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和歌山県立博物館夏休み子供向け企画展「地名のなぞ!?」鑑賞記

8月7日
和歌山県立博物館
 夏休み子供向け企画展 地名のなぞ!?
(7月16日~8月21日)

 和歌山県内の地名にスポットを当て、地名形成の由来や歴史の諸相を紹介。紀伊国全体を描く紀伊国絵図等や、郡部の様相を描いた有田郡絵図や伊都・那賀両郡絵図等、和歌山城と城下のようすを一望する和歌山城下町絵図等々、同館が長年に渡り収集を続けてきた絵図・地図類をフル活用。宝来山神社の紀伊国桛田荘絵図(重要文化財)や紀美野町教委所蔵の那賀郡志賀荘絵図、紀伊国那賀郡田中荘山之絵図、日高郡下惣川村検地帳写、日高郡初湯川村検地帳写、那賀群動木村検地帳写など、荘園や村に関する資料も盛りだくさん。「地名について、あれこれと考え、“なぞ”解きすることの楽しさを知り、自分たちが住む土地に対しても愛着を持つきっかけにしていただけたら」という展示目的も明確。図録なし。

大津市歴史博物館企画展「仏像をなおす」鑑賞記

大津市歴史博物館
 伝教大師最澄没後1200年記念企画展 仏像をなおす
(7月23日~9月4日)

 延暦寺十二神将立像修復にて把握された最新の情報報告を核としつつ、大津市域の信仰にまつわる文化財がいかに継承されてきたのかを、仏像修復という視点から紹介。現在修復事業継続中の延暦寺十二神将立像はこのたび確認された銘記により、元徳2年(1330)~正慶元年(1332)に仏師頼弁によって造像されたことが判明。元岡崎の元応寺安置像。願主、作者、勧進僧と旧安置場所も分かる基準作例で、元応寺から根本中堂に移された経緯も含め、天台宗の歴史を物語る重要資料。延暦寺護法童子立像は、修理の際、頭部内からに銅造不動明王立造と水晶製五輪塔が発見。龍谷ミュージアム保管の仏像雛形からは比叡山や日吉社関連の作例をピックアップ。日吉大社の百大夫神立像とその雛形を並べるなど(そっくり!)、本雛形の美術史上の重要性を再認識。
 注目されるのは園城寺の阿弥陀如来坐像や西教寺の十一面観音立像、参考出品の北保町自治会菩薩立像など、前近代の修理における後補部材や彫り直し部分にクローズアップする(美術鑑賞の方法論とは真逆の)斬新な展示方法で、後補部分も修復履歴による伝来史を考えるための大切な歴史情報であることを具体的に示す。「仏像をなおす」ことで生じる結果の重層性(信仰性の向上/鑑賞性の向上・減少/歴史情報の復活・喪失、など)についても考えつつ展示見学。図録あり(30ページ、800円)。

大野市歴史博物館収蔵品紹介展「星」鑑賞記

8月5日
大野市歴史博物館 
 収蔵品紹介展 星
(7月16日~8月31日)

 同館寄託品の中から、星をキーワードに妙典寺紺紙金字法華経と縹糸素懸威六十二間小星兜を紹介。妙典寺経は法華経8巻及び開結からなる十巻本で、各巻に見返しに経絵が施された、元弘3年(1333)奥書を有する基準作例。大願主沙門宗俊により八幡宮宝前に施入されたものながら、この八幡宮がどこかは不明。同時期の経箱も付属する。福井県指定文化財。図録なし。

なら歴史芸術文化村「文化財研究中!-なら歴史芸術文化村×連携4大学-」鑑賞記

7月31日
なら歴史芸術文化村
 文化財研究中!-なら歴史芸術文化村×連携4大学-
(7月23日~9月19日)

 なら歴史芸術文化村と協定を結んで活動を行っている天理大学・立命館大学アートリサーチセンター・奈良県立大学・東京藝術大学の連携活動を紹介。立命館大学アートリサーチセンターによる當麻寺金堂内部仏像群の三次元計測画像のVR体験、奈良県立大学によるさわれる3Dプリンター製複製制作、天理大学による古墳の地中レーダー探査、東京藝術大学の3次元計測データを活用した模造制作など、文化財と最先端技術の融合のあり方を紹介。奈良県立大の来館者による展示仏像の撮影画像を集約して3Dデータを作る#みんなで仏像プロジェクトも興味深い試み。リーフレットあり(16ページ)。

奈良国立博物館「中将姫と當麻曼荼羅-祈りが紡ぐ物語-」鑑賞記

7月31日
奈良国立博物館
 特別展 中将姫と當麻曼荼羅-祈りが紡ぐ物語-
(7月16日~8月28日)

