「現在の像名比定は、墨書銘における像名記載順や担当仏師の序列を無視し、兄弟という関係性のみに拠った極めて曖昧なものである。奈良時代には無著よりも世親を老相にあらわしていて、十三世紀に制作された法相曼荼羅にもその伝統が受け継がれていることから、北円堂が再興された鎌倉時代においても世親を老相にみるのが一般的であったと考えられる。墨書銘における像名記載順、担当仏師の序列、再興当時における無著世親の年齢表現から、現像名には逆転の可能性も有り得る」(小倉2008-1、77頁)
1、小倉絵里子「興福寺北円堂無著・世親菩薩立像について」(『美學美術史學』22、2008年)
2、小倉絵里子「長野県伊那市薬師堂の性慶作薬師如来坐像」(『実践女子大学文学部紀要』50、2008年3月)
上記2篇をいただきました。無著・世親像について、彫刻資料の歴史的位置を正しい場所へと置き直していく作業を、美術史学という学問の道行をたどり直しながら行い、尊名の逆転の可能性を導いた部分は説得力があります。性慶の新出作例紹介も大変有用でありがたいです。
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