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大津市歴史博物館「比叡山」、茨木市立文化財資料館「龍王山をめぐる信仰と人々」鑑賞記

10月18日、週休日。子×2は用事で不在。溜まった仕事をこなすために休日出勤するかどうかしばし葛藤して、しかしやはり見るべき展覧会はぐずぐずせずに見ておこうと、滋賀へ車を走らせる。

大津市歴史博物館
企画展 比叡山-みほとけの山-
(10月10日~11月23日)

 開館25周年記念企画として、同館が継続して実施してきた調査の蓄積をもとに、比叡山及び周辺地域の仏教文化の諸相を紹介。注目される新資料として、大津市木戸・西方寺十一面観音坐像は木心乾漆造の奈良時代の作例。台座蓮肉部(現状その上部のみ残存)を共木とする。肉身の立体把握、着衣形式、衣紋の細部表現など、後世の奈良仏師が影響を受けた作風を目の当たりにする。大津市仰木地区某所伝来の菩薩立像はエキゾチックな風貌の平安時代初期の檀像彫刻。華やかな冠飾、花をつなげた条帛状の飾り、腰帛といった特殊な形式的特徴を持つ。腰帛は北九州の仏像に類例があることを解説で指摘。腕釧、冠の瓔珞には当初の銅製部品が残る。神像でも、大津市和邇中・天皇神社の男神坐像は、顎髭を蓄えた厳しい風貌で、同社祭神の牛頭天王というより、豪族の祖霊神像というにふさわしい大作。袍の合わせを着崩してはだけるという類例のない着衣。苦悩する神の表象なのか。その他オーソドックスなものから、特殊な図像的特徴を持つものまで、他地域との影響関係を想起させる重要な仏像多数。こうした資料が着実な調査の中で次々に見出されることこそが、まさしく本展の目指した比叡山という宗教的場の持つ求心性・発信性を象徴的に示しているといえる。また、叡山文庫の全面的協力で比叡山に関わる古文書・絵図・典籍もずらり展観し、あわせて開催中のミニ企画展「阿娑縛抄」(10月14日~11月23日)でも、叡山文庫・天海蔵本、同・真如蔵本、元山上正教坊伝来で明治時代に西教寺に寄進された正教蔵本、及び旧山上行泉院伝来の行泉院本(博物館保管)の4セットを、経巻のボリュームと、伝来のあり方も示しながら展示。宗教テクストの生成・伝達によって築かれる「総合大学」としての比叡山の重要性を提示する。図録あり(160ページ、1500円)。

茨木市立文化財資料館
テーマ展 龍王山をめぐる信仰と人々-山岳寺院の軌跡-
(10月17日~12月14日)

 北摂山地のランドマークの一つであり、七高山の一つ神岑山(かぶさん)に比定される竜王山の宗教的場と伝来資料を紹介する。大門寺の熊野十二所権現立像は、近年の市史編纂で見出された新資料で、各30㎝ほどの阿弥陀・薬師・釈迦・大日・聖観音・十一面観音・如意輪観音・龍樹菩薩・男神3体・金剛童子からなる本地仏形と垂迹神形が入り交じった12躯の群像。現状の名称比定など混乱もあるようで、本来、立体の本迹曼荼羅を形成した一部なのかもしれない。鎌倉時代末~南北朝時代初期の造像。今後の熊野信仰研究の上で重要な資料となるもの。ほか大門寺、忍頂寺の仏像をパネルで紹介。図録あり(22ページ、200円)。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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