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福井県立歴史博物館「白山曼荼羅」、福井県立若狭歴史博物館「新八幡・絵巻の世界」鑑賞記

福井県立歴史博物館
 特別展 白山曼荼羅-描かれた神々と白山信仰-
(10月25日~11月24日)

 霊峰白山を核とする信仰の諸相を仏像・仏画から紹介するとともに、泰澄伝承と観音信仰にも目配りして、越前地域の信仰史の重層性を示す。鯖江市・春日神社の十一面観音立像は、等身大の、古様を残した10世紀彫像。坂井市・豊原家所蔵の薬師如来坐像は白山信仰の拠点の一つ豊原寺講堂の元本尊像。量感を残した10末~11c初の作例。ほか、越前町・八坂神社十一面女神坐像(12c)、福井市・白山神社の女神坐像(白山姫)・僧形神坐像・男神坐像からなる三神像(12c)、越前町・大谷寺の越知山三所権現坐像(十一面・阿弥陀・聖観音、12c)など、白山信仰に基づく神仏習合の優れた所産を集約。また白山比咩神社の白山三社神像(13c)を筆頭に、平泉寺白山神社の白山神影図、関市・神光寺白山垂迹曼荼羅図、郡上市・長滝白山神社白山曼荼羅図など、加賀・美濃・越前の白山三馬場のそれぞれで白山曼荼羅の図像構成が異なることを知る。中世~近世の地域に残る資料を細やかに集めて白山信仰の広がりを具体的に示す展示で、県立博物館の機能と役割を十二分に発揮。白山信仰の勉強、もっとしたくなる。図録あり(116ページ、1200円)。

福井県立若狭歴史博物館
 リニューアル記念展 華々しい若狭の歴史 Ⅲ部 新八幡・絵巻の世界
(10月18日~11月30日)

 かつて若狭国遠敷郡の新八幡宮に「伴大納言絵詞」(現品は出光美術館蔵)、「吉備大臣入唐絵巻」(現品はボストン美術館蔵)、「彦火々出見尊絵巻」(現品は江戸城に伝わり焼失、写しは明通寺蔵)が伝来した歴史を、各絵巻の写しとともに、近年の考古学・地域史研究に基づいて追跡。若狭国府の故地と目される小浜市金屋に所在する小浴(こみなみ)神社にかつての「惣社」が合祀され、かつ惣社に八幡社が含まれていて、小浜八幡に対して「新」八幡と呼ばれうることを示し、絵巻がかつて伝わった地を現地比定する。絵巻研究上、今後必ずおさえるべき重要な成果。残念ながら図録ないが、同館発行の『明通寺1201-坂上田村麻呂と若狭-』(2007)に概ね関連情報が収載される。
 リニューアルされた常設展示も鑑賞。若狭のみほとけゾーンは、尊像の威厳を増すライティングと落ち着いたしつらえに。初見の小浜市・常徳寺阿弥陀如来坐像は、隆起を顕わにする肉身表現と、悠揚と座る姿勢に優れ、やや浅めの翻波式衣紋も効果的。頭部に補修があるが、9c末~10c初ごろの重要作例。蓮華寺阿弥陀三尊像は院政期の堅実な作例で、面部にやや意志的な表情も現れ始めている。平安末~鎌倉初(12c)。ほか小浜市・黒駒区大日如来坐像(11~12c)、小浜市・仏谷区阿弥陀如来坐像(10c)など。地域の文化財を保全し、情報を共有化するための拠点施設としての役割を果たす意志が、展示を通じてひしひしと伝わる。

羽賀寺
 時まさしく「若狭の秘仏特別公開」の真っ最中。残念ながら時間なく、羽賀寺にだけ立ち寄る。本尊十一面観音立像とゆっくり対面。長く秘仏であったため彩色が良好に残る。幅広の天冠台、異国的な風貌、腰高ですらりとした痩身は、類似資料の少ない孤高の作例で、9世紀半ばごろの造像。本堂周辺では、鬱蒼と茂る檜林からニホンザルの群れが現れ、目の前をギャアギャアと騒ぎながら走り過ぎる。観音菩薩のおわすところは、まさに補陀落浄土であることよ。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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