9月28日、出張帰りに用事で立ち寄り、満を持して鑑賞。
和歌山市立博物館
特別展 お殿様の宝箱 南葵文庫と紀州徳川家伝来の美術
(9月15日~10月21日) かつて紀州徳川家に伝来した数々の資料を、南葵文庫旧蔵品・南葵音楽文庫旧蔵品・紀州徳川家売立品の枠組みから集約する。紀州徳川家の赤坂邸内に設置された南葵文庫は、関東大震災により焼失した東京帝国大学図書館にその蔵書が引き継がれ、多くが現存する。南葵音楽文庫の資料は読売日本交響楽団に引き継がれ現在和歌山県博寄託。そして3度の売立により散逸した紀州徳川家伝来品は、さまざまな所蔵者の元に散らばって収蔵される。売立品が集約されるのはこれが初めての機会で、鹿苑寺の伝牧谿江天暮雪図(~9/30)、岡山県立美術館の牧谿筆老師図(10/2~)、個人蔵仇英筆山水人物図巻、たばこと塩の博物館収蔵(大蔵省専売局旧蔵)のたばこ盆4組、徳川治宝が収集し現在国立歴史民俗博物館所蔵の雅楽器(笙・龍笛・琵琶)など、優品が集まって絢爛豪華。江雪左文字(国宝・太刀銘筑州住左)はパネルで紹介。
重要なのは最後に、南葵文庫を創立した徳川頼倫、南葵楽堂・音楽文庫を創立した徳川頼貞の社会事業についても、家財を費やしたミュージアム事業への先鞭と史跡名勝天然記念物保存協会の運営、そして芸術家をサポートした芸術文化支援事業として顕彰する視点を設定したことで、それらを現代につながる文化事業の先駆けとして肯定的に位置づけながら、高邁な諸事業による家産の破綻が売立にいたった経過をも如実に示していることである。一見、紀州徳川家の名宝展であっても、紀州徳川家の家産の整理から散逸にいたる近代史を展示室内全体で見事に立ち上げて、現代のミュージアムやライブラリー、文化財保護行政を巡る問題に接点を設けた重厚な内容となっているのは担当者の力量。図録あり(94ページ、1000円)。
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和歌山市立博物館ウェブサイト
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