 貞享本當麻曼荼羅修復の完成を記念しその修理成果を公開するとともに、當麻曼荼羅を巡る文化史の広がりを紹介。根本の綴織當麻曼荼羅と同寸の縦横4m強の貞享本は、高誉上人性愚の発願により延宝5年(1677)に行われた根本曼荼羅の修理に引き続いての事業で、延宝7年(1679)作画完成ののち、貞享3年(1686)に霊元天皇宸筆の金泥銘が施され完成。貞享本軸内納入文書、そして根本曼荼羅軸内納入文書を多数紹介(全点図録掲載)。ほか光明寺・清浄心院・當麻寺の當麻曼荼羅縁起、當麻寺本當麻寺縁起絵巻、清浄光寺一遍聖絵、西寿寺・檀王法林寺・誕生寺の當麻練供養図など當麻寺の縁起と聖地景観を描く資料を多数集めて、當麻寺縁起展の様相。後半は中将姫による當麻曼荼羅の発願・作成に関する縁起言説とその受容と物語化の展開を幅広く紹介。中将姫肖像やその縁起の絵画化作品に留まらず、謡本、浄瑠璃本、浮世絵、引き札までさまざまな資料を博捜して紹介。蓮糸を紡いで絹に織り込んで制作された藕糸織阿弥陀三尊来迎図・霊山浄土図・阿弥陀聖衆来迎図(福聚寺)にて藕糸織のことをしっかり勉強。図録あり(212ページ、2600円)。

奈良国立博物館「わくわく美術ギャラリー はっけん!ほとけさまのかたち」鑑賞記

7月31日
奈良国立博物館
 特別陳列 わくわく美術ギャラリー はっけん!ほとけさまのかたち
(7月16日~8月28日)

 夏休み期間に合わせ、仏教美術の観賞基礎知識を実物資料とイラストを多用して軽やかに紹介。元興寺薬師如来立像、林小路町自治会弥勒菩薩立像、正寿院不動明王坐像、聖衆来迎寺十二天像、奈良博釈迦如来霊鷲山説法図、十一面観音立像など館蔵・寄託の優品を活用。仏画類は高さを下げて展示し、オリジナルイラストによる仏像キャラクターも約束事を踏まえた洗練度の高いもの。会場内に設けられた裸形阿弥陀如来立像模造を活用した如来着衣の着付け再現コーナーは、対象年齢層も幅広く設定でき、実験美術史学の様相も示す斬新な手法。仏像のお絵かきコーナーや貼り出す壁も設け、ボランティアさんたちが活躍。展示室内にさまざまなつながりを構築する今回の手法は、重厚な印象を伴いがちな仏教美術を広く普及する同館のこれまでの取り組みの、新たな展開といえるもの。図録あり(96ページ、1000円)。

高野山霊宝館 「第43回大宝蔵展 高野山の名宝 数字と高野山」鑑賞記

高野山霊宝館
 第43回大宝蔵展 高野山の名宝 数字と高野山
(7月16日~10月10日)
 尊名や尊像構成、寺院名から仏教用語まで、数字をキーワードにして高野山伝来の文化財を紹介。蓮花三昧院阿弥陀三尊像(国宝)、正智院八字文殊曼荼羅図(重文)、宝寿院六字尊像(重文)、宝寿院金銅三鈷杵(重文、伝覚鑁所持)、正智院銅五鈷四天王鈴(重文、伝道範所持)など指定物件のほか、金剛峯寺の四臂不動二童子像、両頭愛染明王坐像、銀造双身歓喜天立像、千体弘法大師像や奥之院六祖像、中尊弁才天の周囲を15体の弁才天(持宝珠)が丸く囲んだ図像の西南院弁才天十五童子など、特殊な図像の作例も多数出陳。正智院の釈迦三尊十六羅漢像は中央区画に宋風の釈迦如来と騎象の普賢、騎獅の文殊を配し、周囲に16ヶ所の区画を設けて十六羅漢を配した縦2mをこえる大画面の一幅で、鎌倉末まで遡る佳品。西門院釈迦涅槃図は室町時代の南都絵所作例とみられる一幅で、三千仏像は一幅に三千仏を配した大幅で紀年銘を有する16世紀の作例(年紀メモするの忘れた)。図録なし。拝観後、涼しい風が吹く奥之院を散策。

京都府立山城郷土資料館「やましろ新文化財展-館収蔵の指定・登録文化財から-」鑑賞記

6月29日、大学院のゼミの時間に学校飛び出し山城郷土資料館へ。

京都府立山城郷土資料館
 企画展 やましろ新文化財展-館収蔵の指定・登録文化財から-
(4月29日~7月3日)

