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島根県立古代出雲歴史博物館「神々が集う-神在月と島根の神像彫刻-」、上淀廃寺跡・上淀白鳳の丘展示館、鳥取県立博物館「鳥取画壇の祖 土方稲嶺-明月来タリテ相照ラス-」鑑賞記

11月5日、前日に思い立ち、月曜日に開館している山陰地方の博物館・美術館を巡る往復850キロの日帰り旅。

島根県立古代出雲歴史博物館
 企画展 神々が集う-神在月と島根の神像彫刻-
(10月26日~11月26日)

 陰暦10月を神在月と呼ぶ出雲地方の習俗に合わせて、県内に伝来する200軀を超える神像を一所に集める。第一部は多数の典籍から神在月伝承の形成史を紹介、第二部が神像展。成相寺の23軀の神像群(県指定)はもと鎮守熊野権現(現在は廃絶)安置の諸尊とのことで、熊野信仰との関係性を念頭に置きつつ鑑賞(簡単に答えは出ないけれど)。騎馬神像は古代風の鎧を纏った特殊な姿。圧巻は出雲文化伝承館所蔵、日御先神社宮司小野家旧蔵の171軀の神像群。一部は伝承館で常に展示されているが、その全貌は今回が初公開。展示室内に所狭しと林立するその群像に圧倒される。平安時代から江戸時代にかけて作られた、大きさ、尊格、表現の巧拙、保存状態もさまざまな神像群で、一所安置のものではあり得ない。推測であるが、神仏分離時の神像撤去、あるいは神社合祀による神体の整理に伴って、出雲地方の一定の範囲の神像が集約されたものと見られる。群として神像の文化史をさまざまに物語るもので、この量にこそ重要な意義があるといえる。神像研究の糸口は、まだまだ膨大に残されている。図録は展示の第2部のみ。『島根の神像彫刻』(96ページ、1500円)。必携。

上淀白鳳の丘展示館
 ミニ企画展 上淀廃寺の瓦
(10月13日~11月25日)

 鳥取県淀江町の国史跡上淀廃寺跡より出土した資料及び、金堂の堂内空間を原寸復元したガイダンス施設。同寺の建立は7世紀末(~8世紀初)で、出土塑像片等から本尊像は8世紀半ば~後半に交代した模様。大迫力の丈六三尊像(復元監修山崎隆之氏、松田誠一郎氏)は、未彩色の塑像風で仕上げて効果的。出土した壁画片や塑像片の一部も常設展示され充実。企画展では上淀廃寺跡より表採、発掘された瓦と、上淀廃寺式軒丸瓦(細長い花弁に稜線と隆起がある特殊なもの)の広い分布を紹介。解説資料あり(A4・8ページ)。中原斉『よみがえる金堂壁画 上淀廃寺』(新泉社、1600円)も購入。鑑賞後、近隣の上淀廃寺跡(国史跡)を見学。発掘時の状況を再現するタイプの史跡整備。三塔並立の不思議(ただし北塔は心礎のみで基壇痕跡なし)。

鳥取県立博物館
 鳥取画壇の祖 土方稲嶺-明月来タリテ相照ラス-
(10月6日~11月11日)

 南蘋派や円山派に学んで京や江戸で活躍し、晩年には鳥取藩絵師となった土方稲嶺の画業を紹介。金箔地に濃彩で描く猛虎図屏風、銀箔地に墨のみで岩と波濤を描く荒磯図屏風、絹本に墨画で描いた葡萄栗鼠図等々、さまざまな技法、画風を駆使した幅の広い作品を集約する。お目当ては、平成28年度に和歌山県の興国寺より鳥取県立博物館に譲られ、本年8月には鳥取県保護文化財にも指定された旧興国寺書院壁画、22枚33面。複雑な気持ちではあるが、修理、指定と万全の体制で受け入れられていて、紀州において経てきた歴史も含めて、鳥取の宝として引き継がれることだろう。図録あり(232ページ、1500円)。稲嶺の画業を丁寧に追った概説(執筆山下真由美)とともに、印章・落款と売立目録収載品までを掲載した決定版。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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