11月1日
神奈川県立金沢文庫
特別展 廃墟とイメージ-憧憬、復興、文化の生成の場としての廃墟-
(9月29日~11月26日) 廃墟を見つめる眼差しと表現、そこから生成される再生の萌芽という重厚で重層的なテーマを展示で表現。本法寺法華経曼荼羅、本興寺法華経曼荼羅、聖衆来迎寺六道絵、平野美術館二河白道図、京博病草紙、東大寺東大寺大仏縁起、奈良博東大寺縁起など。ほか称名寺文書のテクストの上にも廃墟イメージを浮かび上がらせる。広範な対象を少しずつ取り上げたことでテーマの中核はやや拡散したが、廃墟と再生という新たな美術史研究の手法を立ち上げる最先端の営みとその成果。図録あり(128ページ、2000円)。
鎌倉歴史文化交流館
企画展 金剛三昧院展-鎌倉殿を弔った寺院の軌跡-
(9月25日~12月2日) 北条政子創建、高野山金剛三昧院の国宝多宝塔建立八五〇年を記念し、ゆかりの鎌倉で展覧会を開催。同寺の中世文書及び近世の頂相を中心に紹介。仏像では平安時代後期の地蔵菩薩立像は後世に体型を膨らませる改造を施し、部材は現状着脱できる特殊な作例。天文五年(1536)銘を有する南都・宿院仏師作の弁才天坐像は、仏師名として「国光(源四郎)」「国次(源次)」という番匠名を示す、宿院仏師が独自の造仏を開始するごく初期の新出作例。図録あり(80ページ、1000円)。
鎌倉国宝館
国府津山寶金剛寺-密教美術の宝庫-
(10月21日~12月3日) 小田原の国府津山寶金剛寺の仏像・仏画・聖教類を紹介。本尊秘仏地蔵菩薩立像(10c)、銅造如意輪菩薩半跏像(10c)、銅造大日如来坐像(12c)、延慶2年(1309)銘を有する不動明王二童子像、応永3年(1396)制作を示唆する軸木銘のある真言八祖像など。躍動感ある動勢と筋肉表現に優れる特殊な誕生釈迦仏(鎌倉時代と果敢に判断)や文殊菩薩像として伝来した西洋画の手法による人物像(西洋童子像)など、最新の精緻な調査成果を存分に反映。近世文書も活用して資料の伝来史を丁寧に追跡するのも堅実な作業。図録あり(148ページ、1500円)。
鶴岡八幡宮宝物殿 社殿脇の宝物殿に久しぶりに入り、鎌倉時代の住吉明神倚像を拝観。
鎌倉文華館鶴岡ミュージアム
鶴岡八幡宮の季節展 秋
(9月14日~12月3日) 同社のさまざまな宝物を展観。特に刀剣にクローズアップする。国宝古神宝のうち胡籙や、重文行道面をじっくり鑑賞。図録なし。
神奈川県立歴史博物館
特別展 足柄の仏像
(10月7日~11月26日) 神奈川県西部・足柄地域に伝来する仏像神像を、各自治体による調査成果を踏まえ、飛鳥時代の塑像から江戸時代の彫像まで網羅的に集める貴重な機会。箱根神社の万巻上人坐像や男神・女神坐像、朝日観音堂の仏像群、京福寺釈迦三尊像や男神立像、蓮台寺他阿真教坐像、三嶋神社薬師如来坐像などなど、興味深い重要作例多数。興福院菩薩頭は箱根山の常行三昧堂本尊像の可能性を見て、奈良仏師成朝か康慶作の仮説を提示(図録概説)。髻形状から平安末奈良仏師は確定的で、特に成朝説は興味深い意見。箱根神社銅製男神坐像については『筥根山縁起幷序』に藤原秀衡奉納とするものにあたる可能性を提示。造像の下限を文治3年とする。本誓寺の仏足文を有する鎌倉時代の阿弥陀如来立像2軀については、中世末~近世の資料や銘記を追跡してその伝来をあとづける。こうした各作例の伝来に関する情報や資料を博捜し解釈する中で仏像を通じた地域史理解も深まるといえ、これからの仏像展・仏像研究のあるべき方向性。会場内で配布する関連文献リストもすばらしい対応。図録あり(160ページ、1500円)。
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