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香雪美術館「神々の姿」、兵庫県美「手で見る造形」「藤田嗣治展」鑑賞記

香雪美術館
 神々の姿 神と仏が織りなす美
(5月28日~7月24日)

 館蔵の宗教美術に関わる資料を、神仏習合の視点によってゆるやかにつないで公開。神像10躯は作風を違えたおおよそ平安時代後期の作例で、うち威相の男神像1躯はボク頭を着けた10c後半~11c初ごろのもの。重要な新資料。春日社寺曼荼羅(鎌倉時代)、春日鹿曼荼羅(室町時代)、そして来迎する雲上の地蔵菩薩立像(鎌倉時代)にあわせ、春日権現験記絵(春日大社・江戸時代)のうち、建仁3年(1203)湯浅宗光女房に春日明神が憑依して明恵の天竺渡航計画を留める場面を展示し、あわせて同時期の明恵筆夢記を並べる。「春日神社/芸州桑名郡額田荘」の刻銘を持つ鰐口は、文政2年(1819)に紀伊藩領田丸藩吉祥寺村の大庄屋見並惣大夫が西浜御殿(徳川治宝別邸)に献上したもの。惣大夫は2年後に用水開鑿計画を紀伊藩に上進しているので、その地ならしのよう。ほか、多度大社本を忠実に移した多度神宮寺伽藍縁起并資材帳(鎌倉時代)、九曜星の諸天を描いた愛染曼荼羅(鎌倉時代)、新薬師寺本尊図像による薬師三尊十二神将像(鎌倉時代)などなど。日の目を見た資料のなんと誇らしく輝かしいことよ。リーフレットあり(A3・両面)。
 
兵庫県立美術館
 小企画 美術の中のかたち-手で見る造形 つなぐ×つつむ×つかむ 無視覚流鑑賞の極意
(7月2日~11月6日)

 兵庫県美が長く続けている「手で見る造形」展シリーズ。今回は国立民族学博物館広瀬浩二郎氏(全盲の文化人類学者)によるプロデュースで、視覚障害者(触常者)の視覚によらない鑑賞法を健常者(見常者)が実際に体感してみる先鋭的な取り組み。鑑賞者はアイマスクをし、会場の壁に渡されたロープをたどって作品にたどり着き、手元のスイッチを押して広瀬さんの無視覚流鑑賞の極意を聞きながら、手で作品を鑑賞する。作品はブールデルの《雲》、ヘンリー・ムーアの《母子像》、ジャン・フォートリエ《トルソ》の3点。かたち、手ざわり、冷たさ、温もりなど、当たり前すぎて意識されなかった自らの指先や手のひらの多様な感覚に向き合い、その触覚情報を頭の中で像へと結ぶ30分。そしてその触覚情報が、確かに記憶されることも実感する。「触る展示」は福祉の観点に留まらず、あらゆる人々にミュージアムを開くための可能性であるといえる。リーフレットあり(A3両面)。

 特別展 生誕130年記念 藤田嗣治展-東と西を結ぶ絵画-
(7月16日~9月22日)

 藤田嗣治の大回顧展。画風の模索と独自の作風の成立、戦争画への邁進、そして回帰のようすを編年的に並べる美術史展示。《エレーヌ・フランクの肖像》(イセ文化基金)、《自画像》《アッツ島玉砕》《サイパン島同胞臣節を全うす》(以上、東京国立近代美術館)、《美しいスペイン女》(トヨタ市美術館)、《校庭》(ポーラ美術館)、《ノートル=ダム=パリ、フルール河岸)(ランス美術館)、《聖母子》(ノートル=ダム大聖堂)などなど。図録あり(288ページ、2300円)。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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