 開館40周年を記念し、同館にて調査・研究、収集・保管されてきた南山城地域のさまざまな文化財を紹介。宗教美術では、松尾神社牛頭天王坐像(京都府暫定登録文化財)、宝寿院阿弥陀如来立蔵(京都附指定文化財)、西福寺狛秀綱像(京都府登録文化財)、鶯瀧寺袋中上人絵詞伝(木津川市指定文化財)、高神社獅子頭(京都府登録文化財)、正法寺紺紙金泥浄土三部経(京都附指定文化財)など。ほか考古資料や、相楽木綿に関する資料など。図録ないが、2016年発行の『南山城の歴史と文化』(48ページ、500円)掲載資料多し。南山城地域の民俗や歴史、美術、考古のさまざまな分野の調査研究や維持継承の活動において同館が果たしてきた役割は大きく、また地域の人口減少や高齢化による文化財の維持継承の困難に直面する今こそ、その設置意義(郷土についての歴史資料、考古資料、民俗資料等の保存及び活用を図り、もつて府民の文化的向上に資する)はより高まっているといえ、今後もその機能の維持が必須の施設。丹後郷土資料館とともに、老朽化する施設の更新は喫緊の課題。

和歌山県立博物館企画展「幕末から明治のきのくに文人画-偉大なる師、野呂介石を慕いて-」鑑賞記

6月25日
和歌山県立博物館
 企画展 幕末から明治のきのくに文人画-偉大なる師、野呂介石を慕いて-
(6月11日~ 7月10日)

 江戸時代後期の和歌山を代表する文人画家野呂介石の弟子に着目し、師弟の交流や師風の学習のあり方を紹介。養子野呂介于、甥野呂松廬、野際白雪、濱口灌圃、前田有竹ほか、上品で涼やかな山水図がずらり。介石晩年に、年を経て弟子となった湯浅福蔵寺住職平林無方のもとに送られた四碧斎印譜や墨蘭図、介石が題字を記して弟子10名が寄り合い書きで絵を描いた泉石嘯倣図、介石の那智図に後に野際白雪が富士図を組み合わせた那智・富岳図、介石弟子の小笠原簡斎に宛てた新出の書簡群、弟子が師を慕ってまとめた語録である介石雅画話・四碧斎画話など、館蔵品・寄託品を有効に活用して文人の交流活動を丁寧に展示。図録なし。

観峰館「隠元隆琦350年遠諱 黄檗インパクト」、栗東歴史民俗博物館「隠元禅師350年大遠諱記念展 黄檗の華」鑑賞記

観峰館
 企画展 隠元隆琦350年遠諱 黄檗インパクト
(4月16日~6月12日)

 隠元隆琦350年遠諱にあわせ、黄檗宗・臨済宗寺院伝来の書画を中心に黄檗文化の表象を紹介。頂相では、萬福寺費隠通容像(自讃・張琦筆)、小松寺隠元隆琦像(自讃・喜多道矩筆)、木庵性瑫像(自賛・喜多道矩筆)、鉄眼道光像(月潭道澄讃)、正明寺龍渓性潜像(即非如一讃・喜多元規筆)、正法寺如雪文巌像(自賛・木村徳栄筆)、照山元瑶像(自讃)などずらりと並んで壮観。黄檗禅のインパクトが顕著に及んだ近世画人の作品として、隠元の書にのちに鶴亭の群鶴図を合わせた萬福寺の八十自祝偈、曹源寺の葛蛇玉筆鯉魚図、細見美術館の伊藤若冲筆瓢箪・牡丹図、円満寺の小原慶雲筆涅槃図、正明寺の蘭渓若芝筆十八羅漢図など紹介。萬年寺の蘭谷元定作観音菩薩立像は堅実な黄檗彫刻で像背面に「僧蘭谷定」の白文方印を刻出するもの。リーフレット(8ページ)あり。黄檗禅の資料をまとまって見られる貴重な機会であることに留まらず、書画を切り口に東近江地域の文化財を公開・共有する地域密着型の展示となっており、同館の公益性を高める重要な展示活動。

栗東歴史民俗博物館
 隠元禅師350年大遠諱記念展 黄檗の華
(5月21日~7月3日)

 隠元隆琦350年遠諱にあわせ、栗東市内の黄檗宗寺院伝来の文化財を中心に黄檗文化の表象を紹介。萬年寺から隠元隆琦像(自讃・喜多長兵衛筆)、木庵性瑫像(自賛)、慧極道明像(自賛)など頂相や、黄檗様式の布袋坐像、蘭谷元定刻出の観音菩薩立像、慧極道明の墨蹟など多数出陳。萬年寺の観音菩薩立像(鎌倉時代)や円光寺の薬師三尊像(室町時代)など、黄檗転宗以前の寺院史を伝える資料も紹介。近江における黄檗寺院の調査研究をリードしてきた同館ならではのバラエティに富んだ堅実な展示内容。図録ないが、1992年の特別展「近江と黄檗宗の美術」図録(96ページ)は観峰館展示資料も含めてカバーする重要な参考資料となるもの。

Appendix

プロフィール

大河内智之

Author:大河内智之
「観仏三昧」の主催者です。
和歌山県立博物館の学芸員です。
仏像の研究者だったりもします。

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