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東京国立博物館「運慶」、東京芸大美術館「素心伝心」、栃木県立博物館「中世宇都宮氏」鑑賞記

東京藝術大学大学美術館
 シルクロード特別企画展 素心伝心-クローン文化財 失われた刻の再生-
(9月23日~10月26日)

 最新技術と手業を組み合わせた芸大製文化財レプリカである「クローン文化財」の展示。法隆寺金堂釈迦三尊像の復元は、三次元計測したデータ(ただし背面側は未計測)をもとに3Dプリンターで出力した原型から蝋型を作成し鋳造する。敦煌莫高窟第57窟やキジル石窟航海者窟の再現や、バーミヤン東大仏仏ガン天上壁画の再現など、精度の高い複製が文化財の維持や継承に活用できる場面は多くあり、まさに制作者養成を行う芸大らしいプロジェクト。特許取得技術との由。和歌山で高校生大学生と文化財レプリカ作りを行っている立場からは、精度の高さを追求していく当然の方向性とともに、手軽に身近に活用できる低コストのレプリカ作成方法の模索も推し進めて欲しい。会場内の香りや音の演出や、釈迦三尊両脇に垂らしたスクリーンに投影する光背銘を使ったインスタレーションなどは、レプリカを活用した新たな空間芸術の試みということのよう。図録あり(144ページ、1500円)

東京国立博物館
 特別展 運慶
(9月26日~11月26日)

 興福寺中金堂再建記念として運慶の仏像を集約するとともに、父康慶及び子息・周辺仏師の仏像を一所で展観する意欲的な展示。十重二十重の大観衆。長岳寺阿弥陀三尊像(中尊の光背は未出陳)が数十年ぶりに寺外で公開されている間(~10/29)に駆け込んで無事鑑賞。運慶芸術の数々を間近で堪能するとともに、円成寺大日如来坐像の中の康慶、中金堂四天王立像(元南円堂所在)の中の運慶、金剛峯寺八大童子像の清新さと解放感、東大寺重源坐像の中の古典などなど、かたちの中に残された痕跡にほの見える歴史情報に思いを致す。展覧会開催に合わせて行われたCT撮影の成果も紹介され、運慶研究の進展に寄与。六波羅蜜寺地蔵菩薩坐像の像内に詰め込まれた大量の納入品は、いつの日か解体修理の時が来たとき、康慶・運慶の歴史的位相をよりはっきりと定める画期的な情報を提供するものであろう。鑑賞しながら、運慶研究の盛り上がりに乗じて私も論文書かねばっ!と胸にぽっと火を灯してもらう。図録あり(322ページ、3000円)。再訪を期す。

栃木県立博物館
 特別企画展 中世宇都宮氏-頼朝・尊氏・秀吉を支えた名族-
(9月16日~10月29日)

 宇都宮市に建つ県立博物館の開館35周年記念として、宇都宮を本拠とした武士団宇都宮氏の中世史を、多様な資料で叙述する。中世文書を丁寧に多数集めて展示の骨子を形成するとともに、その歴史叙述の上で知恩院法然上人絵伝(国宝)、光明寺當麻曼荼羅縁起(国宝)、清浄光寺一遍聖絵(国宝)、専修寺善信聖人親鸞伝絵(重文)など絵画の優品を全国より集め、また肖像画研究の上で今後重要視されることが確実である新発見の足利尊氏像(個人像)が提示されるなど、絵画資料が充実。建長5年(1253)の岩谷寺薬師如来立像、建長4年の蔵福寺阿弥陀三尊像、弘長元年(1261)の西明寺千手観音菩薩立像、木幡神社の馬頭観音坐像など、栃木を代表する鎌倉時代彫像を間近に鑑賞。京都府大念寺の阿弥陀如来立像と納入品を鑑賞できたのもありがたい。図録あり(240ページ・2000円)。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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