6月29日
京都国立博物館
名品ギャラリー 閻魔と地蔵
(6月13日~9月3日) 京都での仕事を終えてから立ち寄る。新町地蔵保存会の地蔵菩薩坐像(平安時代前期・9世紀・重要文化財)と、その複製を並べる。複製は京博のX線CTでデータ計測し、外部業者がデータ補正したのち京博の3Dプリンターで出力、京都市産業技術研究所が漆塗り仕上げを施して完成させたもの。今後、防犯・防災のため伝来してきた堂舎に実物の代わりに安置されるもので、信仰対象であることを考慮して干割れの再現や破損部位の塗り分けは行われなかった由。
和歌山方式(「集落の過疎化高齢化のもと空前の文化財盗難被害に遭うなか緊急措置としてレプリカを活用せざるを得ない状態まで追い詰められた和歌山方式」の略)の仏像レプリカは、県立和歌山工業高校でデータ計測、CADソフトで修正、3Dプリンターで出力(ABS樹脂製)し、博物館で部材接着・表面研磨(アセトンで溶かしてヤスリがけ)ののち、和歌山大学教育学部美術教育専攻の学生がアクリル絵の具で着色して完成させている。新技術を活用し、文化財の保存・継承につなげていく上では、なぜその方法によるのかという理論の構築も大切。京博方式の漆塗り仕上げというのも、一つの回答。
名品ギャラリー「伝説の画家たちが描いた仏画」(6月13日~7月23日)では初見の宋元画を堪能。今宮神社線彫四面石仏(重文)もスケッチしながらじっくり鑑賞。
7月1日
大和文華館
特別展 没後三〇〇年 画僧古磵
(5月20日~7月2日) 休講した講義の補講を兼ねて鑑賞。江戸時代前期の浄土宗僧で、京都・奈良で活動した画僧明誉古磵(みょうよこかん・1653~1717)の回顧展。報恩寺当麻曼荼羅図、浄国院大経曼荼羅図、大宗寺無量寿経曼荼羅図・阿弥陀経曼荼羅図、光伝寺涅槃図、薬師寺薬師浄土曼荼羅図など大画面の仏画、古磵らしい特徴ある風貌の薬師寺法相十八祖像や三祖師像、濃彩で群像を生き生きと活写した薬師寺縁起絵巻や知恩院円光大師贈号絵巻、闊達で諧謔味のある墨画の大黒天図(生涯に2000枚を描き寄進したという)、そして版本の挿図まで、幅広い画僧の活動を一望する。泉涌寺の縦15.1m、横7.6mの大涅槃図(未出陳)は最晩年の絶筆と知る。驚き。これからの近世仏画研究の上で着目すべき重要な人物と認識する。図録あり(192ページ、2600円)。大谷徹奘「画僧・古磵の生涯」、古川攝一「画僧古磵の仏画について」所収。また画僧・古磵研究会監修、大谷徹奘編『画僧古磵Vol.1 街かどの福の神と多彩なる水墨画の世界』も頒布(108ページ、2160円)。落款が大きく掲載されていて有益。
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