10月8日
大和文華館
特別展 呉越国-西湖に育まれた文化の精粋-
(10月8日~11月13日) 浙江省博物館・臨安市文物館の所蔵資料を核とした初めての「呉越国」展。国王銭氏による投龍簡祭祀(道教儀礼)に関する資料を冒頭に配置し、玉器・磁器・金属工芸の精華とともに、銭氏五代の崇仏のありようを阿育王塔・仏像・経典によって紹介する。銭弘俶の発願により造られた阿育王塔は、雷宝塔出土の開宝5年(972)造立の銀製阿育王塔、万仏塔出土の顕徳2年(955)造立の銅製阿育王塔、慧光塔出土の乾徳3年(965)造立の鉄製阿育王塔の、異なる素材の3基を展示。あわせて日本国内の銭弘俶塔として、永青文庫(細川護立収集品)、東京国立博物館(熊野・那智経塚出土品)、大峯山寺出土の破片2個体分を集める。仏像は万仏塔出土資料から16点(10~11c)。唐風を色濃く残すもの、宋様式への展開のみえるものなど、過渡期の様式のさまざまを鑑賞。台座・光背を含めて半肉に鋳造した定印如来坐像は、作風や形態、細部の形式など、日本の10~12世紀彫像と比較したくなる(比較が成立するかどうかが問題)。コレクションに埋没しない、担当学芸員の専門性をまっすぐに押し出した学術的な展覧会を作る姿勢は大和文華館のよき伝統であり、同館の推進力ともいえる。図録あり(170ページ、2700円)。
飛鳥資料館
特別展 祈りをこめた小塔
(10月7日~12月4日) 奈文研が新たに収蔵した百万塔の公開を軸に、小塔供養とその信仰を紹介する。注目は、国内に伝来する銭弘俶八万四千塔の集約で、黒川古文化研究所塔(伝来不詳)、京都国立博物館塔(張延済所持品)、奈良国立博物館塔(伝来不詳)、天野山金剛寺塔(伝・天野山塔の尾出土)、金胎寺塔(重文)、来迎寺塔(金胎寺伝来)、福岡・原遺跡出土の塔残欠(方立)の7個体が並ぶ。大峯山寺出土の破片2個体分は、大和文華館での展示終了後、こちらでも展示される由。このうち金胎寺塔は江戸時代に舎利塔として改造されているが、それとほぼ同じ外観をみせる来迎寺塔については、構造上の諸特徴から金胎寺塔を元にした近世の倣古作とされる。なお、国内に残る銭弘俶八万四千塔は12個体(完形品9、部品3)で、大和文華館展示の4個体と、九州国立博物館「高山寺と明恵上人」で展示中の誓願寺塔とあわせ、全資料が公開中という奇跡。図録あり(54ページ、1100円)。
両館での銭弘俶塔祭りはおそらく偶然のようで、天野山金剛寺塔の現品が飛鳥資料館、同寺の宝篋印陀羅尼経・附宝篋印経記(重文)が大和文華館と、大変な調整があっただろうことをうかがえる。阿育王塔は仏教工芸のみならず、石造物、考古学、東アジア文化研究等々、あちこちに派生するテーマであり、この奇跡の機会に、ぜひ合わせてのご鑑賞を。
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