3月10日、締め切り間際の原稿を抱えて東京へ。
根津美術館
特別展 高麗仏画-香りたつ装飾美-
(3月4日~3月31日) 泉屋博古館・根津美術館の所蔵品を核として日本伝来の高麗仏画を集める。昨秋の泉屋博古館会場に続く巡回で、会期を短めに設定して展示替えはほぼなし。阿弥陀如来のコーナーに根津美術館所蔵の高麗仏画が6幅並び壮観。この光景が展示計画の源だったのかも。茨城・大高寺観経十六観変相図、埼玉・法恩寺阿弥陀三尊二比丘像、京都・聖澤院帝釈天像、神奈川・円覚寺地蔵菩薩像、東京・浅草寺水月観音像、広島・不動院万五千仏図と、東京会場のみの寺院出陳資料を重点的に鑑賞。万五千仏図は会場に掲示された拡大パネルで細部確認(ありがたい)。高麗時代の仏画の特徴と様式の展開、そしてその魅力を明らかにする美術史展示であるが、天竺により近い唐土より渡ってきた舶載仏画を憧憬し続けた外国文化受容の歴史(前近代だけでなく、近代以降も)展示でもある。宋元明清仏画・朝鮮仏画も含めた展示、どこかでやってほしい。図録あり(208頁、2000円)。
興福寺中金堂再建記念特別展示 再会-興福寺の梵天・帝釈天-
(1月7日~3月31日) 元、興福寺東金堂安置の定慶作根津美術館帝釈天立像と、対になる興福寺梵天立像の「再会」展示。帝釈天の後補部分を見極めながら2躯を比較してじっくり鑑賞。高麗仏画展出陳の帝釈天像とも着衣形式を比べる。
びわ湖長浜 KANNON HOUSE
高月町片山 片山観音堂 十一面観音立像
(1月31日~3月12日) 初訪問。長浜市内に伝わる観音像1体を、数ヶ月ごとに交代しながら出開帳を行う画期的なコンセプト。片山観音堂十一面観音像は室町時代後期の作例。この時期は比較的造像機会が多く、周辺地域に共通する作風の像がありそう。比較したり分布を把握すると、地域史の一端が見えるだろうと思いつつ鑑賞。仏像の魅力は、表現の洗練だけにあるのではなく、安置されてきた場の歴史を体現しているというところにもあると思う。展示でも地域の風景をともに紹介して、長浜の魅力と、伝えてきた人びとの信仰を伝えている。「国家」の美術史を体現する場である東博の近くに、「地域(民衆)」の美術史を対比的に提示する場が構築されたことは、とても重要(大袈裟ではなく)。
東京国立博物館
特別展 春日大社展-千年の至宝
(1月17日~3月12日) 春日大社式年造替を記念した春日大社と春日信仰の名宝展。展示の核は、春日大社古神宝類と、春日曼荼羅、そして春日権現験記絵。中でも春日曼荼羅は鹿曼荼羅も含めて30幅、春日権現験記絵は宮内庁本・春日本・春日一巻本・陽明文庫本・徳川美術館本・紀州本・新宮本・帝室博物館本を集め、特別展とは別に特集「春日権現験記絵模本Ⅲ-写しの諸相-」(1月17日~3月12日)も連動させて開催する充実ぶり。春日権現験記絵は、展示室の各所に単巻で配され画面内容で展示のストーリーをリードする「参考図版」的資料としても活用。彫刻では、春日神造像伝承を持つ円成寺十一面観音立像を選択(おおそれなら、伝・仏師春日作の仏像をどっと…)。ほか春日本地仏として善円作十一面観音立像(奈良博)、文殊菩薩立像(東博)のほか、善円(善慶)作地蔵菩薩立像(薬師寺)など。特に絵画史分野について、春日信仰美術研究の蓄積をふまえた集大成の内容。図録(396ページ、2400円)あり。改めて、南都の地域史を踏まえた奈良博の「おん祭と春日信仰の美術」シリーズの成果は重要だと感じる(奈良博でも「大・春日信仰美術展」見たい)。
特集 金春家伝来の能面・能装束
(1月31日~3月26日) 春日大社展に連動して、大和猿楽四座のうち、東博所蔵の金春家伝来能面・能装束をまとめて展示。能面、能装束とも、難解で多様な種類を分かりやすく伝えることに意を尽くして紹介。能面の作者判定の問題や写しの諸相、あるいは科学的調査の成果も盛り込んで、美術史分野における能面研究の底上げを図る近年の同館の研究成果を反映。古様な延命冠者と、「平泉寺/財運/熊太夫作」銘を有する若曲見をじっくり鑑賞。若曲見は完成度高く、銘を見ずに15世紀と判断できる自信なし。勉強々々。図録あり(136ページ、1500
円)。
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