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奈良博、神戸市博ほか展覧会鑑賞記録

2月22日
奈良国立博物館
 特別陳列 お水取り
(2月6日~3月14日)

 東大寺二月堂修二会の時期にあわせた恒例のお水取り展。天文14年(1545)制作の二月堂縁起2巻を長めに展示。東大寺の勧進に用いられたとみられる絵画資料で、図録には上下巻全紙を図版紹介する。ほか、二月堂修中料理板(文化18年〔1813〕)や参籠宿所の堂司宿所にに掛ける掛板(江戸時代)、二月堂牛玉関連資料(江戸時代)など、美術資料だけでなく、修二会執行を支えてきた歴史資料(民俗資料)をずらり。奈良の歴史を顕彰し浮かび上がらせる同館のコンセプトが明確。図録あり(72ページ、1300円)。

 特別陳列 銅造伊豆山権現像修理記念 伊豆山神社の歴史と美術
(2月6日~3月14日)

 伊豆山神社の銅造伊豆山権現像の像表面を覆っていた厚い錆を、奈良国立博物館・奈良文化財研究所が連携して除去・安定化した修理の完成を記念して、同社にまつわる文化財を展観。伊豆山権現像の錆は特に面相部に厚く発生していたが、造像当初の凛々しく威厳のある風貌が顕わとなり、像自体の評価も再検討が可能となった。今後、鎌倉時代後期、13世紀後半とする本展での評価を基準として、さまざまな歴史的背景と接続させながら、伊豆山神社の鎌倉時代を考える新しい手がかりとなるだろう。X線CTによる調査成果も、中世鋳造像研究の上で貴重。そしてなにより、伊豆山神社本殿奥宮殿東の間に安置される、像高212.2㎝の男神立像を展示する大迫力の空間に圧倒される。本像については、平安時代後期成立の『走湯山縁起』に、康保
2年(965)に講殿に安置された「権現之像一体高六尺」に相当するという可能性が提示されたのも極めて重要。ほか同社伝来の、明徳3年(1392)銘を有する銅製伊豆山権現立像、明徳5年(1394)周慶作の男神・女神立像など立像神像が群立し、神像研究の上で見逃せない。図録あり(64ページ、1000円)。

神戸市立博物館
 特別展 須磨の歴史と文化展-受け継がれる記憶-
(2月6日~3月21日)

 須磨地域でで育まれた文化の諸相を総合的に展示。仏教美術では、福祥寺(須磨寺)の十一面観音立像(重文)は鎌倉時代中期の素木像。釈迦如来坐像(南北朝時代)は等身大の作例で、延文5年(1360)須磨寺火災後の復興像の可能性が指摘される。禅昌寺十二面観音坐像は、像内納入の木札(慶安2年〔1649〕)にその特殊な尊名とともに、明徳3年(1392)11月1日の造像を示す記述がある。南北朝時代最末期(~室町時代初期)における重要な新資料。現光寺元三大師坐像は建保6年(1218)造像の作例。ほか、中世の仏画や工芸資料など多数。須磨の地域史の具体像を文化財を通じて示すとともに、須磨という場の持つイメー
ジの生産/再生産の歴史にも目配りして、地域の歴史の重層性を丁寧に紹介する力作。図録あり(195ページ、2400円)。

 企画展 四季山水図屏風重要文化財指定記念 太山寺展
(2月6日~3月21日)

 狩野正信筆四季山水図屏風の指定と、平成28年(2016)に開山1300年を迎えることを記念して、太山寺伝来の仏教美術をずらり展観。不動明王立像(平安時代後期)は膝を出してやや歩みを進める特殊な姿の像。伝三所権現像は白山・熊野・吉野の三所権現と伝わる平安時代後期の神像。ほか両界曼荼羅図(鎌倉時代)、法華曼荼羅図(鎌倉時代)、楊柳観音像(高麗時代)など重文指定のものを含む仏画がずらり。1993年発行の「太山寺の名宝展」図録(152ページ、2000円)を用意。

須磨寺
 本堂秘仏特別ご開帳
(2月18日~2月24日)

 本堂の重要文化財宮殿内に安置される尊像のご開帳。本尊像は、平安時代後期の堅実な出来映えの聖観音坐像。嘉応元年(1169)安置とされ、作風も12世紀後半のもので齟齬がない。脇侍の不動明王立像は足ほぞに応安2年(1369)、法印康俊作の銘あり。康俊最晩年の作。もう1躯の脇侍毘沙門天立像も鎌倉時代の作例のよう。

神戸ゆかりの美術館
 招き猫亭コレクション 猫まみれ展-アートになった猫たち 浮世絵から現代美術まで-
(1月22日~3月27日)

 個人コレクションの猫アート(絵画・彫刻)200点をずらりと展示。浮世絵の擬人化された猫を見ていると、なんだかニヤニヤしてしまう。

神戸ファッション美術館
 BOROの美学 野良着と現代ファッション
(1月23日~4月10日)

 布を継いだ服(襤褸・ぼろ)をコンセプトとして、民俗資料・現代作家の作品を展示。アミューズミュージアムに収蔵される田中忠三郎が収集した津軽・南部の着物(重要有形民俗文化財)が展示の過半で、ずらり並ぶ着物は圧巻。ただ民俗資料=野良着=ボロというイメージによる選定であるのか、つぎはぎのない保存状態良好な資料が多く、コンセプトとのずれは気になる。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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