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大津市歴博「神仏のかたち」、京博「京のかたな」、福岡市博「浄土九州」、九博「オークラコレクション」鑑賞記

自館の特別展開幕後、代休取って見るべき展示を見る。

10月16日
大津市歴史博物館
 湖信会設立60周年記念企画展 神仏のかたち-湖都大津の仏像と神像-
(10月13日~11月25日)

 大津市内の十社寺によって組織される湖信会60周年記念として、各社寺及び関連寺院所蔵の仏像・神像・仏画を、尊像の種類別に集めて紹介する。石山寺大日如来坐像(快慶作)や西教寺薬師如来坐像といった著名な作例とともに、聖衆来迎寺の愛染明王坐像や吉祥天立像など、近年の同館の調査によって見いだされた新出資料も多数。作品に付せられた各作例の特徴を的確に伝えるパネル(図録にも掲載)は、仏教美術を親しみやすく、またより深く鑑賞するための視点を提供する丁寧なもの。図録あり(144ページ、1200円)。

京都国立博物館
 特別展 京のかたな-匠のわざと雅のこころ-
(9月29日~11月25日)

 平安時代後期から現代までの山城鍛冶の作刀の歴史を、三日月宗近(東博・国宝)、後藤藤四郎(徳川美・国宝)、有楽頼国光(個人・国宝)、圧切長谷部(福岡市博・国宝)などなど、数々の名物を含む177口(展示替えあり)の刀剣(太刀・刀・脇差・短刀・剣・鑓・薙刀)によって凝縮して伝える意欲的な展示。刀剣ブームの中であえて総花的な内容にはせず、地域を絞った緻密で重厚な刀剣史叙述に徹していて好感。一方本館(明治古都館)のイベント展示は熱量不足。図録あり(276ページ、2600円)。

10月17日
福岡市博物館
 特別展 浄土九州-九州の浄土美術- 
(9月15日~11月4日)

 九州における浄土(阿弥陀)信仰の所産を、地獄・極楽の対比を導入にして、鎮西上人弁長による浄土宗の教線拡張、来迎美術の諸相、真宗寺院萬行寺の調査成果報告から構成して紹介。肥後国川尻荘の満善寺から禅林寺に伝来した正安4年(1302)制作の當麻曼荼羅(重文)、福岡・萬行寺の仁治3年(1242)快成作阿弥陀如来立像、事前調査で像内より承久4年(1222)仏師琳賢銘のある納入品が取り出された佐賀・弥福寺阿弥陀如来立像のほか、佐賀・称念寺、福岡・玉樹院、鹿児島・光明禅寺といった、歯吹き・螺髪植え付け・仏足文表現に伴う銅製棒枘などを伴う生身像も集める。九州全体を俯瞰した仏教美術研究の最前線に接する貴重な機会。図録あり(240ページ、2500円)。
 
九州国立博物館
 特別展 オークラコレクション-古今の美を収集した父子の夢- 
(10月2日~12月9日)

 大倉集古館改修中の機会に、オークラコレクションの精華を紹介。類品の少ない十六羅漢像、普賢菩薩騎象像(国宝)、古今和歌集(国宝)、高麗時代の乾漆菩薩坐像など鑑賞。図録あり(256ページ、2400円)。実業家による広汎な美術品収集とコレクション形成のようすが整理されていて参考になる。
 また文化交流展示室の特集展示「坂本五郎コレクション受贈記念 北斎と鍋島、そして」は古美術商のコレクション寄贈を受けた展示であるが、特別展とも一部資料を連携させ、全体として個人コレクションに脚光を当てる構成とする。
 近現代期の古美術コレクション形成には正負両面の歴史があるが、歴史の断絶(伝来情報の喪失)を収集者のパーソナリティーによって上書きし正当化することではない、現代社会において共有すべき知見へと昇華する工夫は、公立館の場合特に考え続けないといけない課題。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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