また理念に共感する。その点で、先の使命からいえば「国宝」に自縄自縛されず、未来の国宝である重要文化財もあわせて選定すれば、展示の幅が広がって信仰史を丁寧にたどれたかもしれない。10年後(?)の「国宝」展では、文化財保護の体系をダイナミックに感じてみたいとも思う。図録あり(290ページ、2600円)。

特集 日本の仮面 能面 創作と写し
(11月5日~1月12日)

 館蔵品と寄託品を用いて、能面の本面と写しを並べて比較する。文蔵作の極めがある鼻瘤悪尉と出目友水によるその写し、室町時代の鷲鼻悪尉と出目甫閑、出目友水の写し、秀吉ゆかりの雪の小面(写真)と河内家重、出目満昆の写し、室町時代の曲見と出目是閑の写しでは本面の傷まで写していることを丁寧に示す。彫刻史研究の立場でモノに即して能面をいかに研究するか、その最先端の方法論を提示する。
 仮面は聖と俗をつなぐマジカルツールである。芸能の場で用いられる能面もまた聖なる道具である。創作面にみられる造形の魅力と、写しの面にみられる精神の移植が等価値となることは、まさしくそうした聖なる仮面の性質を能面が引き継いでいることの証明である。能面研究の新たな地平が見えつつある。図録あり(26ページ、648円)。特集展示に果敢に図録を用意されたことは、情報の共有化を図る上で重要。すばらしい。

サントリー美術館
 高野山開創1200年記念 高野山の名宝
(10月11日~12月7日)

 高野山の名宝を、彫刻・工芸資料を主体にして一堂に展示。運慶作八大童子像、快慶作孔雀明王像、四天王像、執金剛神像が目玉。八大童子は、その視線を意図的に捉える近年の研究を踏まえて配列(左右は反転)。そこに運慶の意志はあるやなしや、などと考えられるのも展覧会の醍醐味。後補の2躯(鎌倉末~南北朝)も等閑視されがちだが、中世の堅実な作例であり、高野山史上に位置付ける作業の必要性を改めて思う。注目は、執金剛神像の像内から発見された納入品のうち、源阿弥陀仏書写の宝篋院陀羅尼経。じっくり丁寧に鑑賞。南無阿弥陀仏(重源)の勧進(作善の勧め)によって建久8年(1197)に写経して結縁したことを示す内容。故友鳴利英氏の研究で一具性が検証された四天王像の制作時期も建久期でほぼ確定したことも重要。研究は着実に進展している。同展は年明けにあべのハルカス美術館へ巡回(1/23~3/8)。図録あり(192ページ、2400円)。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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