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京都国立博物館「皇室の御寺 泉涌寺」ほか鑑賞記

京都国立博物館
 特集陳列 皇室の御寺 泉涌寺
(12月13日~2月5日)

 最終日に滑り込み。泉涌寺及び塔頭の文化財を集めて展観する。塔頭来迎院の秘仏、三宝荒神坐像が寺外初公開。鎌倉時代、13世紀前半慶派仏師の有力者の作例。その眷属として伝わる護法神立像5躯(京博寄託)もともに並ぶ。一面四臂、着甲する小島荒神であるが、不思議な形の冕冠を着け、護法神の数も多く、特殊な信仰背景のあったことを思わせる。寛喜2年(1230)に湛海によって請来された観音菩薩坐像(楊貴妃観音像)もお出まし。面長でまなじりが切れ上がる宋仏画同様の表情をみせる面相部では、微細な抑揚を伴った柔らかな肌の質感や、細かく整然と刻まれる髪の毛筋など細部まで丁寧で、単純で観念的な体躯の立体表現とは対照的。異国感溢れる豪華で極めて大きい冠飾が良好に残されていることも含め、東アジア彫刻史研究上、極めて重要な作例と再認識。同寺の別堂に安置される月蓋長者立像を、本来は脇侍であったと判断して、横に並べる。同室では近時快慶作と判明した宝冠阿弥陀如来坐像、東博に所蔵される泉涌寺旧蔵の阿弥陀如来立像、開山俊ジョウ律師坐像、塔頭戒光寺の浄業律師坐像と、優れた鎌倉時代彫刻を堪能。ほか、嘉禄3年(1227)俊ジョウ律師像、嘉定3年道宣律師・元照律師像などの仏画、俊ジョウ筆附法状など書跡、典籍、工芸品などなど。京都の寺社の文化財調査と展示は京博の学術活動の根幹。ナショナルミュージアムであるとともに、地域博物館としての役割を果たされるこうした機会は、本当に有益。図録ないが、『新版古寺巡礼 京都27 泉涌寺』(淡交社、2008年、1600円)に概ね図版あり。

 名品ギャラリー 神像と獅子・狛犬
(12月13日~2月19日)
 特別公開 修理完成記念 鳥取・三佛寺の蔵王権現立像
(1月17日~2月19日)

 初見の神像を堪能。鉄舟寺男神立像は、寺伝では摩多羅神とされる威相の束帯像。鎌倉時代。直立するも材がややねじれて頭が傾く。市比賣神社の女神坐像は腕に乳児を抱く平安後期~鎌倉初期の作例で、神像として他に類例を知らない特殊な姿。乳児ながら頭髪は真ん中分けで長く女性表現のよう。当該時期の乳児彫像としても興味深い作例。三佛寺蔵王権現立像は修理完成後のお披露目。10世紀末~11世紀ごろ。右足を蹴り上げない作例ではあるが、足先を外に向けてやや高さを違えているのは、ほぼ同等の表現かとも感じる。

京都産業大学むすびわざ館ギャラリー
 企画展 仏像修理の現場-美術院国宝修理所・伝統のわざと新しいわざ-
(1月23日~3月11日)

 仏像修理の理念や現場の様子を、東京・浄真寺の九体阿弥陀像の修理についての情報を中心にパネルで紹介し、あわせて実際に使用している鑿や砥石、鋸などの諸道具を展示。ほか東大寺南大門金剛力士像の顔や足の原寸大石膏像、クスノキ・カヤ・ヒノキ材製粗彫り像と木っ端なども。実物資料は京産大所蔵の阿弥陀如来立像(鎌倉時代)を参考出陳。図録なし。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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