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熊本県立美術館「ほとけの里と相良の名宝」、九州歴史資料館「四王寺山の1350年」、九州国立博物館「美の国 日本」鑑賞記

熊本県立美術館
 特別展 ほとけの里と相良の名宝-人吉球磨の歴史と美-
(10月14日~11月29日)

 最終日に滑り込み。人吉球磨地域の日本遺産認定を記念して、古代~中世の同地域の歴史と仏教美術を紹介。中山観音堂の聖観音菩薩立像は、すらりと長身で胴の絞られた、北部九州に類似作例が見られる平安時代前期彫像(カツラ材)。新たに重文指定された勝福寺跡毘沙門堂の毘沙門天立像(カヤ材)・天部立像(ヒノキ材)のうち毘沙門天像には久安3年(1147)銘、同堂本尊の巨大な毘沙門天立像(クス材)は久寿3年(1156)銘。ほか在銘資料多数。多良木町長運寺(ないし西光寺)伝来の釈迦如来坐像は大治5年(1130)銘、城泉寺阿弥陀堂の阿弥陀三尊像(重文)は寛喜元年(1229)銘。弘法大師の在銘資料として、下里大師堂像は応永7年(1400)銘、槻木大師堂像は応永19年(1412)銘、等々。相良三十三観音の寺々からは、栖山観音堂の千手観音立像(平安後期)や宝陀寺観音堂の十一面観音立像(鎌倉後期)など大きな仏像も積極的に紹介。
 貴重な在銘資料によって様式の基準点を示し、それとの関係によって地域の仏像を評価していく仏像研究の王道というべき方法を背景に、そうした仏像を地域史理解のための資料として位置付け、他の史料と関連させながら展示することで、地域史像を緻密に明らかにさせた労作。熊本県立美術館と、八代市立博物館、熊本学園大学、崇城大学、熊本城調査研究センター、あさぎり町・多良木町・人吉市の各教育委員会ほかの県内研究者の共同作業としての成果でもあり、美術館という枠組みをはるかに超えた活動によって、美と知の殿堂を実現されているのを目の当たりにし、頭が下がる。図録あり(288ページ、2500円)。

九州歴史資料館
 特別展 四王寺山の1350年-大野城から祈りの山へ-
(10月24日~12月6日)

 古代山城大野城が築城された四王寺山(大野山)を巡る古代~近代までの歴史を資料を通じて叙述する。四王寺山の聖地性を象徴するものとして、多数の経塚埋納品がずらり。宇美八幡宮・石造如来形立像(重文)は滑石製、平安時代後期の作。伝四王寺山出土の銅製瓔珞付経筒の、平安後期の瓔珞に見入る。仁治元年(1240)創建の臨済禅の拠点、崇福寺跡出土の陶製地蔵菩薩坐像(南北朝~室町)は、同氾の像が九州北部で多数確認されるものと知り、興味津々(左手宝珠、右手与願印、袈裟と裙裾が垂下)。大須観音宝生院の新発見栄西自筆書状断簡(改偏教主決・重修教主決)が、四王寺山南東麓原山無量寺の僧との論争のものと学ぶ。ほか、大分県・安国寺の足利尊氏坐像(重文)、北野天満宮の日本書紀巻第二七(重文)等々、重要資料を積極的に集めて学ぶこと多し。図録あり(188ページ、1000円)。

九州国立博物館
 開館10周年記念特別展 美の国 日本
(10月18日~11月29日)

 最終日の閉館間際に滑り込み。同館開館記念展とあえて同名として、日本の「古くからアジア諸地域との文化交流のなかで独自の美を育んできた歴史」(図録「ごあいさつ」より抜粋)を紹介。空海筆金剛般若経開題残巻(京博)、最澄筆久隔帖(奈良博)、十一面観音像(奈良博)、釈迦如来像(神護寺)、十二天像(京博)、重源上人坐像(東大寺)などの国宝の数々をありがたく拝見しつつ、やはり九州でまみえる栄西筆誓願寺盂蘭盆縁起(誓願寺)、四王寺山出土青釉経筒(九博)、長崎県清水寺の不動明王三童子の巨幅、那覇市歴博の玉冠等が場につきづきしく、新鮮な思いを抱く。戦後70年を経た現代において「日本の美」の「独自性」を提示するとすれば、それは日本列島の各地域の美の「独自性」を把握し、その相互の関係性を細やかに、等価値的に捉えるなかで、中央(洗練)-周縁(非洗練)という中央集権的な枠組みのみに留まらない多様な美のかたちを視野に入れる必要がある。同展でアイヌ・琉球の文化財を取り上げるのもその文脈であるが、東アジア諸国との交流の窓口という九州の地理性を基盤においた同館のこれまでの10年の展示と研究活動の蓄積を、もっともっと盛り込むことができれば、「アジア諸地域との文化交流のなかで育んできた九州国立博物館の独自の美」の提示につながったのではないかとも思う。図録あり(256ページ、2500円)。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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