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大津市歴史博物館企画展「仏像をなおす」鑑賞記

大津市歴史博物館
 伝教大師最澄没後1200年記念企画展 仏像をなおす
(7月23日~9月4日)

 延暦寺十二神将立像修復にて把握された最新の情報報告を核としつつ、大津市域の信仰にまつわる文化財がいかに継承されてきたのかを、仏像修復という視点から紹介。現在修復事業継続中の延暦寺十二神将立像はこのたび確認された銘記により、元徳2年(1330)~正慶元年(1332)に仏師頼弁によって造像されたことが判明。元岡崎の元応寺安置像。願主、作者、勧進僧と旧安置場所も分かる基準作例で、元応寺から根本中堂に移された経緯も含め、天台宗の歴史を物語る重要資料。延暦寺護法童子立像は、修理の際、頭部内からに銅造不動明王立造と水晶製五輪塔が発見。龍谷ミュージアム保管の仏像雛形からは比叡山や日吉社関連の作例をピックアップ。日吉大社の百大夫神立像とその雛形を並べるなど(そっくり!)、本雛形の美術史上の重要性を再認識。
 注目されるのは園城寺の阿弥陀如来坐像や西教寺の十一面観音立像、参考出品の北保町自治会菩薩立像など、前近代の修理における後補部材や彫り直し部分にクローズアップする(美術鑑賞の方法論とは真逆の)斬新な展示方法で、後補部分も修復履歴による伝来史を考えるための大切な歴史情報であることを具体的に示す。「仏像をなおす」ことで生じる結果の重層性(信仰性の向上/鑑賞性の向上・減少/歴史情報の復活・喪失、など)についても考えつつ展示見学。図録あり(30ページ、800円)。
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大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
仏像の研究者です。
奈良大学の教員だったりもします。

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