8月21日、無理やり隙間をこじ開けて1日休みを取り、どうしても見逃してはならない展覧会を見に九州へ飛ぶ。
九州国立博物館
室町将軍-戦乱と美の足利十五代-
(7月13日~9月1日) 室町時代の文化史を、歴代将軍の動向を軸にしつつ重要資料を集めて俯瞰する。九博での開催は、足利尊氏の筑紫落ちからの快進撃ののち室町幕府が開かれたことに基づくもよう。前田育徳会宝積経要品など尊氏自筆資料、久遠寺夏景山水図など東山御物の数々、禅林寺融通念仏縁起絵巻など将軍家が製作に関与した絵巻、黒川能の絢爛豪華な装束など猿楽の資料(輸入唐物の観点も)、そして等持院の歴代将軍肖像などなど。
等持院足利将軍坐像13軀がずらり円形に並ぶ最後の部屋は、迫力ある展示空間が構築された優れたデザインであるが、この部屋のみ撮影可とし、またフロアー中央に撮影ポジションを限定して観覧者動線との衝突を防ぐ手法はよく練られたもの。
本展に彫刻資料が少ないのは、足利将軍坐像でさえも評価が定まっていないように、これまでの室町時代彫刻史研究の停滞によるものに違いない(自戒)。室町時代政治史・文化史の中における仏像(神像)研究の必要性を痛感。図録あり(304ページ、2650円)。
熊本県立美術館
日本遺産認定記念 菊池川二千年の歴史 菊池一族の戦いと信仰
(7月19日~9月1日) 熊本県・菊池川流域の文化遺産を核とした「米作り、二千年にわたる大地の記憶」の日本遺産認定を記念して、流域の武士の消息を伝える資料群、そして信仰に関わる文化財を集めて展観する。菊池一族の精神的支柱であった大智禅師の肖像彫刻(広福寺蔵)、その大智に継承された道元所持の二十五条袈裟(広福寺蔵)、時宗の祖師像である僧形倚像(願行寺蔵)、平安時代前期の地蔵菩薩立像(康平寺)、鞠智城跡出土の金銅菩薩立像など、仏像も多数出陳。神像では玉名大神宮の男神坐像(平安時代)と菊池神社の僧形神坐像(応永10年[1403])に注目。前者は菊池則隆像、後者は菊池武士像という伝承を付随している由。神仏分離時の対応措置かと想像するが、要検証。図録あり(227ページ、2300円)。
スポンサーサイト
- http://kanbutuzanmai.blog66.fc2.com/tb.php/840-615548cd
トラックバック
コメントの投稿