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紀伊風土記の丘「学校にあるたからもの」、奈良博「忍性」、和歌山市博「玉津島」鑑賞記

この10日の間に鑑賞した展覧会の感想をまとめ出し。

8月11日
和歌山県立紀伊風土記の丘
 企画展 学校にあるたからもの
(7月16日~9月4日)

 和歌山県下の学校にかつて設置され、忘れられつつある郷土資料室に収蔵されている資料に着目し、その調査に基づく成果を展示公開。県立橋本高校の陵山古墳出土品は、明治期の調査以来行方不明であった出土資料。海南市立黒江小学校には、南葵文庫印が捺された真田氏・織田家・鷹司家の系図が収蔵。御坊市立名田小学校にはご当地ものの幕末期の道成寺縁起絵巻、太地町立太地小学校からは捕鯨絵貼交図額など。郷土資料室の歴史に光をあてることで、近代期における各地域の資料保存の歴史と学校が果たした重要な役割をも浮かび上がらせる、極めて意欲的な取り組み。図録なし。

8月16日
奈良国立博物館
 生誕800年記念特別展 忍性-救済に捧げた生涯-
(7月23日~9月19日)

 生涯を衆生救済に捧げた律僧忍性の回顧展。忍性の肖像や自筆書状とともに、ゆかりのある額安寺、西大寺、般若寺、竹林寺、鎌倉極楽寺、三村山極楽寺などの関係資料を集約して、その生涯を時系列でたどる。極楽寺の忍性菩薩坐像は、特徴的な面貌表現に優れる頭部について、忍性生前の寿像、ないし没後すぐの造像の可能性が提示される(体部は室町時代の補作)。同寺の興正菩薩叡尊坐像も出陳(頭部が鎌倉時代〈嘉元4年・1306〉)。展示最終章には、額安寺・竹林寺・極楽寺の忍性墓に納置された、銅製忍性骨蔵器3合が観者を囲むように展示。本展の中で最も象徴的な空間であり心動かされる。ほか、永仁6年(1298)に極楽寺住持の忍性が唐招提寺に寄進した東征伝絵巻が全巻公開(前後期巻き替えあり)されているのも贅沢。図録あり(294ページ、2500円)。アニメ「笑顔のお坊さん 忍性」が附録で付く。
 新装なった本館展示をようやく鑑賞。空間全体が柔らかく明るい環境は観者にとってストレスが少なく、荘厳を演出しすぎないのも美術史展示の場として健全。室生寺より新発見の二天像に驚き、破損仏像残欠コレクションをかぶりつきで楽しむ。

8月20日
和歌山市立博物館
 特別展 玉津島-衣通姫と三十六歌仙-
(7月16日~8月21日)

 和歌三神の一柱、衣通姫(そとおりひめ・そとおしひめ)を祭神とする和歌浦・玉津島神社の歴史と文化を、本年に市指定文化財となった玉津島神社文書・奉納和歌・神宝類を中心に紹介する。和歌神として宮中とのつながりの深さを、後奈良天皇宸筆「南無玉津島明神」神号や、霊元天皇奉納の仙洞御所月次奉納和歌巻物、近衛家奉納の明和4年(1767)神輿(県指定、パネル展示)などで示し、紀伊徳川家との関係では徳川頼宣書状や、狩野興甫筆三十六歌仙額がずらり。ほか、本居宣長・大平ら国学者関係資料も。絵画資料としては、狩野派、土佐派、住吉派ほかの和歌三神像のバリエーションを集め、大変参考になる。神像図像の観点からは、唐装の玉津島明神像、和装の衣通姫像の二系統の存在は、紀ノ川中流域の地主神である丹生都比売神社祭神・丹生明神(丹生都比売)と共通するもので、その影響関係がうかがわれる。彫刻では狛犬一対は中世的表現が残る堅実な作例で、社殿安置の兎像一対も写実表現に優れた名品(近代か)。図録あり(98ページ、1000円)。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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