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奈良博「源信 地獄・極楽への道」、高野山霊宝館「正智院の名宝」鑑賞記

7月17日、祝日ながら大学講義。終了後、重要な展覧会を巡ってせめてもの祝日気分を味わう。

奈良国立博物館
特別展 源信 地獄・極楽への道
(7月15日~9月3日)

 『往生要集』の作者源信(942~1017)千年忌を記念して、源信の生涯の事蹟とともに、中世社会において受容された地獄・極楽の死後世界のイメージを、優れた絵画資料を多数集めて提示する。地獄絵では、聖衆来迎寺の六道絵15幅、東博地獄草紙、奈良博辟邪絵(以上全て8/6まで)、極楽図では当麻寺當麻曼荼羅(貞享本・重文)、金剛峯寺法華経・大般若経見返絵、来迎図では法華寺阿弥陀三尊及び童子像(~8/20)、知恩院阿弥陀聖衆来迎図(早来迎、~7/30)と国宝展状態。新長谷寺阿弥陀如来立像及び厨子(重文)は大型の厨子奥壁の極楽図と扉絵の聖衆が、彫刻の来迎形阿弥陀立像とハイブリッドに融合(展示は阿弥陀像を別置。図録に安置状況の図版あり)。阿弥陀による救済のイメージが凝縮した好例。彫刻では即成院二十五菩薩坐像(3駆づつ展示替え)、保安寺阿弥陀三尊像と奈良博地蔵・龍樹菩薩坐像を組み合わせて阿弥陀五尊像を再現。図録あり(328ページ、2300円)。

高野山霊宝館
 企画展 正智院の名宝
 (7月15日~10月9日)

 正智院が兼務する善集院の本堂再建と本尊修理完成を記念して開かれる名宝展。正智院本尊阿弥陀三尊像が初公開。すでに報告があるが(岩田茂樹「高野山正智院の阿弥陀如来坐像」『鹿園雑集』5、2003)、1200年前後の運慶にごく近い慶派仏師の作例。報告や展示では脇侍の一具性については慎重な態度であるが、中尊像と観音像の風貌はよく似る。観音像の髻が平安後期風を丈高くした改変形であるのも過渡的。修理が施された正智院不動明王立像は、同時毘沙門天立像(重文)と対になるものと判明。本尊三尊像と組み合わされるとすれば、運慶周辺の同種の五尊像との関係が注意されるが、やや降るか。不動・毘沙門両像は今後奈良博寄託との由(住職ごあいさつに明記)。善集院本尊も中尊は鎌倉時代の阿弥陀像で、観音像は南北朝時代。仏画では普賢延命菩薩像、八字文殊曼荼羅図、紅玻瑠阿弥陀像、八宗論大日如来像(以上全て重文・鎌倉時代)、最古の四社明神像(鎌倉時代)、稚児大師像、狩場明神像、影向明神像(以上室町時代)と、重要作例がずらり。また近年の同寺聖教蔵の調査研究成果も反映され、鎌倉前期の正智院主道範関連資料や、各種版本(高野版・根来板・浄土板・宋版・高麗版・西大寺版等)や連歌資料、特殊な図像類も多数出陳。正智院発行による展示内容と共通する図録『高野山正智院の歴史と美術』あり(114ページ、2200円)
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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