11月14日、早朝に出立して、福井市へ。
福井市立郷土歴史博物館
特別展 福井の仏像-白山を仰ぐ人々と仏たち-
(10月14日~11月23日) 白山開山1300年を来年に控え、霊峰白山を仰ぐ福井嶺北地域に伝えられた仏像を一堂に集めて紹介する。修理成った滝波町五智如来堂の五智如来坐像のうち中尊大日如来坐像(12世紀)は、肉髻・螺髪を表して智拳印を結ぶ姿(手先を除く腕部は当初材との由)で、着衣の細部形式に混乱があることも含め、特殊な図像に基づくものか。長運寺十一面観音立像(10世紀)は腕部、天衣遊離部を含めた頭体の大略を極力一木より刻出し、頭上面(亡失)を上下2段に配す図像的特徴や、裙裾を浮かせる軽やかな印象など、代用檀像の系譜に連なる新出の重要作例。10世紀も早いころまで遡りそう。大滝町神宮堂の虚空蔵菩薩坐像(9世紀)は、福井を代表する平安時代初期彫像であるが、台座も出陳されたことで華盤より下に中世(平安後期か)の部材を残していることが把握され、信仰の蓄積を体感する。越前町八坂神社の菩薩形坐像(11世紀)は、部材の欠損もあるが、その自然な抑揚表現は、いまだ定型化していない定朝遺風継承期の作風と感じる(定朝様ムズカシイ)。同社の十一面女神坐像(12世紀)ともどもじっくり鑑賞しながら、いつか現地の訪問を心に期す。ほか越前市荒谷町観音堂の聖観音立像(12世紀)、泰澄寺僧形神坐像(9~10世紀)など、日本彫刻史・宗教史・地域史研究の上で重要な情報を提供している、魅力あふれる仏像の数々を堪能する。図録(108ページ、1800円)には、出陳された全作例の正面・側面・背面ほかの図版が掲載され有益。また「神社に祀られる仏像」「仏像が動く」「朽ちかけた仏像を祀る」といった6篇のコラムも、仏像を引き継いできた人々へのリスペクトに溢れて充実の内容。会期中のイベントや広報もアイデア溢れるもので、博物館がその使命を果たしていくための最大の原動力は、やはり熱意ある学芸員であることを実感する。
鶏足寺・渡岸寺観音堂(向源寺)・小谷寺 福井から長浜まで戻って、仏像巡り。紅葉の鶏足寺では善男善女の団体がバスで次々訪れる中、世代閣の薬師如来立像、木心乾漆の十二神将立像、魚籃観音立像、十社権現像をじっくり拝観。一方、渡岸寺観音堂はひっそりとしていて、国宝十一面観音立像をしばし独り占めする最高の贅沢。小谷城の麓にある小谷寺では本尊の特別開帳中。7世紀の銅製菩薩半跏像で、洗練された出来映えを示す重要作例。框と迎蓮からなる木製台座には文明12年(1480)の墨書がある(同寺パンフレット)ということも貴重な伝来情報。
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